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第29回 ファン・セオリー
皆さん、こんにちは!
ここのところ、一気に暖かくなり、桜の季節も過ぎ去り、初々しい新入社員の姿も多く見られます。
皆さんの会社にも新入社員が入ってきていますでしょうか。若い人が入ってくるとそれだけで雰囲気が明るくなったり、何となく華やいだ気持ちになったりするものです。
毎年、日本生産性本部が発表している恒例『新入社員の特徴』によると、今年の新入社員は「頭の回転は速いものの、困難な壁はぶつかる前に未然に回避する傾向がある」とし、『自動ブレーキ装置』タイプと命名されたそうです。
そのこころは「知識豊富で敏感。就職活動も手堅く進め、そこそこの内定を得ると、壁にぶつかる前に活動を終了。
何事も安全運転の傾向がある」としています。
若者特有の「失敗を恐れずに"あたってくだけろ"の精神」でパワー全開、突っ走って欲しいとの声もあるかと思いますし、やや物足りない印象もあるようですが、そうは言っても、若い人のエネルギーは魅力的で、組織を活性化するには良いキッカケであることは間違いないと思います。
という事で、今回は、新入社員を含めて組織を自律的な集団にし、活性化していくための大きな括りを改めて考えてみたいと思います。
■そもそも「働きがい・モチベーション」とは?
これまでの、このコラムの中でも「どうすれば自律的従業員を育てられるのか?」というテーマに沿って、色々な視点でコメントをさせていただいてきましたが、一言で言うと「一人ひとりの社員が"仕事"を通じて、どうなっていきたいか?!・何を得たいと考えているのか?!・何を楽しいと感じるのか?!」ということに尽きると思います。
このコトを硬い表現で言うと「内発的動機づけ」と言ったり「モチベーション3.0」と表現したりしています。
「内発的動機づけ」の対比として「外発的動機付け」がありますが、その典型が成果主義になります。
これは「モチベーション2.0」に該当します。
つまり、時代の変化・進化に伴い、人のモチベーションも「3.0 内発的動機づけ」に変化してきているということを認識しておく必要があるのではないか…ということが出来るのではないでしょうか。
従来のように、企業の持続的成長が確実でない時代を迎え、報酬や役職で報いるというのが十分に対応できないだけでなく、若い世代は「お金」「出世」では動機付けしにくくなっているという点もあげられます。
内発的動機付けを支えるのは、
「自己決定感(自分のことは自分で決めている」)」
「有能感(自分は、頑張ればできる)」
「他者受容感(自分は大切な人から受容されている)」
という三つの要素だと言われますが、それを支える組織・経営者側の「自分以外の人に対する人間観」に基づくアウトプットとしての「考え方・取り組み」が大きな影響を与えるわけですから、有効なアプローチを考えてみたいと思います。
■人はどうすれば、動くのか?
「ファン・セオリー」という言葉をご存じでしょうか?
自動車メーカーである「フォルクスワーゲン社」が提示しているコンセプトですが、「人を一番揺り動かすものとは何だろう。涙か怒りか、それとも笑い…?」ということを考えて突き詰めていった結果「"楽しさ"が人々の行動をより良く変える一番簡単な方法」という点に行き着き、色々な実証実験を紹介しています。
【フォルクスワーゲン】ファンセオリー・ドットコム
世界をより良く変える、フォルクスワーゲンの「ファン・セオリー」(White-screen.jp Webサイト)
「階段を使おう!」と言うのではなく、「階段を使うと楽しくなるようにするには…?」
「ゴミを拾って下さい!」と言うのではなく「ゴミを拾うことに興味を持ってもらうには…?
人は「楽しい・面白い」と感じると「個人だけではなく集団の行動さえも変わる」ということが明らかだと思います。
■仕事は楽しい・面白い?
昨年の日本能率協会の調査では、「上司から会社のためにはなるが、自分の良心に反する手段で仕事を進 めるように指示された時、"指示に従わない"とする回答が、前年同時期からの変化幅6.9ポイントが上がり16.4%にもなる現代の若者です。
そんな価値観を持っている彼ら彼女らでさえも、「楽しい・面白いと感じれば行動が変わる」という点は普遍なのではないでしょうか。
「仕事は楽しい・面白い」ということを感じてもらうために、私たち経営者や組織のリーダーは何をすればイイのでしょうか?
改めて、この機会に考えてみてはいかがでしょうか。
引き続き、よろしくお願いいたします。
次回は4月16日(水)の更新予定です。
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