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第15回 「問い」を変えると、組織が変わる
以前、依頼され、高校生に「経営学」の話をしに行った時のこと。説明にはほぼ無反応な子供たちを見て慌てて、「問い」を出すことに切り替えました。
「多くの日本企業の苦戦は、どういう経済環境から起きていると思う?」
「会社で働く人がやる気になるための条件を三つあげるとしたら何?」
そうすると、子供たちの目が一気に輝き、前のめりになり始めました。
もうすぐ5歳になる我が家の息子も、勉強机に向かうことには全く興味がありませんが、「クイズだよ」といって出すと、喜々として答えようとする。
もちろん簡単な問題ですが、問いに対して考えて答えを出すことが楽しくてしかたないようです。
答えられないと悔しくて、家で自ら調べてみたり。
会社でも、人は無意識に共有された「問い」に答えようとして日々の行動を決めています。
また、よい経営者・上司・マネージャーは、「問い」の立て方が極めてうまい。
メンバーが頭を使って創造的に答えを見つけ出すような問いを発します。
その問いに答えようとする中で、社員が主体的に考え、チームワークが促進され、顧客価値も高まるような問いです。
「教育で効果を上げたいのなら、正しい答えを示そうとしてはだめだ。よい質問をすることに集中するべきだ。」
(「ビジョナリ−・カンパニー」著者 ジェームズ・C・コリンズ)
マネジメントも、部下を育てながら業績を上げていく仕事。このコリンズの考えはそのまま当てはまります。
「事業は何か?」「顧客は誰か?」「顧客に撮っての価値は?」など、「問い」を立てることでマネージャーの脳を刺激し、眠っている発想やアイディアを引き出そうとしてきたドラッカーも、この「問い」の大切さ説き続けてきた人でした。
彼は、こうも語っています。
「間違った問いへの正しい答えほど、会社にとって危ういものはない」
これはどういうことでしょうか。例えば、「どうすれば部下を命令に従わせられるか?」という問いには、そのための答えが探されます。
結果、答えが見つかったとして、「言うことは聞かせられる」けれども、自発的なアイディアが生まれる組織にはなりにくいはずです。
クレームや問題点の隠蔽体質につながることもあるでしょう。
そもそも、昨今問題になっている「暴力的指導」「パワハラ」の類いの原点は全てこの「いかに言うことを聞かせられるか?」の問いから来ているはずです。
リーダーは自ら立てた問いに答えながら日々の指導スタイルを選択しています。
そこで、頻繁になされている下記のような問いかけを少し変えてみてはいかがでしょうか。
- 「どうすれば、もっと売上げを伸ばすことができるか?」
→「本当は顧客が我が社に求めていることで、我が社ができていないことは?」 - 「来期の業績が心配。既存客を維持するにはどうすればよい?」
→「どうすれば、顧客が『是非他社にも薦めたい!』と思えるサービスになる?」 - 「どうすれば、イベント来場者を大幅に伸ばすことができる?」
→「どのような価値を高め、告知すれば、人はイベントに足を運んでくれる?」 - 「どうすれば、部下のモチベーションを高めることができる?」
→「彼/彼女はどのような価値観、欲求を持って働いているだろう?」 - (スポーツチームであれば)「どうすれば勝てるか?」
→「どうすれば選手の強みを最大限に引き出して、相手の弱点にぶつけられる?」
何が違いでしょうか。もともとの問いは、答えを急ぐ問いです。
本質的な価値を高めることなく、答えを急がせる問い。これに急いで答えると、事業が失敗するリスクがあります。
直近では多少数字が上がったとしても、顧客がファンにはなってくれず、口コミも生まれない。
だから、営業マンのやる気も結果として高まらず人が離職することも多くなる。
また、顧客からの紹介も少ないため、新規営業も継続してコストがかかります。
マネージャーとして、リーダーとして「正しい問い」を発することも容易ではないと思う方も多いかもしれません。
確かに、事業や組織に関する思考が整理され、本質的な考え方をできていないと、なかなか正しい問いは発せられません。
しかし、まずは今社内で無意識に問われていることを、メンバーと一緒に検証・確認してみるだけでも効果があります。
「待てよ。今立てるべき問いは、それで合っているかな?より大事な問いって何だ?うーん、わからん。何か知恵ないか?」
これも、十分大切な問いです。
今、自分たちが問うべき大切なことは何か?この問いを探すことは、ひいては自分たちの組織が最も大切にすべき価値観を探ることでもあります。
正しい答えより、正しい問いを探す。
コストが一切かからず、抜本的なイノベーションを生むことができるかもしれません。是非、社員やメンバーと一緒に試してみてください。
次回は3月7日(木)の更新予定です。
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