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第171回 脇見運転と前方不注意との違い
ドライバーの交通事故を「発生前」に指導して防止するのが、運送会社の管理者の役割です。交通事故につながる交通違反が車内で発生する前に管理者が社内で指導しましょう。
脇見運転と前方不注意との違い
トラックドライバーによる追突事故の8割以上が、停車している車両に追突しています。
その原因の多くは脇見運転であり、初めての道は「車外への脇見」が多く、慣れた道では「車内での脇見」が多くなる傾向であり、運転中に車窓からの景色に目をやることや、車内で飲み物に手を伸ばしたりラジオやエアコンの調整をしたりする無自覚の脇見運転は、だれしも経験ゼロとは言い難いはずです。
運転中の危険行為と広く認知されている脇見運転も、携帯電話の使用などを除けば交通違反にはなりません。
脇見をしながら運転をしていても交通違反で検挙されるようなことはなく、脇見運転により前方が不注意の状態に陥ることで追突事故が発生すれば、その脇見運転は前方不注意との言い回しに変わり、前方不注意は安全運転義務違反に該当する違反行為として取り扱われます。
つまり、脇見運転と前方不注意は同じ行動でありながら、行動の結果として「交通事故の有無」により、脇見運転が前方不注意の言い回しに変わるだけであるということ。
無自覚を含む脇見の行動は警察官や管理者からは見えない車内で行われるため、誰にも見られていないから脇見運転をしてもいいのではなく、自身が前を見るために脇見運転をしないようにと自分を律することでしか効果的な対策が見当たりません。
場所を探しながらの地図を見ながら運転にならないように、地図は運転室ではなく貨物室に置くなど、「脇見をしない」ではなく「脇見ができない」ように運転環境作りにも取り組みましょう。
また、車窓から見える春の風物詩である沿道の桜並木や入学式などの人の群れに対しては、自身が脇見をしていなくても前車の運転者が脇見をして、急停車などの危険運転になることも想定されます。
そのような道では「前方車両が停まるかもしれない」と予測して、前車のリアガラス越しに運転者の行動を確認しようとすることや、急停車にも対応できるように車間距離を長めに確保することも重要です。
「車間距離の長さ」は「前車との速度の差」にも比例します。
「車間距離の長さ」は「無事故日数の長さ」にも比例します。
前車との車間距離だけでなく、運転中に足元に落ちた物を拾おうと脇見運転になることがないよう車内空間の整理整頓にひと手間を掛けることや、早目に小まめな休憩時間の設定などの「間の使い方」が適切ではないドライバーほど追突事故の可能性が高くなります。
走行中の車間距離を長めに確保すれば、追突事故を防止できます。
信号待ちで停車中の車間距離を長めに確保すれば、運転マナーが良く映ることで交通クレームの発生や「あおられる」などの交通トラブルを防止できます。
後突事故は後進中に「やるべきことをやらなかった」時に発生します。
追突事故は前進中に「やってはならないことをやっていた」時に発生します。
交差点事故は「相手に怪我(けが)を負わせる」ことが多くなります。
追突事故は「ドライバーが怪我をする」ことが多くなります。
ドライバーの交通事故を「発生前」に指導して防止するのが、運送会社の管理者の役割です。
ドライバーに警察官が指導するのは、交通事故が「発生後」のことです。
交通事故発生後にドライバーが署内で指導されないよう、交通事故につながる交通違反が車内で発生する前に管理者が社内で指導しましょう。
ありがとうございました。
次回は4月24日(金)更新予定です。
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