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第21回 物流コストモデルを作成し、健全経営を実現する
運賃データを活用すれば、得意先別運賃、商品別運賃を算出できます。物流人件費や保管費も按分すれば、物流コストが見えてきます。得意先戦略、商品戦略に活用することができます。
物流コストモデルを作成し、健全経営を実現する
1. 得意先コストモデル
当コラムで前回解説した運賃計算システムを導入すれば、企業経営の武器にすることができます。
第20回 運賃分析システムを構築し、配送費の最適化を実現する(ERPナビ)
得意先ごとの売上金額、利益金額は基幹システムで把握できると思います。
運賃も同様に得意先別に集計できます。
また、別システムで得意先別作業時間を集計することもできるため、(過去ご紹介のハンディピッキングシステムに得意先情報を付加し、集計する仕組み)全体の物流人件費を得意先作業時間比で按分すれば、物流作業人件費も算出できます。
これにより、物流コストを引いた算出利益(下図)が見えてきます。
出荷単位が、細かければ物流人件費は増加します。
過剰サービスで当日出荷の締め時間が遅ければ、高い運賃の運送会社を使わなければならなくなるため運賃が増加します。
物流サービスを見直すことができれば、得意先ごとの収益を大きく改善することが可能となります。
さらにより細かく得意先ごとの利益状況を把握するため、受注事務処理人件費(受注入力、伝票仕分け、送り状発行等を出荷行数比で按分)、保管費(売り上げで按分)、情報システム費(出荷行数比で按分)を算出すれば、より正確な収益状況が把握でき、自社の利益に貢献している企業を明確にすることができます。
この得意先コストモデルを算出した時に、しばしば赤字の得意先が見えてきます。
しかし、赤字だからとすぐ取引を廃止する必要はありません。
なぜならば、企業努力により黒字化できる可能性があるからです。
赤字と知らずに垂れ流しをするのは経営者としては失格です。
2. 商品コストモデル
得意先コストモデルを、商品の切り口で分析をしたものを商品コストモデルと言います。
商品別の売り上げと利益をコンピューターで集計し、物流コストを商品別に按分する方法です。
配送運賃は容積比で按分、保管費は倉庫スペース比で按分、人件費は商品別作業時間で按分します。
商品コストモデルは、商品が大きければ商品1個当たりの配送費は増加します。
また、海外工場で大量に製造して国内の倉庫に長期間保管すれば保管費が増加します。
この商品コストモデルを活用すれば、商品戦略(発注ロットの検討、商品価格の設定)につなげることもできます。
次回は12月26日(火)の更新予定です。