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第170回 働き方の五つのS
いつかこのコラムを読み返したときに「あの騒動もあり○○○ができるようになった」と振り返れる日が来ることを願いながらつづりました。今、日本を含む世界は「目に見えない敵」との「先が見えない闘い」の真っ只中です。このような今こそ、個々の働き方の「五つのS」が問われるときかもしれません。
働き方の五つのS
繁忙期における個々の働き方は、全員に仕事という時間と手間を要する役割がありますが、閑散期にはその日を費やすだけの仕事が与えられない分、仕事の目標や計画を自ら考える場面が多くなります。
閑散期に表れる働き方の違いは、お客さんのいない飲食店で「座ってテレビや時計ばかり見ている店員」と「進んで掃除をしたり新しいメニューを考えたりする店員」との違いにも通じます。
閑散期が長くなるとその状態が当たり前になり、繁忙期はおろか平常期の仕事でさえも面倒に感じてしまうことも危惧されます。
ある倉庫での閑散期が招いた働き方の低下事例です。
- 1,000坪の倉庫に500坪分の仕事しかない状況が続いた。
- 「空いているから」と、倉庫担当者が通路を広めに確保したり、段積みで積載している貨物を平置きにしたりしていた。
- この時点で500坪分の仕事に対して1,000坪を利用して「楽々広々」と仕事をしていた。
- 営業担当者が400坪分の仕事を受注した。
- 倉庫担当者は「400坪は入らない。入っても最大で200坪ぐらい。」と答えた。
- 必死で受注にこぎつけた営業担当者は「それはおかしい。500坪空いているはず!」と詰め寄った。
上記の事例は「坪数を時間数」に置き換えると、多くの場面に適合します。
あるメーカー企業では営業担当者が本来の業務である新規開拓に集中すべく、働き方を変えようと訪問先へ納品する行為を運送会社へ全面委託したところ、下記の結果に分かれました。
自ら新規訪問の計画や戦略を考えて動ける人と、納品という仕事を与えれば素直に継続して動ける人。
営業部長からその結果を聞いた総務部長は、人事評価よりも適正配置の参考になると仰せでした。
テレワークや在宅勤務という働き方は、現場に出向き現物を動かし、紙の帳票が行き交う運送業界では馴染みにくいかもしれません。
在宅で勤務しながら聞こえてくるものや見えるものは個人的に関心が高いものが多く、その環境下でも職場で働くときと同等のパフォーマンスを発揮するのは難しいものです。
在宅勤務とは宿題のない自習のような時間もあり、授業がない夏休みの間を「どのように過ごすか」によって2学期の成績に差が生じる学生にも似ています。
いかなる仕事も自ら目標を決めて、自らを律して一人でも取り組める習慣が努力の賜物であり、日ごろからの努力の差がイレギュラー時には如実に表れるものです。
その差を運転で例えると「雪道で安全な人はさらに安全になり、日ごろから危険な人はさらに危険になる」傾向です。
仕事の目標には「精度の目標(正確性)」と「時間の目標(生産性)」と「発想の目標(創造性)」があり、言い換えると職種や立場により求められるバランスは違えど、仕事の成果とは下記の「三つのS」で表現や評価ができます。
- 同じ結果を出し続けることができる「正確性」
- 他の人よりも多く仕事ができる「生産性」
- 他の人にはできないことができる「創造性」
上記の成果を導く仕事の姿勢である「素直さ」と「積極性」を加えて、仕事とは「五つのS」で形成されています。
先述の在宅勤務への移行が広がると、クリーニング店ではワイシャツ関連の需要が減って売上が落ち込むなど向かい風になっているようです。
今、日本を含む世界は「目に見えない敵」との「先が見えない闘い」の真っ只中です。
このような今こそ、個々の働き方の「五つのS」が問われるときかもしれません。
卒業式の中止や規模縮小が相次いだことで生花店の売上が低下する中、お花見宴会の自粛を追い風に変えるべく、「屋内で花見を!」と屋内観賞用の桜を売り出す生花店の取り組みを報道で知りました。
いつかこのコラムを読み返したときに「あの騒動もあり○○○ができるようになった」と振り返れる日が来ることを願いながらつづりました。
ありがとうございました。
次回は4月10日(金)更新予定です。
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