第53回 課題解決に向けた二つのアプローチ

皆さん、こんにちは!

熊本を中心にした九州での地震は、ショッキングな出来事ですね。被災された地域・方々にお見舞いを申し上げます。皆さんの会社、あるいは社員の方々にとっても直接・間接を問わず、少なからず影響があるのではないでしょうか。

G7会議で各国外相の広島原爆記念館訪問はケリー米国務長官の決断が歴史的にも大きな意味を持ちそうですが、並行して前ウルグアイ大統領のホセ・ムヒカ氏も同記念館を訪問したそうです。同氏の東京外国語大学での講演での日本人へのメッセージも、私たち日本人の心に突き刺さり、自身のことを振り返るきっかけになる内容だったように思います。

「一番大きな貧困は孤独」 世界で一番貧しい大統領 ホセ・ムヒカ氏の初来日講演(logmi Webサイト)

私たちは実は「本質的な課題が何なのか?」を既に知っているにも関わらず、その「本質的課題の解決」に真っ直ぐに向き合わずに、「自身(自社)の損得」に一喜一憂してしまう側面があることは否めないように思います。

今回は「会社における諸々の課題」の中で、特に「自律的組織風土・従業員育成」という視点における「課題解決の落とし穴・陥りやすい罠」について考えてみたいと思います。

「問題」と「課題」の区別

「問題」と「課題」という言葉がありますが、皆さんはこの二つをどのように使い分けを意識していますでしょうか。似て非なる言葉だと思いますが、いざ自分の言葉で説明するとなると意外に難しいのではないでしょうか。
一般的に「経営課題」や「戦略課題」とは言いますが「経営問題」「戦略問題」とは言いません。逆に「環境問題」「経済問題」とは言いますが「環境課題」「経済課題」という表現は使いません。
つまり「問題」とは、既に発生している状況だったり、事象そのものを指したり、組織にネガティブな影響を及ぼすものであると言えるのではないでしょうか。
一方、「課題」とは、会社(あるいは組織・人)が掲げる目的や目標を達成するためにこれから成すべきことであり、ポジティブに表現されることが多いように思います。
つまり、「問題」とは、「あるべき姿と現状のギャップ」であり、その「ギャップを埋める方法」が「課題」ということになります。「問題」とは既に発生している状況ですので、自分自身の意思とは関係なく、自然発生的なことも含まれますが、「課題」とは自分で意識して設定するものということもできます。

そういう意味で、「問題を見極める能力」と「その解決に向けた適切な取り組み課題を設定する能力」の両方が必要になると言えます。

「問題を指摘する」ことはできても「課題を設定し実行する」ことはできていないということが多く見られる現実であり、それが「愚痴・文句」という形で表出していたりします。

つまり、「問題」と認識していても「課題」として捉えない限り、解決には導かれないということが言えます。「問題と分かっている」だけで「課題として取り組む」という行動を伴わせることが大切なのです。

しばしば「問題」を指摘した際に「そんなことは分かっている」という「分かっている病」に掛かっている組織や人に出くわしますが、「取り組み課題を設定していない自分」には向き合っていないのではないでしょうか。

課題解決に向けた二つのアプローチ

会社・組織には多岐に亘る問題があるわけですが、特に「組織的な問題(例えば、自律的な従業員が育っていない)」の場合、その解決に向けたアプローチが、どうしても「人の問題としての視点」に立脚した「属人的」なアプローチになりがちな傾向は否めません。

つまり「A君はできるけど、B君はできていない」とか「C君は能力が高いけど、D君は能力がない」といった具合で、勢い「B君・D君が悪い」→「彼らを育成する」→「彼らに気づきを与える」→「人材育成・研修」といった具合です。

「人材育成」という領域は、経営者の方や組織のリーダーの仕事の大きな要素ですので、このアプローチを一方的に否定するものではありませんが、このアプローチでは「彼らに反省させる、何が原因・要因かを考えさせる」の繰り返しになりがちであり、これでは、どこまで行っても属人的な領域から抜け出すことはできません。また、この視点では「非があるのは、常に彼ら」という私たち自身にとって「他責思考」になりがちになるという罠が待ち構えています。

そこで、もう一つ、不可欠なアプローチがあります。
忘れがち、見落としがちではありますが、それが「プロセスの視点」に立脚したアプローチです。「プロセス」ですので「やり方・進め方・仕組み」と理解していただければと思います。

つまり「A君はできるけど、B君はできていない」とか「C君は能力が高いけど、D君は能力がない」という「事象を問題」と捉えた場合に「こういう事象・結果を生み出してしまっているプロセス(やり方・進め方・仕組み)に問題はないのか?」という視点で「解決に向けた取り組み課題」を考える視点を持つということになります。

このアプローチで考えると、一般的には「プロセスを変更できる権限を持っているのは経営者・リーダー」であるケースが多いと思いますし、「私自身にできること」として「自責思考」として捉えやすくなるのではないでしょうか。

もちろん、前述の「研修制度を充実させる」というのは、この次元では「プロセスの見直し」とも言えますし「自責思考で考えた末の答え」ではありますが、その実施段階において「受講生側に依存する」という意味で「最終的に他責に依存する思考」というロジックに変わりはありません。

「人のアイデア」を「プロセス」に転換させる

もちろん、経営者やリーダーが常に最高の「プロセス」を編み出せるとは限りません。特にサービス業で代表されるように、顧客接点を現場に携わるスタッフに依存せざるを得ない業態であれば、本社・本部におられる経営者やリーダーには分からないことが多くなるのは否めない事実といえます。

そこで、必要になってくるのが「現場での好事例・ベストプラクティスを、プロセスに昇華するための仕組み」ということになってきます。

ディズニーランドでの身長制限のある乗り物に並んでいた子供が、いざ自分の番になった際に規定の身長に届かないことが分かった時の対応の仕方は、あまりにも有名な話ですがご存じでしょうか。

皆さんの中にも、実際にそのサービスを体験した方もおられると思いますが、「身長が伸びて規定を超えた時に並ばずに乗れる権利を記載した「チャレンジャー証明書」がもらえます。(残念ながら、悪用されるケースも多く、現在では廃止されていると聞きましたが…)

この制度の発案者はアルバイトの方だったようです。つまり、現場でこうした状況に出くわした際に、その場で「咄嗟に機転を利かせた対応」がお客さんに非常に喜ばれた事例として社内で取り上げられ、それをそのまま「制度」として展開をしたという事例であり、「ベストプラクティスをプロセスに転換させた好事例」として挙げられると思います。

この事例のポイントは、こうした「現場での取り組み」が「組織全体で共有」され、しかもその事例を「プロセス・仕組み」として取り込む意思決定をしているという点にあると思われます。

皆さんの会社では「現場での取り組み」が「組織全体で共有」する機会・場面は設定されていますでしょうか? 同時に、そうした「事例をプロセス・仕組みとして取り込む」意思決定する場がありますでしょうか。

このように「問題」を「取り組むべき課題」として認識し、それに対する「個人による解決策」を、「その課題を解決するプロセス」に昇華させていくことができるのは、意思決定する立場にある経営者・リーダーの方自身に与えられた権限を活かす行動になってくるはずです。

「課題解決に向けたアプローチ」を考える際に「人の側面の視点」と合わせて「プロセスの側面の視点」を意識していかれることをお奨めいたします。

今後も、よろしくお願いいたします。

次回は5月25日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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