第149回 手順は自分を守る手段

ドライバーが安全の手順を知っていたのに怠って事故を起こせば、「わざと事故を起こした」や「手順の不履行が原因の事故は100%自己責任」と言われても、プロとして弁解の余地はございません。平坦な場所でも広い場所でも、安全の手順を正しく実践することを習慣にしましょう。

手順は自分を守る手段

交通ルールを守るのは無違反の継続以上に、無事故で自分を守るための手段です。

停車時の車輪止め装着や後進時の降車確認は、交通ルールには含まれていません。

それらは各社でルールとして取り決める手順であり、ドライバーの無事故をさらに継続するための手段です。

ドライバーが安全の手順を知っていたのに怠って事故を起こせば、「わざと事故を起こした」や「手順の不履行が原因の事故は100%自己責任」と言われても、プロとして弁解の余地はございません。

傾斜地だから「車輪止めを装着する」のではなく。

狭い場所だから「後進時に降車確認をする」のでもなく。

平坦な場所でも広い場所でも、安全の手順を正しく実践することを習慣にしましょう。

意外にも「傾斜」や「狭い」など危ないと思った時には、すすんで安全の手順を実践するため、事故は起こりにくいものです。

それよりも「平坦だから」や「広いから」との判断から「たぶん大丈夫だろう」と思った時に、多くの事故が発生しています。

「時間がない」「疲れている」「イライラしている」時にこそ、いつも手順でいつもの自分になり、いつもの結果を継続することが求められます。

手順を守らない状態とは、重大事故の発生につながる「ヒヤリハット体験のひとつ前の段階」とも言えるでしょう。

事故発生後にルールとして実践する手順を、事故発生前に実践する努力により、軽微な事故や重大な事故を防止できます。

しかしながら、管理者が結果だけを見ていると、ドライバーが手順を省いてしまうことも否めません。

手順とは「文字を書く際の書き順」のようなもの。

書き終えた文字を見て合否を判断するだけでなく、書いている時に書き順を確認するように。

安全も品質も結果のみで良否を判断するのではなく、手順も確認しましょう。

管理者がドライバーの手順を見ることで、ドライバーが手順を守るようになります。

ドライバーは面倒に感じる手順を守ることで、良い結果を継続できます。

面倒に感じる手順も継続することで、面倒に思わなくなり習慣にできます。

他のドライバーが習慣にして実践していると、自身も手順を守ろうとします。

手順を習慣にするためにも、管理者は事故をしたドライバーに指導するだけではなく、ドライバーが手順を守っていない段階で指導対象としましょう。

その手順の良し悪しを、一目で確認できるのが添乗指導の利点です。

点呼は会話による考え方の確認であり、添乗指導は行動の確認です。

手順から大きく逸脱している場合には、その要因のひとつとして、周囲の人から見られる回数が少ないことも想定されます。

複数の事業所があれば、本社と営業所でのドライバーの身だしなみを比較してみましょう。

都心と郊外での、運転中の携帯電話の使用率やシートベルトの装着率を想定してみましょう。

安全の管理は管理者がドライバーの手順を見ること、安全な運転はドライバーが世間から見られていると考えること。

手順を守ろうとする心理には、見ることと見られていることでも好影響をもたらすようです。

ありがとうございました。

次回は6月7日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社プロデキューブ 代表取締役

高柳 勝二

運送会社の管理者育成と安全教育をサポートしている株式会社プロデキューブの代表取締役。
前職は中堅運送会社にドライバーとして入社し18年間勤務。
安全管理・品質管理・開発営業などの実務経験が豊富な物流インストラクター。
現在ではドライバーの交通事故防止による利益確保と輸送品質の向上による単価の向上で得た原資によって、働き方改革を実現するまでを事業領域として、現場を親身にサポートしている。
中小運送会社からの依頼が多い“提案型”研修は、受講されたドライバーや管理者からの「おもしろい・眠くならない・わかりやすい」との評判が口コミで広がり、各社内で開催される社員研修の外部講師として全国45都道府県で講演。
また、全日本トラック協会主催の「全国トラック運送事業者大会」における交通安全対策推進の分科会で、7年連続コーディネータを担当(2013年札幌開催:2014年福岡開催:2015年金沢開催:2016年度米子開催:2017年仙台開催:2018年高松開催:2019年千葉開催)。
2013年度:全日本トラック協会「トラック運送事業における運行管理者のあり方研究会」委員
2015年度:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会ワーキンググループ」委員
2016年度:「貸切バス運転者に対して行う指導及び監督の改正検討ワーキンググループ」委員
2016年度より現在:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会」委員
2017年度より現在:熊本県トラック協会 専門アドバイザー(企業経営・労務管理)
各都道府県のトラック協会や青年部会、支部や協同組合単位での各研修会で講演多数。
プロデキューブ
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