第111回 社員を成長させる会社

ギャップが生まれている時代において、企業の使命・価値観の押し付けやそれぞれの専門性スキルアップだけでそれを埋めることは難しいと思われます。では、どう考えることが大切になるのでしょうか。

社員を成長させる会社

皆さん、こんにちは!
コロナ禍の拡大はとどまるところを知らず、第4波の懸念が広がっていますが、月日は確実に流れ、新入社員・新入生の姿を見かける春を迎えました。

昨年から、新入社員研修や大学の講義風景も一気にオンラインスタイルに様変わりしてしまいました。もちろん、非接触対応の環境を迫られる中、オンライン/リモートの便利さが定着したこと自体は大きな変革であり、選択肢が増えたという意味では意義深いことだと感じています。

ただ、それが一般化してきたが故に、「先輩社員とのリアルな接点が全くなく、組織の一員としての実感が湧かない」といった弊害も従来のリアルでしか賄えない側面が明らかになってきたことも事実ではないでしょうか。

そんなことも含め、今回は「企業における“人材育成”の在り方」を考えてみたいと思います。

「企業における必要な人材」の変化

そもそも「企業において必要な人材」とは何を指しているのでしょうか。今までに関していえば、

  • それぞれの企業における価値観・使命に共感している
  • その価値観・使命に沿ったビジョンの実現のために自律的に動ける
  • 結果として「企業の成長」、いわゆる「業績」にそれぞれの専門性を生かして貢献できる

ことが一般的な方向性だったのではないかと思います。

ところが、そもそも社会環境の変化が過去とは比較にならないほど変化し、「企業」の寿命が短くなってしまっています。過去には「年功序列」が有効に機能していた思考が、今も少なからず染みついている日本企業においても、その存在が保証されない時代背景になってしまっています。

そんな状況を知ってしまったZ世代に代表される若い人たちは「企業の存在が永遠である」とは認識しておらず、「自身の学び」は年齢を超えたテーマになり、数年前に『君たちはどう生きるか』(著:吉野 源三郎)が大ヒットしたように、「正解」がない問いに対して自分がどのような解を導くのかが大きな関心ごとになっています。

それに対して、企業におけるこれまでの人材育成は「こうすれば、こうなる」的なその企業における「正解」があることが前提になっており、その「正解」を理解・実践できるような人材を効率的に育てることが重要な視点だったような気がします。

そんなギャップが、「リベラルアーツ」への注目度が上がっている理由の一つになっているような気がします。

参考:リベラルアーツについて知る『創造性を身につけて 本当に自由な生き方をするために』 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院長/上田紀行教授

今後の「企業の人材育成」の在り方に関して

このようなギャップが生まれている時代において、企業の使命・価値観の押し付けやそれぞれの専門性スキルアップだけで、このギャップを埋めることは難しいと思われます。
では、どう考えることが大切になるのでしょうか……。

従来に比し「個人の思考性」が大きなウエートを占めてきた一方で、自分自身の人生における価値観や使命に関して考える機会は必ずしも多いとはいえないことも事実です。

つまり「仕事を通じて、どんな人間になりたいのか? どう貢献していくのか?」があいまいな状況のまま「専門性スキルを高めろ」と言われても「それやって、自分にとって何の意味があるの?」的な疑問が生じてしまいがちです。

そうした「個人の使命・価値観」、つまり「自分/個人の人生観」があってこその「職業観・仕事観」につながることを踏まえますと、そこを避けて通るわけにはいかないのではないでしょうか。

そういう意味で、「自分/個人の人生観」を見いだすことが、「自分の成長」を促す原動力になり、その価値観が企業の価値観と合致していることを自覚的に認識できれば「自分の成長を支援してくれた会社」に対しての愛着や信頼を初めて感じられるようになってきます。

つまり、従来は「企業の成長に貢献する人を育てる」だった視点を「個人の成長/幸福を支援する企業に人が集まる」に転換する必要があるのではないでしょうか。

そのことを『経営品質向上プログラム アセスメントガイドブック』には「個人と組織の能力向上」として下記のように記載されています。

卓越した経営を実現していくのは、そこに集う人に他なりません。
組織が目指す理想的な姿や価値観に共感していれば、そこに集う人は、その実現に貢献しようという気持ちになり、深く考え、実現に向かって組織内外のさまざまな人たちと良い協力関係を構築する事が出来ます。~中略~
社員一人ひとりの「自己実現」による自律を大切にしています。社員のやる気を高め、より高い自己目標を実現する事を目指しています。~中略~
組織の理想と自らの理想を摺合せ、高い目標を自ら立て、それを自らの責任で成し遂げていく人、このような人づくりを組織全体で実現しようと意図しています。

  • * 『経営品質向上プログラム アセスメントガイドブック 2012年度版』p.116から抜粋

「組織の理想と自らの理想を摺合せ」と表現されていますが、「自らの理想」がなければ擦り合わせようもないということを意味しているのではないでしょうか。

人間の五感は「オンライン」だけで相手を信頼しないようにできている

オンライン、リモートワークが一般化している環境の中で、専門性スキルを効率的に伝えることは容易になってきました。

ただ、京都大学元総長・山極壽一先生のコラムによると「人間の五感は『オンライン』だけで相手を信頼しないようにできている」そうです。

人間の五感は「オンライン」だけで相手を信頼しないようにできている──霊長類の第一人者・山極京大総長にチームの起源について聞いてみた(サイボウズ)

こうしたことを理解して「企業として“学びの機会”」をオンラインとリアルをどうハイブリッドしていくのか? はよくよく考えていく必要があるのではないでしょうか……。

それを考えること自体が「社員の成長を支援する会社」としての姿勢になるのではないかと思います。

引き続き、今後もよろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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