第17回 物流の品質とは“人の品”と“作業の質”

運送会社で幹部会議に出席した時のこと。

社長がある管理者に「最近品質が低下しているのでは?もう少し品質を上げてください!」とはっぱを掛けている。

管理者は社長に「申し訳ございません。仰せの通り少し品質が低下気味で・・・」と詫びている。

社長は「とにかく品質が大事だぞ」といえば管理者は「社長が仰せの通りです」「もっと品質に取り組みます」と同意する。

ここで私から質問を。

「先ほどから品質についてお話をされていますが、皆様にとって品質とは何ですか?」

一瞬で全員沈黙。

少し間が空いた後に社長が回答されたのは「品質と言えば・・・とにかく品質ですよ!」

「それでは意味がわかりませんし部下には伝わりません(笑)」と答えると、社長は「ではあなたは品質とは何だと答えるのだ?」と語気を強める。

そう問われた時に私が答えたのが「物流の品質とは“人の品”と“作業の質”」であるということ。

人の品とは「あいさつ・身だしなみ・車輪止め」等に代表される「社内ルール」

運送会社が社内で独自に取り組む社内ルールは、荷主からみれば加点評価の対象 。

作業の質とは「納期厳守・安全運行・規定通りの納品方法」等に代表される「契約事項」

契約事項とは荷主と運送会社とが結ぶ約束事。

契約事項とは「できて当たり前の依頼項目」として、履行しても良い評価は受けにくい。

さらには契約事項を履行できなれば「契約履行違反」として減点評価の対象に。

運送会社において社内ルールこそが、実践すれば荷主から褒められる項目です。

荷主との契約事項はできて当たり前として、できなければ叱られる項目です。

たとえば荷主の構内で車輪止め装着との構内ルールがあれば、多くのドライバーは車輪止めを装着するでしょう。

荷主からすれば、ドライバーが車輪止めを装着していることは当たり前の光景。

これでは車輪止めの装着が良い評価には至りにくい。

そのかわり、構内で車輪止めが未装着な状態だと悪い評価を受ける。

弊社の研修では駐車時には車輪止めを装着するようにとの「荷主からの指示=運送会社との契約事項」がない構内でも社内ルールとして車輪止めを装着することを勧めています。

他社のドライバーが車輪止めを装着していない場面だからこそ、前回のコラムでも紹介した「魅せる安全」になり、品質として良い評価を得られると言うもの。

近年、運送会社に求められるニーズが変わってきたように感じます。

運送会社が安全であり続けることは大変な努力が必要なのですが、世間から見れば電車やバス等の公共交通機関と同様に「安全であることは当たり前」なのかもしれません。

言い換えると「運送会社への期待の表れ」かもしれません。

世間のニーズを超えるためには安全であることが最低限の条件。

品質こそが他社との差別化を図れる武器であり、荷主から一番に選ばれるための商品です。

運送会社向けの研修講師として思うこと。

安全は教育しなくてもドライバーが「交通事故に遭いたくない」との心理から、自主的に安全活動を実践しようとしてくれます。

品質は誰もが「できれば面倒なことをしたくない」との心理から、教育をしなければ定着や向上が困難とも感じています。

安全は当たり前の教育項目として継続し、ぜひ品質(人の品と作業の質)の向上にもお取り組みください。

弊社でも熱意をもって継続することで、必ず結果が伴っていますよ。

ありがとうございました。

次回は2月7日(金)更新の予定です。

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この記事の著者

株式会社プロデキューブ 代表取締役

高柳 勝二

運送会社の管理者育成と安全教育をサポートしている株式会社プロデキューブの代表取締役。
前職は中堅運送会社にドライバーとして入社し18年間勤務。
安全管理・品質管理・開発営業などの実務経験が豊富な物流インストラクター。
現在ではドライバーの交通事故防止による利益確保と輸送品質の向上による単価の向上で得た原資によって、働き方改革を実現するまでを事業領域として、現場を親身にサポートしている。
中小運送会社からの依頼が多い“提案型”研修は、受講されたドライバーや管理者からの「おもしろい・眠くならない・わかりやすい」との評判が口コミで広がり、各社内で開催される社員研修の外部講師として全国45都道府県で講演。
また、全日本トラック協会主催の「全国トラック運送事業者大会」における交通安全対策推進の分科会で、7年連続コーディネータを担当(2013年札幌開催:2014年福岡開催:2015年金沢開催:2016年度米子開催:2017年仙台開催:2018年高松開催:2019年千葉開催)。
2013年度:全日本トラック協会「トラック運送事業における運行管理者のあり方研究会」委員
2015年度:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会ワーキンググループ」委員
2016年度:「貸切バス運転者に対して行う指導及び監督の改正検討ワーキンググループ」委員
2016年度より現在:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会」委員
2017年度より現在:熊本県トラック協会 専門アドバイザー(企業経営・労務管理)
各都道府県のトラック協会や青年部会、支部や協同組合単位での各研修会で講演多数。
プロデキューブ
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