第199回 標準運賃

「標準運賃とは誰が基準の運賃なのか?」「標準運賃を実運送会社が得る方法は?」これらの議論には、不動産業界における仲介事業者の存在や、仲介手数料の認知度を参考にしてはいかがでしょうか。

標準運賃

「標準運賃とは誰が基準の運賃なのか?」
「標準運賃を実運送会社が得る方法は?」

これらの議論には、不動産業界における仲介事業者の存在や、仲介手数料の認知度を参考にしてはいかがでしょうか。

不動産業界において、家主は貸家が空く予定があれば次の借り主を探し出します。
その方法の一つとして、家主が貸家ごとに設定した家賃を複数の仲介事業者に開示して、借り主を探してもらいます。

仲介事業者は「対象地域に強い」や「特定業種に強い」などの情報の量と質や、任意に設定する手数料の安さを売りにして、借家を探している人に対して広告宣伝を含む営業活動を行います。

仲介事業者の手数料は借り主が負担をして、家主は入居開始月に応じて借り主から家賃を徴収します。

貸家が空く予定でも、家主側で得た情報により次の借り主を見つけている場合、家主は仲介事業者を介さずに借り主と直接契約ができます。
借り主は家主と直接契約ができれば仲介手数料を支払う必要がないので、家主との直接契約を望みますが、情報を多数有している中から選択ができる利便性を求めて、仲介事業者に委託することも多いようです。

どこの仲介事業者を選ぶかは家主ならびに借り主の自由です。
仲介事業者は借り主に選んでもらえるように仲介手数料の設定も自由です。
家主はどの仲介事業者を経由しても、借り主が入居後に収受する家賃は同一料金の設定です。

急な依頼や困難な要望に対しては、複数の仲介事業者を介する案件もあるでしょう。
その場合に高騰する仲介手数料は借り主が負担もしくは仲介事業者が負担すべきです。

不動産業界に関する上記の文中において文言の一部を下記に変換しますと、運送業界の標準運賃に関する内容になります。

  1. 貸家→車両
  2. 家主→実運送会社
  3. 仲介事業者→取り扱い事業者
  4. 借り主→荷主
  5. 仲介手数料→取扱手数料
  6. 家賃→標準運賃

不動産業界では仲介事業者の存在と仲介手数料が一般的に認知されていますので、借り主が家賃のほかに仲介手数料を支払う(足す)ことに違和感を覚えません。
運送業界では、本来は自社で仕事をするべきところを協力会社に委託することに後ろめたさがあるのか、取り扱い事業者の露出を抑える傾向です。
そのために、収受運賃から取扱手数料を削る(引く)ことが一般的です。

実運送会社は「一つの仕事に一人の人と一台の車両」を動かす必要があり、運賃の上昇なくしてドライバーの給与水準の向上ならびに労働時間の削減には限界があると考えます。
手数料ビジネスである取り扱い事業者は、営業時間外にもインターネットで対応したり、複数の案件を同時に進めたりすることができる点では労働集約型ではないため、努力や仕組み次第で時間を問わず生産性を高めることができます。

標準運賃(タリフ料金+作業や待機料金)+取扱手数料=荷主が負担する運送料金

上記は、実運送会社が標準運賃を収受しながら、手数料の上下は仲介事業者の努力により競わせるという設定です。
運賃の「高い安い」で荷主に判断させるのではなく、標準運賃は固定して取扱手数料で強弱をつける方法です。

または下記の考え方もあります。

標準運賃(タリフ料金+作業や待機料金)の80%以上+取扱手数料(標準運賃の20%以内で営業経費として設定)=荷主が負担する運送料金(標準運賃の100%)

実運送会社は自社での営業活動により取り扱い事業者を使わずに取引ができれば、標準運賃の100%を得る権利があり、代理店である取り扱い事業者に営業活動を任せる場合は80%以上を得る権利があるとの下限を設定しつつ、荷主はいずれにしても標準運賃の100%を負担する仕組みです。
取扱手数料は標準運賃に対して仮に20%以内とする下限の線引きをしても、なし崩しになるかもしれませんが、標準的な取扱手数料や割合を決める必要もあると感じました。

早く借り主がつくように家主へアドバイスをするのも、貸主との接点が多く貸主のニーズを把握している仲介事業者の役割であり、実運送会社から取り扱い事業者に対して営業だけでなく安全や品質の教育を担ってほしいとのニーズもあるでしょう。
専属契約の協力運送会社に関しては、元請け運送会社が実運送会社の代理店として機能する場合に限り、一次請けまでは「代理店制度」を認めたうえで、取扱手数料は営業経費や教育経費として、実運送会社が負担する案はいかがでしょう。

ほかにも、宿泊手配や航空券手配などネット検索による成約率が高い旅行関連業界を参考にして、実運送会社が求車求荷システムを利用ならびに成約時には、取扱手数料(システム利用料)は実運送会社が負担するようにすれば、求車求荷システムの利用価値がさらに上がりつつ運送業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)化の促進にも期待できます。

また仲介業者の業務として、家を借りるための手続きを代行します。
その手続きにおいては、有資格者である宅地建物取引士が重要事項を説明することが法律で定められていることと同じく、顧客の窓口になる取り扱い事業者は運行管理者資格を有していることを条件とすれば、顧客の安心と業界の安全を確保できるでしょう。

ありがとうございました。

次回は6月11日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社プロデキューブ 代表取締役

高柳 勝二

運送会社の管理者育成と安全教育をサポートしている株式会社プロデキューブの代表取締役。
前職は中堅運送会社にドライバーとして入社し18年間勤務。
安全管理・品質管理・開発営業などの実務経験が豊富な物流インストラクター。
現在ではドライバーの交通事故防止による利益確保と輸送品質の向上による単価の向上で得た原資によって、働き方改革を実現するまでを事業領域として、現場を親身にサポートしている。
中小運送会社からの依頼が多い“提案型”研修は、受講されたドライバーや管理者からの「おもしろい・眠くならない・わかりやすい」との評判が口コミで広がり、各社内で開催される社員研修の外部講師として全国45都道府県で講演。
また、全日本トラック協会主催の「全国トラック運送事業者大会」における交通安全対策推進の分科会で、7年連続コーディネータを担当(2013年札幌開催:2014年福岡開催:2015年金沢開催:2016年度米子開催:2017年仙台開催:2018年高松開催:2019年千葉開催)。
2013年度:全日本トラック協会「トラック運送事業における運行管理者のあり方研究会」委員
2015年度:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会ワーキンググループ」委員
2016年度:「貸切バス運転者に対して行う指導及び監督の改正検討ワーキンググループ」委員
2016年度より現在:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会」委員
2017年度より現在:熊本県トラック協会 専門アドバイザー(企業経営・労務管理)
各都道府県のトラック協会や青年部会、支部や協同組合単位での各研修会で講演多数。
プロデキューブ
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