第112回 「対話の質/レベル」を高める

この1年ですっかりオンラインでの対応が定着しましたが、便利さ・手軽さを感じつつも「対話の質」という意味では、やはりリアルとの比較の中で補いきれない部分がある気がしています。ではそもそも「対話の質」とは、何を指しているのでしょうか。今回は「対話レベルを上げる」ことを掘り下げて考えてみたいと思います。

「対話の質/レベル」を高める

皆さん、こんにちは!
いまだ出口の見えない新型コロナウイルスの影響が続いていますが、皆さんにとって、毎日の過ごし方は、どんなふうに変化してきていますでしょうか。

私は職種柄、ワークショップやコンサルティング的な対話の機会を持つケースが多いのですが、この1年ですっかりオンラインでの対応が定着しました。

ただ、個人的にはオンラインの便利さ・手軽さを感じつつも、「対話の質」という意味では、やはりリアルとの比較の中で補いきれない部分があることも否めない気がしています。

では、そもそも「対話の質」とは、何を指しているのでしょうか。
今回は「対話レベルを上げる」ことを掘り下げて考えてみたいと思います。

「対話/ダイアログ」とは?

仕事において、一般的にはディベート、ディスカッションといった表現は誰もが認識のあるものだと思います。ただ、今回取り上げる「対話/ダイアログ」との違いを明確にするのは意外と難しいのではないでしょうか。

まずは、その違いを認識するところから始めたいと思います。

ディスカッションとディベートとの相違

ディスカッションとディベートとは、意見対立の有無という点で異なるとされています。つまり、ディスカッションとは、ある特定のテーマについて議論することを指していますが、ディベートでは、それに加えて「当事者間の意見対立」が前提とされ、さらに意思決定において「原告vs被告に対する裁判官」のような第三者の存在の有無という点でも異なるといえます。
結果として、ディベートにおける目的は、相手に勝利して持論を通すことともいえるのではないでしょうか。それに対して、ディスカッションの目的は、そのテーマから何らかの結論を導くことといえるように思います。

それに対して「対話/ダイアログ」を比較的に考えると、その目的は「相互理解を深める」にあるように思います。そして、意思決定におけるプロセスの視点では「合意形成」といえるのではないでしょうか。

そう考えると、「対話」に関しては、参加者それぞれが言いたい事を率直に言える場・雰囲気や相互に理解できる組織/チームに対する信頼感・風土・土壌は、大前提ともいえます。この辺りを指して昨今「心理的安全性」と表現されている部分になります。

「相互理解を深める」ための思考性としての「具体と抽象の往復運動」

ここまでは「対話」を進めるための前提条件を記述してきましたが、ここからは今回の本題である「対話レベルを高める」、特に「相互理解を深める」ための思考性に関して考えてみます。

一般的に、現場にいる人たちは、具体的に起こった事象の話をしがちです。

「あのお客さんにこう言われた」
「設計部とこんな見解の違いがある」
「若手のAさんが退職したいと言ってきた」

といった感じです。

それに対して、経営者の立場にいる方々は抽象度の高い話をしがちです。「業界変化に呼応して、私たちは……でありたいと考えている」は代表的かもしれません。
上級幹部になればなるほど、まして経営者であれば、研究開発・マーケティング・製造・ 営業といった複数の部門や複数の事業を跨(またが)った視点で見ざるを得ませんので、ある意味、当然のことだといえます。

このことは、日々発生するさまざまな事象は「具体」であることが多く、視覚的要素が強く、目に見える状態で顕在化するともいえます。

それに対して「抽象」は視覚的要素が希薄であり、人の思考/頭の中にあるものであるために認識ギャップを生みやすい特徴が挙げられます。

いわゆる、中間管理職/ミドルの立場にいる方は、自分が担当した業務、つまり具体的な事象を積み重ねた成果において、高い評価を得た方がなっているケースが多く、「抽象度の高い領域」の表現や経験が不足しているのが一般的です。

だからこそ、この「抽象度の高い領域」と「具体的事象」とを概念化・構造化する能力が求められるのではないでしょうか。

このことを「コンセプチュアルスキル」といい、まさに経営者と現場、もしくは異なる部門や立場の方が言っている事を相互につないで通訳・翻訳する機能といえます。

「合意形成を高める」のための思考性としての「俯瞰(ふかん)~統合視点」

もう一つ、「対話」における意思決定プロセスとして挙げた「合意形成」を効果的に進める思考性を考えてみます。

一般的に「意見の異なる」、つまり「正←→反」の関係にある場合に、「二者択一をする/そのために多数決で決める」という意思決定が挙げられますが、これは「合意形成」とはいえません。
では「合意形成」はどのように進めるのでしょうか。

ここで「ヘーゲルの弁証法的思考」が登場します。

ヘーゲルが確立した弁証法は、ある命題(テーゼ=正)と、その反対(もしくは矛盾、否定)の命題(アンチテーゼ=反)、そしてそれらを本質的に統合した命題(ジンテーゼ=合)の三つで説明される。

つまり、異なる意見は視点の違いとして受け止め、それぞれの意見の存在を受け入れ、その「本質は何か? を統合する“合”を見いだす」思考性ということになります。

小難しく感じるかもしれませんが、「製造の立場からの視点」「営業の立場からの視点」が異なるも、その問題の本質は何か? を俯瞰(ふかん)的に考えてみると……といったことは実務的にもしばしば起こっていることではないでしょうか。

つまり、「対話の質/レベルを高める」には

  • 「相互理解を深める」ための思考性としての「具体と抽象の往復運動」
  • 「合意形成を高める」のための思考性としての「俯瞰(ふかん)~統合視点」

の二つの能力・スキルが重要になってくるといえます。

このいずれかの能力・スキルが欠けていると、対話を深めようとしても、認識ギャップや齟齬(そご)が発生してしまいがちになります。

逆に言えば、こうした「対話」を繰り返していくことを通じて、お互いの「思考の深さ」や「本質的に考えていること」が理解できるようになり、何とも言えない「信頼関係」や「あうんの呼吸」が形成されていくのではないでしょうか。

こうした部分もオンラインで掘り下げていけるようになれば、私が感じている「リアルとの比較の中で補いきれない部分」の違和感も解消されるのだと思います。

今後も、よろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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