第54回 エンゲージメント・マネジメント戦略で振り返る

皆さん、こんにちは!
早くも初夏のような暑い日が続いていますが、皆さん、お変わりありませんでしょうか。

三菱自動車の燃費データ不正問題に始まり、スズキも不正測定を認め、自動車業界全体に激震が走っています。また、自動車業界だけではなく、東芝の巨額赤字転落に、シャープの鴻海精密工業による大規模な人員削減問題と、歴史ある日本の大手著名企業が幾つも立ち行かない状態になってしまっている現実を目の当たりにさせられているような気がします。

今回は「動機づけ・モチベーション」という視点で、この現実をどう見ていくのか? を考えてみたいと思います。

動機づけ・モチベーションの変遷

2010年にダニエル・ピンク氏が「モチベーション3.0」という概念を発表しました。
モチベーションは社会の成熟度と共に変化をしており、21世紀の現代の傾向としては1.0→2.0という時代を経て、3.0の傾向が強くなっているとのことですが、同氏は1.0~3.0をそれぞれ下記のように規定しています。

モチベーション1.0:生物的な動き(サバイバル)による動機
モチベーション2.0:与えられた動機(信賞必罰)
モチベーション3.0:自発的な動機(ワクワク感)

上記の理解を深めるため、「“組織の成熟度”としての人材の見方」を時代背景と共に説明させていただくと…

  1. モチベーション1.0:生物的な動きにより動機
    戦後の日本社会では、誰しもが生活に困窮しており、とにかく「安定した生活」を求めていた時代背景がありました。そんな中では「一生お前の面倒を見てやるからウチの会社で頑張れ」という『親子関係:滅私奉公・終身雇用』が成り立ち、多くの人が「ウチの社長のために…」といった動機づけが有効な時代がありました。
  2. モチベーション2.0:与えられた動機(信賞必罰)
    前述の時代を超え、高度成長時代から競争社会に突入し、「人よりも少しでも豊かな生活」を求めるようになってきて、「これだけやったら、これだけ給料を渡す。だから、もっと頑張れ」という『主従関係:成果主義・契約関係』が台頭をしてきました。
  3. モチベーション3.0:自発的な動機(ワクワク感)
    21世紀を前後して「モノが溢れる時代」となり、同時に、「成果主義」の弊害としての「ギスギスした人間関係」がクローズアップされ、そうした「物欲・モノへの渇望」の時代から「コト・心の時代」が求められるようになり、第3段階の『婚約関係(エンゲージメント):理念・自律・対等』による動機づけの時代を迎えるという変遷を辿ってきているという内容です。

モチベーション3.0

この概念で提唱されている「モチベーション3.0」は、前述した日本の戦後の時代推移と照らし合わせて説明をさせていただいたように「社会の成熟度」と共に変遷を見せているということがご理解いただけるかと思います。

そして、現代の日本では「ゆとり教育世代」が既に社会に出てきており、良くも悪くもいろいろな波紋を呼んでいるわけで、この世代の人たちをテーマにしたTVドラマが人気を博していたりしています。

この「モチベーション3.0」の「婚約関係:理念・自律・対等」をもう少し掘り下げると「企業/組織と個人(自分)の関係」を「縛られる・従う」という概念ではなく「対等」に考えているという点で、2.0以前とは決定的に異なります。

その「企業/組織」が、「こんな想いを持って、こんなことを実現したい」という「理念・ビジョン」に共感して、「俺もそう思う! 私もそれを目指したい!」から「その企業/組織で働きたい」というモチベーションの形成の仕方をしています。

一方で、「想い」に共感しているだけで「結婚」しているわけではないので、極端に言えば「想いに共感できないのであれば、いつでも別れます」という認識もあるのかもしれません。そういう意味で「婚約(エンゲージメント)関係」と表現しています。

エンゲージメント・マネジメント戦略

こうした時代背景を踏まえて、日本経済新聞出版社から『エンゲージメント・マネジメント戦略(著:稲垣公雄氏/伊東正行氏)』が出版されています。
この書籍の中では「ザ・リッツ・カールトン大阪・亀田メディカルセンター・伊那食品工業・川越胃腸病院・ネッツトヨタ南国」といった日本経営品質賞の受賞企業をはじめとした業種・業態・規模の枠を超えた事例企業の状況が数多く紹介されています。

その中で提示されている「エンゲージメント・マネジメントモデル」が【図1】です。

自分たちの会社の「使命・理念」に共感している仲間・同僚がその実現に向けて結束することで、「製品・サービスの質」を高め、結果的に顧客からのロイヤルティーが上がり、業績につながっていくというサイクルです。

一方、この上記サイクルから「顧客の視点」を外した時の「負の循環」として明示されているのが下記の【図2】になります。この場合は、一見すると【図1】に似ていますが、顧客の代わりに登場してくるのが「上司の反応」となっています。

「自分」という個人の立場から見れば、「上司に評価される」ということがモチベーションになっており、サイクル的には回ってしまいます。
つまり、このサイクルが回ってしまうがゆえに、「評価されること」でモチベーションが上がってしまったり、仕事をしている気になってしまったりするわけですが、最終的には「顧客の視点」を見失っていることのツケが、今回の不祥事や立ち行かなくなっている大手企業の実態を表しているように思います…。皆さんは、いかが思われますか?

新入社員も入り、新たな風が吹く可能性が一番高い季節でもあります。あらためて、今の会社の状況を振り返ってみてはいかがでしょうか…。

今後も、よろしくお願いいたします。

次回は6月22日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピュータ営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績に繋がる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

社員がイキイキ働く企業風土・自律的従業員育成のあり方を考える バックナンバー

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