第139回 来年の漢字

運送業界における「安全が第一」との考え方は、いつの時代も不変的な位置付けです。しかしながら安全に関連や連動するキーワードは、いつの時代も変化が生じています。先日発表された今年の漢字は「災」とのこと。年末にあたり、今年の漢字を「私の漢字」として個々に発表すると、各社内において一年を振り返る良い機会になると思います。

来年の漢字

運送業界における「安全が第一」との考え方は、いつの時代も不変的な位置付けです。

しかしながら安全に関連や連動するキーワードは、いつの時代も変化が生じています。

その変化は、当社への研修ご依頼時に要望される「研修テーマ」からも推測できます。

かつて「安全と環境」がキーワードの時代がありました。

その当時の環境への取り組みとは、「大気汚染から地球環境を守る」との観点から「省燃費運転(エコドライブ)=安全運転」を指しました。

各社内で省燃費運転を積極的に奨励した背景には、燃料高騰の影響により「地球環境の前に職場や会社を守るため」との優先順位が有ったことも否めないでしょう。

働き方が注目される昨今、環境の文字は「職場環境」や「労働環境」の意味合いで活用されることが多いようにも見受けられます。

いつしか「安全と品質」の時代に移りました。

ドライバー不足の観点からドライバーの待遇改善を図るべく、適正運賃の収受により適正賃金の確保をするための手段を模索した結果、単価の向上には品質の向上が不可欠との考え方が広まってきた風潮によるものと察します。

昨年10月3日に宮城県で開催された全国トラック運送事業者大会において、私がコーディネーターを務めている安全の分科会で、初めて「安全と健康」とのキーワードを発信しました。

今年10月10日に香川県で開催された同大会の分科会でも、選択されたテーマが「安全と健康」であったことは、若年層ドライバーの減少によりドライバーの高齢化が進み、健康起因による重大事故を警戒する傾向の表れです。

先日発表された今年の漢字は「災」とのこと。

運送業界でも「安全と防災」に関しては「安全と健康」につぐ喫緊のキーワードです。

災害発生時には、道なき道を進んででも被災地へ必要な物資を届けることは運送業界の使命です。

特に今年は災害状況を伝えるニュースの映像において、強風でトラックやコンテナが転倒した衝撃的なシーンは記憶に新しく、防災への準備と対策も会社(運送会社)の義務であることが明確になりました。

また、世間的なキーワードでは「働き方」の次は「暮らし方」かもしれません。

「暮らし方」には家族や家屋を守る意味でも、さらに「防災」との関連が強まることでしょう。

年末にあたり、今年の漢字を「私の漢字」として個々に発表すると、各社内において一年を振り返る良い機会になると思います。

同時に、来年の目標を漢字で示すことも良いでしょう。

「お勧めの来年の漢字は?」と問われれば、私は「声」と答えます。

呼称確認や、正しい挨拶で発する「声」は、安全と品質を360度の全方位に発信できます。

社内でのコミュニケーションを高めるためにも、会話の質を高めて量を増やすことは「声」を増やす活動です。

感謝や労いの気持ちを伝えるのも「声」によるもの。

安全や品質に関する指摘や指導の「声」は愛情表現。

愚痴や文句にも真摯に耳を傾けることで、心の「声」が聴こえてきます。

改善に向けた意見や提案をすることは「声」を挙げることのひとつです。

運送業界の現場の生の「声」を関与産業や関係機関に届けることで、運送の仕組みが少しずつ変わろうとしています。

来年もこのコラムを通じて、現場で使える「一声」を発信できれば幸いです。

ありがとうございました。

次回は1月11日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社プロデキューブ 代表取締役

高柳 勝二

運送会社の管理者育成と安全教育をサポートしている株式会社プロデキューブの代表取締役。
前職は中堅運送会社にドライバーとして入社し18年間勤務。
安全管理・品質管理・開発営業などの実務経験が豊富な物流インストラクター。
現在ではドライバーの交通事故防止による利益確保と輸送品質の向上による単価の向上で得た原資によって、働き方改革を実現するまでを事業領域として、現場を親身にサポートしている。
中小運送会社からの依頼が多い“提案型”研修は、受講されたドライバーや管理者からの「おもしろい・眠くならない・わかりやすい」との評判が口コミで広がり、各社内で開催される社員研修の外部講師として全国45都道府県で講演。
また、全日本トラック協会主催の「全国トラック運送事業者大会」における交通安全対策推進の分科会で、7年連続コーディネータを担当(2013年札幌開催:2014年福岡開催:2015年金沢開催:2016年度米子開催:2017年仙台開催:2018年高松開催:2019年千葉開催)。
2013年度:全日本トラック協会「トラック運送事業における運行管理者のあり方研究会」委員
2015年度:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会ワーキンググループ」委員
2016年度:「貸切バス運転者に対して行う指導及び監督の改正検討ワーキンググループ」委員
2016年度より現在:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会」委員
2017年度より現在:熊本県トラック協会 専門アドバイザー(企業経営・労務管理)
各都道府県のトラック協会や青年部会、支部や協同組合単位での各研修会で講演多数。
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