第160回 「自己肯定感」の育み方

ここ数年、毎年のように若い人たちの早々の離職問題が話題になっています。社会に出ると誰かからの評価を切り離すことはできませんが、最近は特に自分に向けられた視線をネガティブに捉えられるケースが多いように思います。ということで、今回は「自己肯定感の育み方」を考えてみたいと思います。

「自己肯定感」の育み方

皆さん、こんにちは。

ゴールデンウィークも明け、一気に夏めいた季節になだれ込んできた感じですね。春らしい季節を彩っていた新入生や新入社員も、良くも悪くも慣れてきて、アッという間に街の景色に溶け込んでしまったように思います。

そんな中で、ここ数年、毎年のように言われる退職代行サービスの利用も含めた若い人たちの早々の離職問題が今年も何かと話題になっています。
売り手市場でもあり、キャリアアップを含めた人材の流動性が高まっている流れ自体は、現代社会において求められていることだと理解していますが、「それにしても……」と感じざるを得ない退職理由も散見されるのも事実だと思います。

中でも困るのは「褒めてもらえない・注意/指摘を含めて評価されない」といった自分の外側の誰かのせいを理由にしてしまうケースではないでしょうか。
社会に出ると誰かからの評価を切り離すことはできませんが、「自己肯定感」が確立されていれば、一喜一憂するものではないと思います。しかし、最近は特に顕著に自分に向けられた視線をネガティブに捉えられるケースが多いように思います。

ということで、今回は「自己肯定感の育み方」を考えてみたいと思います。

「自己肯定感」とは何か?

「自己肯定感」という表現は1994年に臨床心理学者・高垣忠一郎氏が提唱したといわれ、当時は「“他人と共にありながら、自分は自分であって大丈夫だ”という他者に対する信頼と自分に対する信頼」と定義されたようです。

その後、多くの方がいろいろな表現をしておられるようですが、平たく言うと「自らの価値や存在意義を肯定できる感覚・感情」といったところでしょうか。

同時に「自己肯定感は子供の時期・成長期の体験によって左右される傾向が強い」ということで、子育てにおける親や先生といった周囲の人との関わり方の問題として重要視されていることも多くあります。

そして、しばしば「“成功体験”の重要さ」が指摘され、関与する人が褒めたり、認めたりすることが重要だとされています。ただ、個人的にこの認識には大きな誤解があるように感じています。

それは「うまくいった・うまくできた」という“結果”に対する認識を指しているケースが多いという点です。

自己肯定感は“結果”によって育まれるのか?

本当に「自己肯定感」は“良い結果”という成功体験によって、育まれるのでしょうか……

そもそも“良い結果”とは、何をもって評価・判断をするのでしょうか?
テストで100点満点を取ったという結果は悪くないと思いますが、試験を受けた人全員が100点だったとすると、その評価はどうなるのでしょう。スポーツなど誰かと対戦した結果、「勝つ・優勝する」という“成功体験・良い結果”が自己肯定感を育むのでしょうか?

「勝者がいる」ということは、必ず「敗者がいる」ということになります。「勝つ」という結果が自己肯定感をもたらすのであれば、「負けた側」には自己肯定感はもたらされないのでしょうか。
また「勝つ」という結果・成功体験が自己肯定感につながるのであれば、「勝ち続ける必要」があるともいえ、現実的にはそんなことはありえません。

「自己肯定感を育む」とは

上述した結果・成功体験に関する例を別の角度で考えると、「自分の外側の誰かによる評価」に対するものではないことがご理解いただけるのではないでしょうか。つまり「自己肯定感」とは、何らかの結果に基づくものではなく、あくまでも「自分の心の内側の問題」であるということであり、自分の外側の環境や第三者が関与するものではないということです。

つまり、目に見える結果・行動・出来事・事実といったことを認識する「認知脳」ではなく、目に見えない感情や思考・考え方・心の在り方・モノの捉え方といった「非認知脳」による解釈が「自己肯定感」につながってくるということになるのではないでしょうか。

さらに別の角度で「自己肯定感」を考えてみます。自己肯定感の反対、つまり対義的な感覚・感情を表すものはどのようなものが挙げられるでしょうか。最初に頭に浮かぶのは「自己否定感」かもしれません。ただ、これでは「肯定」の対義語である「否定」に置き換えただけですので、ちょっとピンと来ませんね。

他には何が挙げられるでしょうか……。あくまでも個人的な見解ではありますが、「無力感・劣等感・孤独感・無価値観・自己不信・自己嫌悪……」といったところでしょうか。

自己肯定感の第一人者であり、心理カウンセラーの中島輝氏の著書『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる自己肯定感の教科書』によると「自己肯定感を構成する“六つの感”」として

  • 自尊感情
  • 自己受容感
  • 自己効力感
  • 自己信頼感
  • 自己決定感
  • 自己有用感

が挙げられています。

『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる自己肯定感の教科書』(SBクリエイティブ)

本人の内面に対する問いかけ

こうして考えていくと、やはり「結果に対する何かとの比較」による感覚ではなく、プロセスに関する自分自身の捉え方の問題が大きいように思えてきます。

だとすると、「何があった?(事実)」「どうだった?(結果)」という外部の事実に対する問いかけではなく、「どう感じた?(感情)」「で、どう思う?(思考)」「で、どうする?(行動変容)」という本人への内面への問いかけが重要になってくるのではないでしょうか。

結局、本人の未来・将来に向けたポジティブな夢や希望をどう構想してもらうのか? ということが自己肯定感を育むことになるということになり、「自分が発する言葉が思考をつくる」わけですから、「前向きな表現を口癖にさせる」ことの習慣化が大切になるのかもしれません。

そして、そういう言葉を出せるような問いかけを親・上司・周囲がどれだけ実践しているのか……の結果が、今の私たち自身の周囲にいる「自己肯定感のある子供・社員の多さ・少なさ」なのかもしれません。

引き続き、よろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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