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第186回 ×(バツ)を+(プラス)に変える
運送会社において法律で定められている安全教育とは最低限の教育であり、教育の結果における損益分岐点のようなものと位置付けています。プラスマイナスゼロの地点である損益分岐点は、安全においては事故ゼロの地点でありスタート地点です。
×(バツ)を+(プラス)に変える
私を含めて当社のインストラクターは、全員が元トラックドライバーです。
私の場合、ドライバーになった当時には「事故を起こさない・時間に遅れない・商品を壊さない」の三つさえ守っていれば、あとは何をしても何をしなくても構わないような風潮も少なからず残っていた時代でもあり、いわば「気楽で・簡単に・稼げる」との3Kドライバー職を満喫していました。
そんな私が、今では交通事故を防止する安全の教育を担当しています。
その理由は、運送会社が顧客から「安全ではない」と判断されれば受注が減少して、交通事故がゼロでなければ、いつしか受注がゼロになってしまう時代だからです。
今は安全だけでなく、品質の教育や健康の情報も提供しています。
それらは現代の運送会社の義務になりつつあり、その結果が同業他社との差別化戦略や顧客が運賃交渉に応じる条件にもなりつつあるからです。
もはや「事故はしないがあいさつもしない」人にはドライバーは務まらない世の中のようです。
また、交通事故ゼロの達成を含む安全の育成には警察官も同じような指導をしてくれますが、品質には対象の法律がなく、あいさつをしなくても警察官が指導することはない代わりに、顧客は良い評価をしてくれません。
品質の教育においては「他社のドライバーがやっていないからやらない」ではなく。
「他社のドライバーがやっていないからやる」とのプライドを醸成して、ドライバーが全員で取り組めれば、運送会社のブランドにも推し上げることができます。
繰り返しになりますが、運送会社にとって「安全は受注件数に比例」して「品質は運賃単価に比例」するようです。
しかしながら、特に安全は目に見えないこともあり、すぐには効果が出にくいものです。
よって、地味な安全を地道な教育により継続することで、交通事故ゼロに挑戦しなければなりません。
安全教育を継続する理由として、鉄道会社と比較をしてもレールの上には交差点はなく、さらには天候を含む外的要因も道路の方が受けやすく、運送会社のドライバーは本来であれば「電車を運転する人が受ける教育の質と量に匹敵もしくはそれ以上の教育を受けるべき職種」だと思うからです。
結果における交通事故発生の数値の差は、各社において「何を教えたのか? どのように育てたのか?」との教育の差といえます。
各社の社内で安全の教育を継続すれば、下記のような「社員教育の三つのM」の状態に陥ることもあると思います。
- まんねり
同じような切り口での教育で受講者側に笑顔はなく、みんなが退屈そうに感じている - もどかしい
安全は机上論では通用しないと思うがほかに伝える方法が見当たらない - もったいない
せっかく多忙な乗務員が参加する機会なのに、記録に残すための教育になっている
当社は「運送会社の管理者育成と安全教育」が主業で、講師派遣型やオンライン研修などの教育サポートを提供していますが、当社のインストラクターでも「安全の基本(やり方)は変わらずとも、安全の教育(伝え方)は変化以上の進化を遂げなければならない」と日々感じています。
さらには、運送会社において、法律で定められている安全教育とは最低限の教育であり、教育の結果における損益分岐点のようなものと位置付けています。
プラスマイナスゼロの地点である損益分岐点は、安全においては事故ゼロの地点でありスタート地点です。
事故がなければ〇(マルの評価)ではなく。
事故がないのは〇(ゼロの地点)です。
まずは安全の教育と、次に品質の教育により、×(バツ)を〇(ゼロ)にして+(プラス)に変えましょう。
事故が起これば×(バツの評価)です。
事故がなければ〇(ゼロの評価)です。
品質が良ければ+(プラスの評価)です。
ありがとうございました。
次回は11月27日(金)更新予定です。
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