第116回 トップの意思決定が形成する「組織風土」

私たちの会社や組織においてトップの方のリーダーシップが、その組織に大きな影響を及ぼします。今回は「トップの意思決定が形成する『組織風土』」について考えてみたいと思います。

トップの意思決定が形成する「組織風土」

皆さん、こんにちは!

緊急事態宣言が9月末まで延長され、コロナとの付き合い方がますます難しくなっていますが、菅首相の総裁選不出馬には驚きましたね。

今のコロナ対策における政治家の言動や、それらを取り巻く官僚の言動を見ていても、いかにトップの方のリーダーシップが、その組織に大きな影響を及ぼすかは明らかなのではないかと思います。

それは、私たちの会社や組織においても、全く同じ構図が当てはまるわけで、今回は「トップの意思決定が形成する『組織風土』」に関して考えてみたいと思います。

「経営における意思決定」から透けて見えるもの

先日、関わらせてもらっている二つの会社で「トップの意思決定」に関する私自身の「気づき」がありました。

一つは、会社の「拘(こだわ)り」に関してです。

一般的に、今後のビジョン検討をする際に、その会社の創業時の想いや経緯・過去の影響が大きかった出来事などを振り返っていただき、そこから「その会社なりの拘りや大切にしてきた価値観」を探索するプロセスがあります。

その会社の今の主業態は、「シューズメーカー」であり、皆さんの議論は「靴」や「足」に集中していました。

ただ、ある方のお話で「防災頭巾」を作っていた時期があり、その時に当時の社名であった「●●シューズ」から「シューズ」という表現を外し、今の会社名「●●」になったという話が出てきました。

私にとっては、初耳の情報でしたので、詳しく伺ってみると、「震災があって、その時に私たちにできることを考え、防災頭巾が作れるという話になった。その時に、私たちは“靴メーカー”ではないのか? という議論があったが、私たちにとって大切なことは“人を笑顔にする”ことであり“元気にする”お手伝いをすること。“靴”はあくまでも“足からの健康”を通じて笑顔や元気につながる手段であって、“靴”よりも大切なことがあるのではないか?! という検討を経て、会社名から『シューズ』を外すという意思決定につながった」というお話でした。

この話は、この会社にとっての拘り・大切な価値観を見極めることの重要性を示すとともに、その拘りや価値観が明らかにできたことで、顧客・市場から取り扱い主製品を想起させる部分を外す「社名変更」という「経営における意思決定」につながった例といえるのではないかと思います。

この過去の大きな意思決定がされた経緯の事実を知らない今の社員の方々にとっては「自社の拘り」がどこにあるのか腹落ち・理解の深まった瞬間だったように思います。

経営における「意思決定の判断基準」

もう一つは、もっとリアリティーのある話です。

とある商社さんですが、いろいろな経緯があり、現在「顧客志向への転換」と「経営の独立性の堅持」とを掲げている会社での話です。

「経営の独立性の堅持」は、ある意味当然の話ではあるかとも思いますが、この業界では「仕入先」のパワーが極めて強く、営業の方も、「顧客志向」ではなく「仕入先」に従っていれば業績が上がる側面が色濃くあり、その結果、仕入先がその商社の人事や戦略にまで介入していた時期がありました。

それが故に混乱を招いた時期があり、その当時の「経営の意思決定」として、「顧客志向への転換」と「経営の独立性の堅持」という方向を導き出したという経緯があります。

そんな思考をしておられるこの会社において、今回、お客さんへの安定供給をできる体制づくり、つまりBCP的視点で、とある製品のメイン代替製品を仕入れ可能なメーカーとの取引を開始することを検討しておられました。

その趣旨を今のメイン仕入先メーカーさんに説明に行かれたところ、その仕入先メーカーさんが「自社からの仕入れが減るのでは?」との懸念を感じたのか、強硬に抵抗を示されたそうです。さらには「他社との取引をするのであれば、私たちからの供給・取引を止める」ような勢いで対話を進められる状況ではなかったようです。

そんな状況の中、この会社の経営者の方は、「もしストップされたら、全売上の10%以上の売上減少が余儀なくなる可能性がある。経営者としては、本当に恐ろしい話で、社員にも不安を与えることになるかもしれない。でも、私たちが決めた“顧客志向への転換”と“経営の独立性の堅持”を進めていこうとすれば、それも止む無しという経営判断をするつもりだ」という話を幹部の方々にされました。
私が驚いたのは、それを聞いた幹部の皆さんの反応でした。一般的には「オイオイ、そんな売上減になったら、営業にまた負担が増えるじゃないか……」とか「勘弁してくれよ。そんな簡単に売上減を受け入れないでくれよ。現場の苦労を分かっているのか……」といった感情やムードが出てきても不思議ではありません。

ところが、私が目の当たりにしたのは「そうだ! 私たちは、以前のような状況には戻りたくはない。仮に数字上、大きな穴が空いても、それは、私たちの“在り方”を貫くことなんだから、踏ん張ってみせる」という熱い空気感でした。

「ブレない意思決定の判断基準」が組織風土を形成する

この二つの会社の事例を聞かれて、どのように感じられますでしょうか……。
中には「そんなバカな! そんなリスクの取り方はおかしい」と感じられる方もおられるかもしれません。

ただ、私が感じた点は「経営に影響を及ぼすような大きな意思決定」を下す際に、普段から言っている「大切なこと・価値観・目指す姿」に向かう「判断軸がブレない意思決定」は、社員の皆さんの納得感を高め、勇気づけるということでした。つまり、「言っていることとやっていることの一致」に対する納得感です。

ここが、時と場合によって「判断軸がブレてしまう」と、普段言っていることに対しての本気度が疑われ、「どうせ……」ということになっていくのではないでしょうか……。

そして、そんなトップやマネジメント層への疑心暗鬼が深層心理の部分に横たわってしまうと、最初のうちは「その葛藤を押し殺して淡々と、粛々と自分の仕事をしているフリをしている」状態で済んでいたものが、それが長期的に続いてしまうと、社員の側も、最初は「フリ」だったものが、いつの間にか「フリ」ではなく「淡々と粛々と仕事をすることが普通」になってしまうような気がします。

そして「自分の意見・考えを持つ・主体的になる」という本来、目指したい組織風土の実現が遠のく状況を作ってしまう結果になってしまうのではないでしょうか……。
そういう意味で、トップの意思決定がそんな「組織風土」を形成していくのかもしれません。今一度、振り返ってみる必要があるのではないでしょうか。

今後も、よろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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