第109回 ES(従業員満足度)からEH(従業員幸福度)への進化

コロナ禍の影響で、多くの人の価値観や仕事観は大きく変わらざるを得なくなっています。皆さんの会社でも、一人でも多くの従業員が幸せを感じる会社にしていくことでこそ、この厳しい環境を乗り切っていけるのではないでしょうか。今回は「本質的に働き方を考える」ことを考察してみたいと思います。

ES(従業員満足度)からEH(従業員幸福度)への進化

皆さん、こんにちは!

2021年に入っても、新型コロナウイルスの拡大はとどまることはなく、緊急事態宣言も延長されてしまいました。業種・業態に偏りはあるかもしれませんが、在宅勤務やオンラインミーティングも日常化しつつある中、オフィスや組織における従業員の思考にも徐々に影響が及んできているのではないでしょうか。

2020年はパソナの本社機能淡路島移転が話題になりましたが、最近では、電通や日本通運も本社ビル売却方針が発表され、企業におけるオフィスの在り方を見直す流れは加速していくのではないかと思います。

「働き方改革」という掛け声も、ある意味で「コロナ禍の影響」でどこかに吹っ飛んでしまった印象もありますが、逆に言えば、声高に掛け声を叫ぶまでもなく、本質的に「働き方」を変えざるを得ない状況になったということかもしれません。

ということで、今回は「本質的に働き方を考える」ことを考察してみたいと思います。

ES/従業員満度足の進化

皆さんは「ES/従業員満足度」はよく知っているかと思いますし、いわゆる「従業員満足度調査」の類いを実施している会社も多いのではないかと思います。

そういう意味では、ここで改めて「従業員満足度」に関して深く触れることはしませんが、参考資料は数多(あまた)、あふれるほどありますので、参考にしてもらえればと思います。

「従業員満足度(ES)」とは? 向上につながる5つの要素と企業へのメリットを解説(HRpro)

その「従業員満足度」もいろいろな見方があり、進化もしており「GPTW/働きがいのある会社」が大きなトレンドになっています。

GPTWジャパン

GPTWでは毎年2月に企業ランキングを公開し、日経ビジネスでも必ず特集記事が組まれていますので、目にされた方も多いと思います。

GPTWの意義は、「従業員満足」の概念を「働きやすさ」から「働きがい」にシフトする視点を提供したことではないかと思います。
最近では、「GPTW○年連続ランクインしました」というメッセージが、新卒採用の学生の応募数にも大きな影響を与えている話もよく聞かれます。

GPTWは「働きがいの要素」を「信用・尊重・公正・誇り・連帯感」と定義し、「働きがいと業績の相関関係」を最初に明らかにしたこともインパクトを与えました。

「働きがい」とは?(GPTWジャパン)

そして、「働きがい」は従業員一人一人の問題にとどまらず、個人と経営・組織が相互補完関係にあることを明らかにしたように思います。

さらなる進化……EH

この概念が、さらに大きく進化させる、加速度を増した要因の一つとして「コロナ禍の影響」があるのではないでしょうか。

「新型コロナウイルス」により「働く場所」は問われない状況になり、在宅勤務も増え、副業容認の流れも進む中、仕事とプライベートの境界は、どんどんあいまいになってきています。

そういう意味では「ワークライフバランス」と表現される「ワーク/仕事」と「ライフ/人生」は別物でバランスを取るという概念すら崩れて、「ワーク/仕事」と「ライフ/人生」は一体化してきており、落合陽一氏などは「ワーク・アズ・ライフ」と表現して「生き方が仕事そのものに現れる」とする潮流が台頭してきています。

つまり、「自分の人生は幸せか否か?」「仕事を通じて心が満たされるような幸せを実感できているかどうか?」という視点であり、それが、「EH(Employee Happiness)/従業員幸福度」になります。

数年前から、前野隆司教授(慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント<SDM>研究科)による「幸福学」が提唱され、「幸せの4つの因子」を下記のように明示しています。

  • 第1因子:やってみよう因子
  • 第2因子:ありがとう因子
  • 第3因子:なんとかなる因子
  • 第4因子:ありのままに因子

詳細は下記を参照ください。

幸福学研究の日本第一人者、前野隆司教授に聞く「幸せの4つの因子」とは? │ 聞き応え(キキゴタエ)インタビュー

さらに『幸福学×経営学 次世代日本型組織が世界を変える』(共著:前野隆司・小森谷浩志・天外伺朗/刊:内外出版社)では「働く人を幸せにできる企業しか生き残れない」としています。

コロナ禍の影響で、多くの人の価値観や仕事観は大きく変わらざるを得なくなっています。当然ですが、そんな人たちが働く場である企業側としても、価値観や仕事観を新たにしていかないわけにはいきません。

皆さんの会社でも、一人でも多くの従業員が幸せを感じる会社にしていくことでこそ、この厳しい環境を乗り切っていけるのではないでしょうか。

引き続き、今後もよろしくお願いいたします。

参考資料

弊社では株式会社日立製作所と中小企業を活性化する事業を協創・提供させていただいていますので、下記参照ください。

幸せの見える化技術で新たな産業創生をめざす「出島」としての新会社を設立 with/afterコロナ時代の企業マネジメントや働き方改革の支援、さらなる新分野の事業創生へ(株式会社日立製作所)

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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