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第117回 「経営者視点」って何だ?~CHANGEとCHANCE~
経営をするうえで、短期的に結果を出すか、長期的に結果を出すかは組織内の役割によって変わってきます。「経営者/リーダーと管理職/マネジメント層」の意思決定の違いが、どこに起因するのかをそれぞれの立場の違いから考えてみたいと思います。
「経営者視点」って何だ?~CHANGEとCHANCE~
皆さん、こんにちは!
ようやくコロナの影響が一時的かもしれませんが、落ち着いている状況となり、緊急事態宣言も解除されました。自民党総裁選で岸田文雄新総裁が誕生し、何となく世の中が動き出した感覚になる秋を迎えましたね。
前回は、「ブレないトップの意思決定」に関して書かせていただきましたが、今回は「経営者/リーダーと管理職/マネジメント層」の意思決定の違いが、どこに起因するのかをそれぞれの立場の違いから考えてみたいと思います。
「経営者/リーダーと管理職/マネジメント層」それぞれの視点
「経営者視点」の類いの表現をしばしば耳にしますが、そもそも「経営者視点」とは一体何を指すのでしょうか……。
経営において、一般的には「代表取締役」は1人であり、専務や常務といった取締役が複数おられることが多いと思いますが、上記の「経営者視点」は「代表取締役」だけを指しているのでしょうか? それとも取締役の方々も含めているものなのでしょうか?
起業を想定して考えた場合、共同経営という形もあるわけですが、やはり誰か起業したいという個人がいることが多く、その方が「営業はAさんに、製造はBさん、財務はCさんに任せよう」という形で、役割を人に付けていきます。
そうすると、ごく当たり前ですが、Aさんは「営業を任せられた」わけですから、「いかに営業をうまく実践して、成果を上げればよいか」を考えるようになります。
という形で、それぞれが「与えられた役割・機能」の範囲で「どう成果を上げるか?」を考えるようになります。ということは、この時点で「部分最適の思考」が起動されることになります。つまり「経営全体を見る視点/全体最適」ではないということになります。
上記のように考えると「経営者視点」ということは「トップ」の方の「全体最適視点」と同義語になるのかもしれません。
全体俯瞰(ふかん)“視点”と弁証法的“思考”
「全体最適」と「部分最適」という表現は一般的ですが、この表現における要点は「“部分最適”の集合体は、必ずしも“全体最適”とは限らない」ということが挙げられるのではないでしょうか。
ある「役割・機能」を任せられた方が「部分最適」的に、その任された業務をうまく進めようとするのはごく自然な流れです。
にもかかわらず「全体最適≠部分最適の集合体」ということであれば、何かを劇的に変えなければなりません。それが「虫の目・鳥の目」といわれる「全体俯瞰視点」といえます。
ところが、「全体俯瞰視点」で経営全体を見ますと、今度は「こちらを立てれば、あちらが立たず」のような状態があちこちに存在することに気づいてしまいます。
そこで、次に必要になってくるのが「『合意形成を高める』のための思考性としての『俯瞰~統合』」を実現する「弁証法的思考」ということになり、“視点と思考”を変えないといけないということになることをご理解いただけると思います。
弁証法的思考の代表格として挙げられるのが「時間軸」です。「ある役割・機能を与えられた人」はどうしても「ある一定期間に成果・結果を出さないといけない」わけですので、結果的に短期的な時間軸に引っ張られがちになる傾向があるのではないでしょうか。
それに比して「経営者」は「価値の提供」を通じた「企業の永続性」を担っているため、長期的な時間軸との統合も避けて通れないわけです。
そして、もう一つ……
以前から言い古されていることですが、「企業変革/CHANGEを機会/CHANCE」に導くために着手すべきもう一つのポイントがあります。
それはCHAN「G」EとCHAN「C」Eの違いは「G」と「C」であり、「Tがなくなっている」、その「T」が意味することは何だと思うか……、という問いで表現されています。
それは「Taboo」だそうです。
つまり、社内で「誰もが分かっているけど、誰も言い出さない」もしくは「当たり前になり過ぎて、社内では見過ごされがちな違和感」を取り除くことが重要だそうです。
その実現のためにも、やはり「経営者視点」だけでなく「実行力」を備えて「不都合な真実」に向き合わないといけないのかもしれませんね。
今後も、よろしくお願いいたします。
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