第159回 これからの「人財育成」の要諦

新年度4月に入りました。新人を迎え入れる管理職の方々にとっては、本当に「これからの人材育成」は一筋縄ではいかず、深く悩ましいテーマなのではないでしょうか……。今回は、このタイミングにあらためて「これからの人材育成のあり方」を考えてみたいと思います。

これからの「人財育成」の要諦

皆さん、こんにちは。

新年度4月に入りました。今年の桜は長持ちしたようで、卒業式・入社式、さらには入学式にまで跨(またが)って、それぞれの立場の人々の門出に彩りを添えてくれた印象があります。
それに比して、ミャンマーの地震による中国企業絡みのビル倒壊、想定を超えたトランプ・相互関税の影響、フジテレビの第三者委員会の見解と、避けられない自然災害とは別の「人間が絡むイヤ~な感じ」に辟易(へきえき)させられる話題が多かったように感じてもいます。

いろいろな意味で、過去のツケや膿(うみ)が吹き出しているような感覚になってしまい、胸に夢を抱いているであろう若い人たちを、私たち大人の側が準備できているのだろうか……と思わざるを得ません。
何が善なのか悪なのか、それとも善も悪もないのか、それすらも分からなくなっており、さらには、何が真(まこと)で、何が偽なのかを常に疑ってみないとならない時代になっていることを痛感します。

私たちは、つい分かりやすく、右と左とか、善悪、正否、真偽といった二元論で考えてしまいますが、これからの時代は、これらを統合、俯瞰(ふかん)した世界観が求められていくのではないかと感じています。

SNSで自分の関心のある領域や意見にばかり埋もれ、偏った主義・主張に拘泥するような硬直的な思考に陥りがちなご時世だからこそ、「視野を広げ、視座を高める」ことを通じて俯瞰的に見ることは、相当に意識をしておかないとできないようになっています。

そういう意味で、新人を迎え入れる管理職の方々にとっては、本当に「これからの人材育成」は一筋縄ではいかず、深く悩ましいテーマなのではないでしょうか……。ということで今回は、新年度の始まるこのタイミングにあらためて「これからの人材育成のあり方」を考えてみたいと思います。

花巻東高校野球部・佐々木洋監督の視点

最初に、日本経済新聞「直言×人財立国への道」で取り上げられていた花巻東高校野球部監督・佐々木洋氏のインタビュー記事「甲子園がゴールじゃない」をご紹介させていただきます。

大谷翔平や菊池雄星を育て、息子の佐々木麟太郎クンはスタンフォード大に進学し……とマンダラチャートで思考力を鍛える取り組みは有名で、佐々木監督自身の今の考えに行き着いた背景や、その「視点」から見た時の「景色」である「これからの教育のあり方」に対する見解は、非常に示唆に富んだ興味深い内容になっています。
個人的には全文をジックリ読み解いてもらいたい想いがありますが、インタビュー動画も公開されているようですので、併せてご紹介させていただきます。

幾つかのキーフレーズを抜粋させていただきます。

  • 他人のせいにする思考を捨てる人が増えれば、この国は大きく変わるのではないか。
  • 非常識と思っている方が非常識だ。
  • 私の仕事は野球部員を勝たせて甲子園に連れて行くことではなく、その後の60年以上を勝たせることだ。
  • 「自主性」という言葉があるが、一歩間違えるとただの放任になってしまう。子どもたちが自主性と主体性を持つためには、目標設定の仕方をしっかりと教えることが重要だ。
  • 人材育成方法は野球から学んだことより経営から学んだことの方が多い。
  • ベンジャミン・メイズの「人生の悲劇は目標を達成しないことではなく、目標を持たないことである」。

「甲子園がゴールじゃない 大谷育てた花巻東・佐々木監督」(日本経済新聞)

インタビュー動画「甲子園がゴールじゃない 大谷育てた花巻東・佐々木監督(直言×人材立国への道 国富を考える)」(日本経済新聞)

「大人が子供の可能性を奪っているのかもしれない」というフレーズがあります。この表現はそのまま、「上司が部下の可能性を……」「先輩が新人の可能性を……」と置き換えて読み解くことと通底しているのかもしれないと認識したうえで、自分の思考や言動を戒めておいたておいた方が良いのかもしれません。

実現するための新たなリーダーシップのあり方

上記、佐々木監督の見解は非常に示唆的であると同時に、私たちに危機感を募らせる問題提起でもあるのかもしれません。

サッカー日本代表・元監督で、現在今治FCの運営母体「今治.夢スポーツ」オーナーの岡田武史氏は「良いリーダーがいない組織がダメなのではなく、良いリーダーを求める人ばかりの組織がダメなのではないか」と指摘しています。そういう意味では、誰かカリスマ的なリーダーが求められている訳ではなく、その組織に関わる全ての人に「当事者性を持って、自分にできることは何か?」を考えさせることが重要になってくるということになります。
では、そんな思考性を育むためのリーダーのあり方とはどういうものなのでしょうか……。

その代表格として挙げられるのが「オーセンティックリーダーシップ」と呼ばれるものではないでしょうか。「オーセンティック」とは「あるがまま」という意味合いで、リーダーポジションの方が「取り繕うことなく、自分自身をさらけ出す」ことが求められます。
従来のリーダーは多くの場合「リーダーを演じる」側面が少なからずあったと思われますが、オーセンティックリーダーシップでは、むしろ演じず、自分らしさを前面に出すことが求められます。

自分をさらけ出すというのは、自分自身の透明性を上げるということであり、反面教師として、“最近の某テレビ局の騒動や危機は、その不透明性が問題の本質にある”からも明白に理解できるのではないでしょうか。

個人的には「Influence Without Authority/権威なき影響力」という表現が好きなのですが、そもそも「権威」とは何なのでしょうか……。優越的な立場であるが故という点も含め「相手に分からないことを知っている」、つまり「隠す」ことを持っていることで「権威」は保たれてきたのかもしれません。
ところがSNSの発展は「今まで隠せていた」ことを「隠せなくしてしまった」側面があります。そういうことも含めて、従来のリーダーのあり方は、完全に崩壊してしまっているのではないでしょうか。

ということで今後は「徹底的に透明性を持って」、つまり「隠さず、自分を偽らず、さらけ出していくオーセンティックリーダーシップ」が信頼を得ていくということになるのではないでしょうか。

引き続き、よろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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