第4回 進化する働きがいに呼応する、企業組織の在り方

皆さん、こんにちは!
先日、昨年の3.11東日本大震災から1年を迎えました。まだまだ復興には時間が掛かると思いますが、いつまでも忘れずに「自分には、何ができるのか?」としっかり向き合っていきたいとあらためて感じた次第です。

前回も「震災後の意識調査」の結果を含め、ご紹介をさせていただきましたが、この1年で、社会起業家とかソーシャルビジネスという言葉が一般化しつつあるように、明らかに働く人の「働きがい」に対する意識に変化が見られると思います。

こうした事実は、3月12日付・日本経済新聞に掲載されていた『「社会企業」学ぶ若手増加』といった記事をはじめ、多くの雑誌やコラムにも取り上げられています。

偶然ですが、ダイヤモンド社が発行する「ハーバード・ビジネスレビュー 4月号」は「絆の経営 現場を結束させる力」というタイトルで特集を組んでいます。

この特集では「絆」を「エンゲージメント」と訳していますが、いわゆる「婚約関係」の方がイメージしやすいかもしれません。「会社(組織)と従業員」がお互いに求めている状態、お互いが求めあっている相思相愛の状態です。

この関係を築くにあたって、前回ご紹介させていただいたモチベーション2.0(「成果主義」による「契約関係」)では、難しいことは容易に想像できるのではないかと思います。そして、同時に、モチベーション3.0の概念である「組織と個人が、理念に共感した自律を促す対等・イーブンな婚約関係」と合致することに、お気づき頂けるのではないでしょうか。

では、「より人の役に立つ仕事をしたい」や「自分が働く意味・意義を感じていたい」と思うようになった「従業員の変化・進化する働きがい」に対して、一体、企業・組織を預かるリーダーはどうしていけば良いのでしょうか?。今回は、この視点に基づいて考えてみたいと思います。

【事業を通じた社会貢献】
近江商人の「三方良し(売り手良し・買い手良し・世間良し)」や「企業は社会の公器」という松下幸之助の言葉に代表されるように、「企業活動は社会との関係性の中で行っていくもの」という感覚は、実は私たち日本人にとっては、昔から持っている「働く」ということに対する「無意識の意識」に刷り込まれているのも知れません。

だからと言って、多くの会社において、日々の仕事・業務に対して「世のため、国のため」「社会に貢献する」といった大袈裟な、あるいは高邁(こうまい)なコトを従業員が意識しているとも限りませんし、逆に「社会に貢献している高邁な仕事だから、利益を伴わなくとも良い」という話にも勿論なりません。

勿論、企業は、事業を通じてお客様に価値を提供し、従業員には成果を生み出してもらわないとなりません。逆に従業員自身は、成果を生み出すことに対して妥協が許されるものではありません。

そんな二律背反、あるいは一見すると矛盾することを包含することはできるのでしょうか・・・。

私は、自分も含めて多くの人々は「世界平和・貧困支援・環境保護」といった、大上段の社会貢献に直接的に貢献できるとは思っていないのではないか、と感じています。それよりも、そんな高邁な目標でなくても構わないので、自分のできる範囲で「社会において意味のあるコト・意義を感じられるコト」に関わっていきたいと思っている(無意識の意識を含めて・・・)のではないでしょうか。

だとすると、今の会社がやっている仕事に対して、社会から見た時の「意義・意味付け」すなわち「社会的価値」を、いかに明確にしていくことか、が重要になってくるのではないでしょうか。

「そんなコトは毎日言っている」といったお叱りが聞こえてきそうですが、「伝えている」かもしれませんが、本当に従業員に「伝わっている」あるいは、従業員は「強く共感している」のでしょうか・・・。また、そもそも、従業員は、自分たちの仕事を「社会」の側から見ているのでしょうか。

例えば、従業員の多くが「スポンジの製造・加工・卸販売」と言っていた会社が、「社会に潜む危険や不安を緩和する価値を生み出す会社」と再定義した際に、自分たちの仕事の意義や意味を見いだし、モチベーションが高まった例があります。いわゆる「石切り職人」の話に近いものがあるかも知れません。

別の言い方をすると「役に立っている実感」かもしれません。

【従業員が働きがい・やり甲斐を感じる組織作りへの転換】
ヒョットすると、私たちは時代の流れの中で、知らず知らずのうちに「企業側の論理」でモノゴトを見る習慣がついてしまっているのかも知れません。

ただ、これからの時代は、それだけでは立ち行かなくなる可能性も出てくるような気がしてなりません。

なぜなら、私たちの会社にいる従業員の姿・形・顔ぶれは1年前の震災以前と、大きく変わっているわけではないかもしれませんが、その一人一人の内面にある「無意識の意識(本人自身ですら気が付いていない部分において)」が大きく変化を起こしている可能性を感じているからです。

例えば、本人は「仕事と週末の少年野球のコーチ(自治会の役員や地域清掃でも同じだと思いますが)」は別のモノとして捉えていたとしても、実は「少年野球のコーチ」は近隣との関係性・絆を感じる貴重な機会となり、そのことを通じた社会的意義や意味がご自身のモチベーションを高めているとしたら、仕事において、その視点の不足が目に付けば、何らかの矛盾を感じ、共感や納得感を阻害してしまう可能性が考えられるのではないでしょうか。

だとすると、これからのキーワードの一つとして「企業(組織)のための従業員(人材)育成」から「従業員が仕事の意義・意味や自身の成長を感じる組織作り」に転換していくことが必要になってくるのかもしれません。

これは、一見どう変わったのかピンとこない方もおられるかも知れませんが、個人的にはコペルニクス的大転換でありパラダイムシフトだと感じています。なぜなら、立ち位置が逆転し、主役が「企業にとって」ではなく「従業員にとって」になっているからです。

「労働者人口減少」が確実な日本において、その働き手の方が、自身が働く会社を「社会的な意義や意味があるのか?」という視点で選ぶ時代がもう目の前まで来ているのかもしれません。少なくとも、現在就職活動中の私の息子は、そんな視点で会社を選んでいるような気がしてなりません。

このコラムの命題「社員がイキイキ働く企業風土・自律的従業員育成のあり方を考える」という視点に立った場合、今一度、ご自身の会社における「従業員が納得・共感する社会的意義・意味」「製品・サービスを通じて提供している社会的価値」を振り返っていただく機会を持ってみてはいかがでしょうか。

これは「経営品質向上プログラムの視点」の四つの基本理念「顧客本位・独自能力・従業員重視・社会との調和」の「従業員重視」に「社会との調和」が鮮明に関わってきていると理解することができ、今、日本社会、日本企業はまさに次のステージに上がる大きな一歩を踏み出すチャンスを目の前に迎えているのではないか、と感じています。

次回は、こうした大きな進化・転換期を前にして、なかなか一歩を踏み出せない企業(組織)風土のジレンマをどう乗り越えるのか?という視点で考えていきたいと思いますので、引き続き、よろしくお願いいたします。

【付録】
去る2月23・24日に「2011年度 日本経営品質賞 受賞報告会」が開催されました。受賞企業の考え方にご興味のある方は、下記URLをご参照ください。

日本経営品質賞 Webサイト

次回は4月後半の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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