第113回 「自己概念」を掘り下げる

私たちは「自分が何者であるか」という自分についての概念「自己概念」を持っています。ところが、自分自身のことであるにも関わらず、その「自己概念」が極めてあいまいなケースが少なからず見られるのも現実ではないでしょうか。

「自己概念」を掘り下げる

皆さん、こんにちは!
ようやくワクチン接種が動きはじめた感はあるものの、緊急事態宣言は延長され、いろいろな意味で閉塞(へいそく)感から解放されませんね。

こういう時期にも関わらず、イヤ、こういう時期だからこそかもしれませんが、最近、人材育成・能力開発の類いの話や取り組みが急激に増えているように感じています。

中でも「セルフ・マネジメント」「セルフ・リーダーシップ」に関する相談が多いように思います。このコラムでも何度か出てきているキーワードではありますので、今回は「セルフ・マネジメント」をつかさどる「自己概念を掘り下げる」ことを考えてみたいと思います。

「自己概念」とは?

私たちは「自分が何者であるか」という自分についての概念「自己概念」を持っています。

ところが、組織心理学者ターシャ・ユーリック博士の研究によると、「約95%の人が『自己をよく理解している』と思っていても、実際には10~15%の人しか、きちんとした自己認識ができていない」だけでなく、「最終的に『自己認識を高めることができた人』は、仕事でもプライベートでもパフォーマンスが上がり、より質の高いリーダーシップを発揮できるという結果が出た」だそうです。

「自己概念」とは、自分以外の他人を含めた外部からの意見や評価による「他人軸」ではなく、自己理解を深め、自分の価値観はどのようなもので、何を大切にし、さらにはどのような生き方をしていきたいのか、何を目指しているのかという「自分軸」のある人生哲学にもつながるものではないでしょうか。

ところが、自分自身のことであるにも関わらず、その「自己概念」が極めてあいまいなケースがユーリック博士の指摘どおり、少なからず見られるのも現実ではないでしょうか。

「自己概念」の形成

「自己概念」は幼児期から青年期の間に最も成長するといわれています。

幼児期の2歳前後には、自分とほかの子供たちとの違いを認識しはじめ、6歳頃までには、既に社会集団の観点から自分自身を定義しはじめているといわれています。
さらに7~11歳の間には、自分がほかの人にどのように認識されているかを考えはじめています。

そして、青年期は「自己概念」の重要な時期とされており、通常、残りの人生の「自己概念」の基礎となります。この時期に得た成功と承認の体験・経験が、成人期により大きな自尊心とより強い自己概念形成に関係してくるとされています。

つまり、社会人になりビジネスマンとして働いている従業員一人一人の自己概念も、このように幼児期~青年期に形成されていき、それを今も深層心理の中には抱いていることが多いということになります。

セルフ・マネジメントの原点

このことを前提にすると「自己概念を掘り下げる」には、自分の「幼児期~青年期の経験や思いを振り返り、メタ認知レベルで理解をする」ということになります。
つまり、「自己概念の原点」は「自分の過去の経験の中にしかない」ということになります。

そこで、このような「問い」を通じて、自分の過去を振り返って考えてもらうことになります。そして「私は」を主語にして答えるところにポイントがあります。

  • あなたが心から楽しいと感じるのはどんなときですか?
  • 何の制約もないとしたら、人生で成し遂げたいことはどんなことですか?
  • 逆に、あなたが人生でやりたくないことは何ですか?
  • 今までで、時間の経過を忘れるくらい夢中になったことはどのようなことですか?
  • あなたが今までで、人に喜んでもらったことは何ですか?

など

ところが、実際にこれを行ってみると、必ずしも簡単とはいかないケースがあるようです。 幾つかのハードルになる要素としては、

  1. 過去を振り返るのもイヤだ! というほど、強いネガティブイメージに支配されている
  2. 考える行為そのものが面倒で苦手だ
  3. 「事象・出来事・感情」は思い出せるが、メタ認知的に理解できない・言語化できない
  4. 「やりたいこと」と「成し遂げたいこと」との区分・整理ができていない

などが挙げられるような気がします。

上述4に関して言えば、「あなたの人生において“やりたいこと”は何ですか?」という問いに対して「ゲーム・料理・競馬・趣味」といった「目の前の(短い時間軸/瞬間的)楽しさ・快楽」を感じる事象・事柄しか挙げられない人がいます。

もちろん、これは本人にとっては事実であり、真実なのですが、ここでの問いは「成し遂げたいこと(長期的/本質的)」の視点になるわけです、こういう人に限って「そんなものはない」と、考えること自体を自らシャットダウンしてしまい思考停止に陥る傾向があるように思います。つまり、これは上述2に該当します。

また、その事象・事柄の背景にある自身が「楽しい」と感じる「価値観・価値基準」を見いだせない・見いだそうとしない、つまり上述3も出てきてしまいがちな傾向があるかもしれません。

このように犯罪被害、DVといった極端な経験を持たれているような上述1のようなケースを除けば、2~4がそれぞれが大きく関係していることが理解いただけるのではないでしょうか。

さらに言えば、その1でさえも、人に言うかどうか(自己開示)は別にしても、その経験が自己概念の形成にどう影響しているのかを考えること自体は重要(自己受容)だといわれていることも事実だと思います。

「成し遂げたいコト・人生哲学」といった表現をしてしまうと「やらなければならない」的に聞こえるかも知れませんが、そうではなく「時間軸を長く持って欲求/やりたいこと」として捉えられると、そこに向かうハードルにもあたる「やるべきこと」が「乗り越えたいこと・乗り越えると次に進めるやりたいこと」に遷移していくのではないでしょうか。

そういえば、サッカーの経験のある人は「遠くを見なさい」という指導を受けたことがあるのではないでしょうか。

「近くの味方を探すと、遠くが見えない」
「遠くを見ようとすれば、広く視野を確保でき、さらに近くの味方も見える」
というわけです。

結局、本質的な真実は全てつながっているということでしょうか……。

今後も、よろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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