第189回 繁忙期に省きたくなる三大行動

急いでいる時に省きたくなる三大行動は「確認・整理整頓・挨拶」です。「確認・整理整頓・挨拶」の三つは社会人として備えておくべき資質であることも共通点といえます。

繁忙期に省きたくなる三大行動

普段は事故を起こさないドライバーでも忙しくなって焦りの心理が生じれば、急ぎ「ながら」運転や、確認を含むやるべきことを省き「ながら」作業になることが多く、事故やミスの危険性が高まります。

仕事の量が落ち着いている時期から忙しい時期を想定してルールを作り、ドライバーが正しい手順を繰り返して自らの習慣にしておきませんと、繁忙期になればなるほど失敗の可能性が高まります。

平常期とは繁忙期への準備の期間といえます。

その準備を怠れば繁忙期に仕事が増えることに比例して事故が増えてしまいます。
その傾向はスポーツにおいて練習のための練習ではなく、試合を想定して練習を続けることでのみ、本番(試合)で準備(練習)に費やした時間の成果を発揮できることにも似ています。

繁忙期になってからドライバーに「焦らないように」と安全の指示をするだけではなく、繁忙期になれば、配送の件数や荷量の増加ならびに道路渋滞や各構内での混雑、待ち時間の発生で焦ることを前提として、平常期から「焦ったらどうなる?」や「忙しくなっても対応できるのか?」を念頭に置きながら安全の会話をしましょう。
その結果、繁忙期になってもドライバーが無事故を含めた「いつもの結果」を残せるようになります。

社内で指導したことを車内で実践しているかを個々に確認できるのが添乗指導であり、平常期にはできていることを、繁忙期にも同じ行動ができているかを確認できるのも添乗指導の特長です。

平常期での添乗指導時であっても意図的に渋滞中の経路を選択したり、積載時かつ時間指定配送時に添乗したりしてドライバーごとに負荷が掛かった状態を観察しますと、シフトノブを強く握り締めながら信号待ちをしたり、舌打ちをしたり、ため息をついたりしながら運転しているなど、判別しやすい焦りの兆候が助手席から発見できるはずです。

そうはいっても……。
やらなければならないと分かっていても……。
焦れば焦るほど……。
本来やるべきことを面倒に思って省こうとするのは誰しも同じことです。

急いでいる時に省きたくなる三大行動は「確認・整理整頓・挨拶」です。
その結果。

  1. 確認を省いて、ミスにより二度手間が発生して決定的な時間ロス。
  2. 整理整頓を省いて、机上や庫内での探す時間が増えてジワジワと時間ロス。
  3. 挨拶を省くことで相手からの印象が悪くなり、繁忙期後の仕事量が減って売上ロス。

「確認・整理整頓・挨拶」はいずれの行動も法令対象外ではあります。しかしながら社会人として備えておくべき資質であることも共通点といえます。

上記の三大行動のうち一つでも一回でも省きたくなることは、焦りの心理を示すバロメーターです。
その際には一呼吸置いたり一度手を止めたりして、いつもの落ち着いた自分を取り戻す機会にしてはいかがでしょうか。

ありがとうございました。

次回は1月15日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社プロデキューブ 代表取締役

高柳 勝二

運送会社の管理者育成と安全教育をサポートしている株式会社プロデキューブの代表取締役。
前職は中堅運送会社にドライバーとして入社し18年間勤務。
安全管理・品質管理・開発営業などの実務経験が豊富な物流インストラクター。
現在ではドライバーの交通事故防止による利益確保と輸送品質の向上による単価の向上で得た原資によって、働き方改革を実現するまでを事業領域として、現場を親身にサポートしている。
中小運送会社からの依頼が多い“提案型”研修は、受講されたドライバーや管理者からの「おもしろい・眠くならない・わかりやすい」との評判が口コミで広がり、各社内で開催される社員研修の外部講師として全国45都道府県で講演。
また、全日本トラック協会主催の「全国トラック運送事業者大会」における交通安全対策推進の分科会で、7年連続コーディネータを担当(2013年札幌開催:2014年福岡開催:2015年金沢開催:2016年度米子開催:2017年仙台開催:2018年高松開催:2019年千葉開催)。
2013年度:全日本トラック協会「トラック運送事業における運行管理者のあり方研究会」委員
2015年度:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会ワーキンググループ」委員
2016年度:「貸切バス運転者に対して行う指導及び監督の改正検討ワーキンググループ」委員
2016年度より現在:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会」委員
2017年度より現在:熊本県トラック協会 専門アドバイザー(企業経営・労務管理)
各都道府県のトラック協会や青年部会、支部や協同組合単位での各研修会で講演多数。
プロデキューブ
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