第115回 「二極化現象」を考える

最近、同じ業種・業界にも関わらず「成長する企業」と「衰退傾向にある企業」との二極化が起きていますが、このことは「人材」においても、同じことが起こっているのではないでしょうか。今回は、「二極化現象」の要因について考えてみたいと思います。

「二極化現象」を考える

皆さん、こんにちは!
相変わらずというか、東京の緊急事態宣言も延長され、さらにその範囲が拡大されていくなど、今年の夏もガマンを強いられる状況の中、開催の是非は置いておいて、東京オリンピックでのアスリートの人たちの活躍にはいろんなことを勇気付けられると同時に、いろんなことを考えさせられます。

特に、今回はスケートボードのようなシティースポーツだけでなく、19歳の体操の橋本大輝選手など、若い人たちの活躍が目立ったように感じています。

もちろん、メジャーリーグで新たな道を切り開いている大谷翔平選手も若いトップアスリートの代表格ですが、中学2年生で起業し、高校1年で母校を買収したTimeLeap代表取締役社長 仁禮彩香さんと、ビジネス領域でも、若い人たちの活躍を見ていると、「さとり世代」と呼ばれる印象とは程遠いものを感じます。

今回は、若い人たちだけでなく、企業の業績においても言われている「二極化現象」の要因を考えてみたいと思います。

K字型現象

「V字回復」という表現は、誰しもがイメージできる表現で、説明するまでもありませんが、企業業績などでよく使われる表現で「下降現象が底を打って一気に上昇するさま」を表しています。

一方で、最近、しばしば目にする「K字型」という表現は何を表しているのでしょうか。

企業業績などでは、コロナ後の業績などにおいて「K字型現象」とか「K字型経済」といった表現で表しています。

これは同じ業種・業界にもかかわらず「成長する企業」と「衰退傾向にある企業」との二極化が起きていることを指していますが、この要因の大きなものの一つとして、

  • 成功体験に縛られない新たなことにチャレンジし、新たな価値を生み出していく企業
  • 成功体験に縛られ、新たなことへの取り組みが進まず、従来の価値が相対的に低減してしまう企業

が挙げられるのではないでしょうか。

人材におけるK字型現象

そして、このことは「企業業績」だけの現象ではなく「人材」においても、同じことが起こっているのではないでしょうか。

つまり、ビジネスに携わっている人が何らかの「取り組むべき課題」に向き合ったときに顕著に現れます。

仮に、その人にとって「今までの経験・ノウハウに依存した範囲内の課題」であれば対応可能であっても、「その経験・ノウハウが通用しない範囲の未知の領域の課題」に向き合ったときに、「どのように考える思考性か?」を意味しています。

人は「自分のスキル・経験・知見・成功体験」の範囲では対応しきれない課題に向き合ったときに、誰もが二つの感情・感覚の間で葛藤が起こるものです。

一つは、

  • 自分がやらなければ誰がやるんだ?! という使命感
  • 目の前の相手の期待に応えたいという責任感
  • どんな困難であっても乗り越えていくという覚悟

のような気持ちです。

そして、もう一方は、

  • 一歩踏み出すことへの不安
  • 失敗に対する恐怖
  • 待ち受けるであろう困難に対する躊躇(ちゅうちょ)

のような気持ちです。

この二つの感情・感覚の間での葛藤を経て、「よし、やってやる」と自分事として行動に進む方と、「私には無理だ」と何らかの言い訳をして「できる範囲」にとどまってしまう道を選ぶ方がおられます。

そして「よし、やってやる」という思考で行動を起こした方は、使命感・責任感・覚悟が打ち勝ち、コンフォート(快適)ゾーンを超えたチャレンジに踏み出すことになり、「未知の課題に対する自分事化が成立する」という経験を積むことになります。

逆に、不安・恐怖が勝り、自身の手が付けられる範囲で課題に取り組むことに終始してしまうと、「未知の課題に対して、自身の“あり方”は変わらないまま」という結果を招き、「自分事化できないまま」に終わってしまいます。
この「未知の課題・答えのない問い」に対して挑戦する思考性、すなわち「当事者意識の高い思考性」を持っているか否かが、「二極化現象」、すなわち「K字」の上向き・下向きの矢印に向けた現象の始めの一歩になっているのではないでしょうか。

正のスパイラルと負のスパイラルとによる加速する二極化現象

さらに言えば、コンフォートゾーンを超えたチャレンジを踏み出した方は、その結果、自身の挑戦意欲や向上心が飛躍的に大きくなり、「非連続な成長」を促進していきます。

加えて、一度「自分事化」した経験をした人は、さらに高い壁にぶち当たったときにも葛藤に打ち勝ち、さらなる上向きの行動へ踏み出しやすくなるという「再現性」をも促進していく傾向にあるように思います。

つまり、「学び、挑戦し、成長する」ことを通じて、さらなる「学び・挑戦・成長」が加速度的に伸びていく「正のスパイラル・正の連鎖」に入っていきます。

一方で、葛藤に負けて「自分には無理だ」ということでできる範囲内にとどめてしまった方は、しんどい思いをしないという意味で「楽チン」ですから、その後も、「行動しない・挑戦しない」ための「自分に対する充分な言い訳」として成立してしまい、何に対しても「学び・挑戦・成長」から遠くに身を置いてしまい、残念ながら「負のスパイラル・負の連鎖」に陥ってしまいがちな気がします。

こうして「始めの一歩の違い」が、結果として「大きな二極化」を生んでしまっているように思います。立ち戻って、冒頭の若手トップアスリートや若手経営者の方々の話を聞いていると、ほぼ口をそろえて「好きなことをやらせてもらった」と言っています。つまり「楽じゃないけど、好きなことを楽しくやってきた」ということを意味しているように思います。

そう考えると、社内でもこのような二極化現象が加速していることを感じておられるとすると、その彼らの周りにいる私自身や上司の振る舞いや言動が大きな影響を与えているのかもしれません。

「努力は夢中に敵わない」という言葉があるように、どうすれば社員を仕事に対して夢中にさせる環境・状況を作っていくか? が、リーダーとしての考え方、接し方をあらためて見直す必要があるのかもしれません。

今後も、よろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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