第172回 1日2回の「ただいま」を

到着や帰着を目指すのであれば、誰も見ていないから「横着をする」のではなく、誰も見ていなくても安全に「こだわる」ことが必要です。安全へのこだわりの有無は、交通事故の有無にも直結します。「横着をする」と「到着をする」とでは、どちらを選択しますか?

1日2回の「ただいま」を

3年ほど前のことです。

四十代で運送会社に入社して3カ月目のドライバーへの添乗指導時のこと。

前職は主に営業職で平ボデー車の乗務経験はあったようですが「ウイング車は大きく感じて恐かった」と語りつつ、添乗指導員が同乗していることもあり、少し緊張していた様子でした。

日ごろの運転行動を確認しようと気持ちが和むような会話を進めたところ、時間がたつにつれて車内での会話が多くなりました。

「初めてドライバー職に就きましたが、1日の達成感があり充実しています」

「職場の上司や先輩ドライバーも優しく接してくれるので満足しています」

「もっと早くドライバーの仕事をしておけばよかったと後悔しています」

そこで「ご家族はドライバー職への転職についてどのように話されていますか?」と尋ねてみたところ、やはり交通事故を心配しているご様子。

ご家族から「気をつけてね」と毎日1回は声を掛けてもらっているとのこと。

「だから1日の仕事を終えて無事に帰宅した瞬間が一番の達成感です」と笑顔で話してくれたことが、とても印象に残っています。

大丈夫と思った時点で確認が横着になれば、到着できなくなります。

「横着をする」と「到着をする」とでは、どちらを選択しますか?

到着後に、大丈夫と思った時点でバック時の確認が横着になります。

「横着をする」と「帰着をする」とでは、どちらを優先しますか?

到着や帰着を目指すのであれば、誰も見ていないから「横着をする」のではなく、誰も見ていなくても安全に「こだわる」ことが必要です。

安全へのこだわりの有無は、交通事故の有無にも直結します。

「安全にどのようにこだわったのか」という安全の質により、交通事故を回避することができます。

「安全にどれぐらいこだわったのか」という安全の量は、無事故の期間に反映されます。

それぞれの車内での安全のこだわり方を、安全の情報として社内で共有しましょう。

安全の情報は使うことで、個々のノウハウになります。

個々のノウハウを習慣にすることで、安全になれます。

運転中に「一瞬の自己判断」を間違えれば、事故発生により「一生の事故責任」を負います。

到着や帰着の条件である無事とは、読んで字のごとく「事(故)が無い」と書きます。

安全の努力なくして無事(故)の継続は困難です。

運転を「運が転がる」と書くゆえんは、「運が悪い方に転がれば犯罪者や殺人者や被害者になる」との戒めの意味かもしれません。

1日に2回の「ただいま」を言うための安全です。

ドライバーが帰社して1回目の「ただいま」を。

ドライバーが帰宅して2回目の「ただいま」を。

昨日よりも2倍の安全により、今日も明日も1日2回の「ただいま」を。

ありがとうございました。

次回掲載は5月8日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社プロデキューブ 代表取締役

高柳 勝二

運送会社の管理者育成と安全教育をサポートしている株式会社プロデキューブの代表取締役。
前職は中堅運送会社にドライバーとして入社し18年間勤務。
安全管理・品質管理・開発営業などの実務経験が豊富な物流インストラクター。
現在ではドライバーの交通事故防止による利益確保と輸送品質の向上による単価の向上で得た原資によって、働き方改革を実現するまでを事業領域として、現場を親身にサポートしている。
中小運送会社からの依頼が多い“提案型”研修は、受講されたドライバーや管理者からの「おもしろい・眠くならない・わかりやすい」との評判が口コミで広がり、各社内で開催される社員研修の外部講師として全国45都道府県で講演。
また、全日本トラック協会主催の「全国トラック運送事業者大会」における交通安全対策推進の分科会で、7年連続コーディネータを担当(2013年札幌開催:2014年福岡開催:2015年金沢開催:2016年度米子開催:2017年仙台開催:2018年高松開催:2019年千葉開催)。
2013年度:全日本トラック協会「トラック運送事業における運行管理者のあり方研究会」委員
2015年度:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会ワーキンググループ」委員
2016年度:「貸切バス運転者に対して行う指導及び監督の改正検討ワーキンググループ」委員
2016年度より現在:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会」委員
2017年度より現在:熊本県トラック協会 専門アドバイザー(企業経営・労務管理)
各都道府県のトラック協会や青年部会、支部や協同組合単位での各研修会で講演多数。
プロデキューブ
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