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第72回 運送会社版「魅せる写真の活用方法」
運送会社は、社名入りの制服を着たドライバーや社名入りのトラックにより“おのずと世間に社名を露出”する一方、社内の風景や取り組みを意図的に社外に見せる機会は少ない業種でした。
「宣伝や営業をせずとも仕事量には困らない」との風潮が、根強かったのかもしれません。
「募集や教育をせずとも、ドライバー不足には陥りにくい」との楽観的な考え方は、今ではあり得ない時代です。
昨今では、趣向を凝らしたホームページを公開されている運送会社も増えてきました。
新規顧客の獲得だけでなく、ドライバー不足への対応策として、運送会社の中身を見せて「働きやすさを含む待遇」を実感してもらうための工夫が見受けられます。
一昔前の運送会社のホームページで多かった傾向は…。
トラックを並べただけの写真は、まるで中古車センターのごとく。
倉庫を含む施設の写真だけの掲載は、まるで不動産会社のごとく。
現代のホームページでは“ドライバーを含む働く人の表情や態度”で、仕事への取り組み方を表現しているようです。
また、さまざまなSNSの普及により、社内での出来事を“写真付きで手軽に配信可能”になりました。
まさに、運送業界も“社内を魅せる時代”の到来!
そこで「写真による社内の魅せ方」について提案します。
本来、ホームページやSNSで掲載される写真は“一番良い状態”を掲載すべきもの。
不動産物件は掃除した状態で、陽当たりの良い時間帯を狙って室内を撮影したり。
中古車物件では、ピカピカに洗車してタイヤワックスも輝く状態で撮影したり。
その一手間は「第一印象×存在価値=集客と値段を高める努力」と言えます。
逆に、運送会社が写真を公開して価値を下げてしまう失敗例とは…。
事務作業中の机上はもちろん、アイコンが散らかったパソコンのデスクトップ。
トラックの荷台上で作業中なのに、ヘルメットを未着用でシャツが出ている。
フォークリフト作業者が、ヘルメットのアゴヒモを正しく装着していない。
倉庫の作業風景で、パレットの置き方が乱雑でゴミ箱からゴミが溢れている。
せっかくの納車式では、トラックの車輪止めが未装着だったり。
ラッピングされたトラックの披露時の車輪止め未装着もしかり。
ドライバー研修や安全大会では、室内で帽子をかぶっていたり。
首にタオルや、ふんぞり返って腕を組んだり足を組んでいたり。
前方席が空席のまま進む安全大会は、安全への積極性が乏しい状態を露骨に表現してしまいます。
無事故表彰等で最高位の表彰を受けたドライバーが、サンダル履きで表彰状を受け取っている姿は残念で悲しく、表彰状を授与する側の社長には哀愁すら感じます。
他にも、点呼時や朝礼中に起立している姿で、上着のファスナーが全開など。
このように、写真にはその会社の日常と常識が映り、配信すれば全国へ容易に広まります。
さて、来春には運転免許制度が変わり、運送業界では18歳の高校卒社員を迎えることにも拍車が掛かる様相です。
ただし就業対象者は未成年にて、就職先の選定には高校の先生や親御さんの意向が大きく反映されると聞きます。
ホームページ等で掲載された写真から「いつでも気楽で、ずっと楽しそうな運送会社」と「教育が行き届いていて、育ちそうな運送会社」があるとしましょう。
「あなたが親御さんなら、我が子にどちらの運送会社を勧めますか?」
自分が楽をしたいのと、誰かに期待をすることは、少し選択基準が変わるようです。
新規のお客様獲得と、新規のドライバー募集に活用するホームページ。
その目的は、第一段階では仕事とドライバーが集まることですが、第二段階では頂く運賃と支払う給料を高くしたいはず。
そのためには「みすみす価値を下げることがないように」
掲載写真を撮影する際は「一番良い姿」を求めましょう。
「一番良い姿」とは「働く社員と働く社内」の基本の姿。
常に基本の姿と比較をして立ち返ることで、社員教育にも活用できます。
その社員教育の姿を掲載することで、さらに新規のお客様を獲得することと 新規のドライバー募集に応募が集まることが期待できます。
ありがとうございました。
次回は5月13日(金)更新予定です。
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