第52回 そもそもの「目的」に立ち返るチャンクアップ

皆さん、こんにちは!

先日、女子サッカー「なでしこジャパン」が、リオ・オリンピック出場を逃すという残念な結果に終わったニュースは、あらためて「リーダー論」の呼び水になっているようです。昨年末に引退した「澤穂希選手」というピッチ上のカリスマ的なリーダーの存在があまりにも大きすぎたのか、実態は測り知れませんが、「リーダーの役割・リーダーの思考性」をあらためて考えさせられる出来事であることは間違いなさそうです。

前回も、このコラムのテーマ「イキイキ働く企業風土・自律的従業員育成のあり方」に向けたリーダー・経営者に必要な「愛と志」に関して述べさせていただきました。

今回も、その続編になりますが、リーダーであり、経営者である皆さんが陥りやすい「目的の変容」の視点からアプローチさせていただきます。

ある経営者との会話

先日、ある経営者の方から下記のような話を伺いました。

実は私は少年野球のコーチをしているんです。
少年野球のコーチの時は「〇〇大会で優勝」という目標はあるんですが、それ以上に、上手くない、どちらかと言えば下手くそな子供たちの方が可愛く感じ、彼らの成長を一生懸命応援し、サポートしたくなるんです。
なぜなら、上手くできる子は、何をやらせてもすぐにできますから、私たちコーチがあまり手を掛けなくてもイイんです。それよりも、下手くそな子をしっかりサポートしてあげて彼らが上手くなることが、チーム全体にとっても必要なことなので、私たちの出番だと思うんです。
ところが、会社では、できる社員が可愛く、できの悪い社員を育てる・サポートするにはイライラが募り、腹が立ってしまうんですよね……。
という内容でした。

非常に興味深い話でしたので、私は「少年野球のコーチとしてのご自身と、経営者としてのご自身の違いには何があるんでしょう?」と問いかけてみました。

すると、「ウ~ン……」とひとしきり考えた後で「“自分に損得があるかないか”ですかねぇ……」と仰り、「ということは、私は“自分の損得”が関わると、“人の成長”をないがしろにしてしまうってことですか……それって、自己中心的ってことじゃないですか……。」と自問自答するように続けられました。

知らぬ間に訪れる「目的の変容」という罠

このやり取りは、大切な視点を含んでいます。
人は残念ながら、そもそもの「目的」が知らない間に変わってしまうという罠に陥りやすいということです。と同時に、「知らない間」ですので、当然ですが、変容していることに「自分では気づかない」という事実です。

この方の場合、少年野球のコーチとしては「子どもたちの成長に貢献する・役に立つ」という「ご自身の目的」を明確に持っておられるのだと思います。だからこそ「〇〇大会で優勝する」といった「目標」はあるものの、「目的」を大切にし続けることができておられ「下手な子供たちに手を掛ける」ことが当たり前のようにできているのではないでしょうか。

ところが、経営者としては「業績」や「利益」、あるいは「ご自身の収入」、果ては「あの経営者はスゴイ」と言われる「名誉欲」といった「目標」が「知らぬ間」に大切になってしまい、そもそもの「経営の目的」を見失ってしまっていたということなのかもしれません。

結果的に「できの悪い社員」のことが、ご自身の「目標」に向けての「阻害要因」と映ってしまっているのではないでしょうか。

その判断軸のズレを起こしている要因を「自分に損得が関わっているかどうかではないか?」と洞察されたということです。

ご自身の「経営の目的」は何か?

企業経営ですので、もちろん業績は不可欠ですし、利益の拡大も求められるべき項目であることは明白です。

ただ、それは一体「何のためなのか?」
「世の中に貢献するためなのか?」「お客さんに喜んでもらうためなのか?」「社員の幸せのためなのか?」……。

その部分が「知らぬ間」に置き去りになってしまい、「自分がイイ思いをするための業績・利益……」といった思考になってしまったとすると、本末転倒であり、そこにいる社員も同様に「自分の損得」のために働くことになってしまっていたとしても、彼らを責めることはできないのかも知れません。

「チャンクアップ(Chunk-up)」という言葉

「チャンクアップ」という表現があります。さらに大きな塊(かたまり)にすることを指し、「抽象度を上げる」という意味で使います。

つまり、何かの具体的な事象を取り上げて、チャンクアップを繰り返すことで、大きな塊として、最上位の「目的」に辿りつくということになり、「構造的な思考・ロジカルシンキング」の中では使われています。

ここでは、その思考法の説明をしたいわけではありません。「チャンクアップ」の「チャンク」の本来の意味は、「ガッチリした不動の大きな塊」ということをお伝えしたいのです。

それぞれの経営者にとって「経営における“ガッチリした不動の大きな塊”」が何か?がブレないようになっているかどうか?

「知らぬ間の罠」に陥らないように、常に自覚的である必要があるような気がします。

今後も、よろしくお願いいたします。

次回は4月20日(水)更新予定です。

★更新情報は「ERPナビ(大塚商会)Facebookページ」にて!

このコラム読者におすすめの製品

この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピュータ営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績に繋がる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

社員がイキイキ働く企業風土・自律的従業員育成のあり方を考える バックナンバー

ページID:00110883