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第188回 安全を知らない人と安全が嫌いな人へ
安全の教育は、おもしろくなく楽しくもないと感じることが多いものです。まずは安全の会話に耳を傾けること、そして自身が安全になろうとして始めた行動を会話で発することから始めましょう。
安全を知らない人と安全が嫌いな人へ
労働集約型産業といわれる運送業において、事業の拡大には人員の増加が不可欠です。
その人員の多くはドライバー職です。
ドライバーは常に社内で他の社員と顔を合わせる状況ではなく、公道を職場としつつトラックを道具として仕事をしています。
故に、ドライバーの一つの失敗が人命に、一人のドライバーの失敗が社命にも多大な悪影響を及ぼすため、事業の拡大に向けてはドライバーへの安全の教育が有効以上に必須の条件であると断言できます。
運送会社における安全の教育とは、ドライバーを事故の加害者にも被害者にもしたくないとの愛情表現です。
安全を優先するとの会社の考え方は、本来であれば会社を守るためではなく会社がドライバーを事故から守るとの考え方であり、特に求人募集時においては「ドライバーを大切にしている」との好感が持てる企業姿勢にも通じます。
安全の教育を受けている時間は、おもしろくなく楽しくもないと感じることが多いものですが、自身が事故の経験をすることは誰もが望まず、誰かの事故の衝撃映像を見続けることも悲しいものです。
- 安全の教育はおもしろい時間ではないが、危険の話はさらにつまらないもの。
- 安全の教育は楽しい時間ではないが、危険の体験は絶対にしたくはないもの。
教育時には他のドライバーとの集合形式であっても、事故を起こす時は一人の場面が多いので、危険なドラレコ映像だけを見せて全員に向かって一斉に「だから事故をするな」と言い放つのではなく、全員が安全になれる方法として一人一人に寄り添いながら確認のやり方などを丁寧に説き続けることが、本来の安全の教育だと思います。
皆様が運送会社で働く以上は、安全を好きになってほしいものです。
「趣味は安全です」や「確認が特技です」と履歴書に書ける人はまれかもしれませんが、せめて安全を嫌いにはならないでほしいものです。
魚が嫌いなすし職人が握るすしは無機質な味に感じるものです。
歯が抜けた歯科医師の治療には信頼や安心を感じないものです。
同様に、ホームページなどで安全性を前面に打ち出している運送会社で働く人なのに安全が苦手だったり嫌いであったりすればどうでしょう。
安全を知らずに不安全な行動を繰り返すようであれば、その仕事の適性を問われることになるでしょう。
また、運送会社において「一流の人材」に育成するためには「一流の安全」を教育することも必要です。
- 安全を知らない社員では、教育をしないと不安全な会社との評価を受けます。
- 安全ができない社員には、安全の教育を繰り返さないと事故を繰り返します。
「教育で一流」を目指すには下記をセットに進めるとよいでしょう。
- 教育前に、何をどれぐらい教育するのかとの「理解しやすい安全のルール(教科書)作り」
- 教育後に、何をどれぐらい実践しているかとの「判断しやすい安全の評価(通知票)作り」
さらに、インターネット上で閲覧できるトラック事故のニュースを参考にすべく安全のルール作りに活用すれば、自社で費用を掛けずに安全の教材(参考書)を手に入れることができます。
安全を嫌いなままで運送会社に勤務することはもちろん、安全を知らないままに運送会社で営業職を担うことは難しいものです。
- 安全が嫌いな人には、社内で勤務時に安全な人を褒める会話ができません。
- 安全を知らない人に、社外で営業時に安全を求める人と会話ができません。
まずは誰かが行っている安全の会話に耳を傾けること、そして自身が安全になろうとして始めた行動を会話で発することから始めましょう。
ありがとうございました。
次回は12月25日(金)更新予定です。
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