第3回 これからの時代における働きがい

皆さん、こんにちは!
早いもので、2012年ももう2月半ばを迎えてしまいました。1月末~2月初めの猛烈な寒波・大雪に見舞われましたが、皆さんはお元気でいらっしゃいますでしょうか。

前回は「働きやすさ&働きがい」の違いを考え、それぞれ私たち自身の「働きがい」を再度掘り下げて考えてみては・・・という問いかけをさせていただきました。

今回は、その「働きがい」というモノは、そもそも、時代を超えて普遍的に変わらないものなのかどうか?という視点で考えてみたいと思います。

【就職人気ランキング】
私の次男は大学3回生で、まさに就職戦線真っ只中に身を置いています。毎年、彼ら就活生を調査した人気企業ランキングが発表されるわけですが、その上位に顔を並べる企業の選考理由は、「知名度・規模・収入・福利厚生・・・」といった「働きやすさ」に該当する項目が並びます。

ところが、ご存じのとおり、若者の3年以内離職率は「7・5・3」と言われるように新卒大学生の3割が退職している現実があります。では、その3年間で、上記のような選考理由に挙げていた項目が劇的に変わってしまったのでしょうか?

勿論、そういうわけではなく、退職の理由は「社内の人間関係やコミュニケーション」「会社の目指す方向性やそれに相関する風土」に対する失望といった項目が挙げられます。

つまり、組織で働き続けられなくなる理由は「働きやすさの“有無”」は必ずしも大きな要因にはならない、との見方ができるのではないでしょうか。

【モチベーション3.0】
2010年7月に出版されたダニエル・ピンク著書「モチベーション3.0」ではモチベーションの進化・変遷を下記のように分類・定義しています。

  1. モチベーション1.0:食べたい、生きたいといった生物的/サバイバル的な基本的欲求
  2. モチベーション2.0:外発的な動機づけの代表である報酬や罰金といったアメとムチ・与えられた動機づけ
  3. モチベーション3.0:「ワクワク感」「楽しい」「世界や社会をよくしたい」といった内面から湧き出るような自発的な動機づけ

これを組織との関係になぞらえると1.1.0は、戦後の「生きるために、安定した生活ができるように」という時代背景に起因するモノであり、組織/会社との関係は「滅私奉公・終身雇用に代表される親子関係」だったと言えます。次に2.2.0は、1990年代を境に台頭してきたモノで、「成果主義・契約関係に基づく主従関係」だと言えます。そして、3.3.0は、まさにたった今、急激な勢いで顕著に表出化しているモノであり「理念に共感した自律を促す対等な婚約関係」と言えるのではないでしょうか。

この「理念に共感した自律を促す対等な婚約関係」の従来との最大の違いは、組織と個人の関係において「主従関係」から「対等・イーブンな関係」への移行という点ではないでしょうか。

こうした変化の代表的な表れとして、アメリカでの就職人気ランキングにおいて、2011年大きな変化があったことをご存じでしょうか。今をときめくGoogleやAppleを抑えてトップを射止めたのは、何と大学卒業から2年間、国内各地の教育困難地域にある学校に常勤講師として赴任させるプログラムを実施している「ティーチ・フォー・アメリカ」というNPO団体です。

これは、まさにモチベーション3.0への進化が現れた事象の一つと言えるのではないかと思います。そして、これはアメリカでの出来事として、私たちとは関係のないこととして考えて良いものでしょうか・・・。

【“ワクワク”が変わっている?!】
「ワクワクした会社にしたい」という経営者に良くお目に掛かります。勿論、色々な経営者がおられますが、多くの経営者は、当然ながら「社員にやりがいを感じてもらいたい」「つらい思いはさせたくない」とお考えです。

でも、ヒョットしたら、そもそも、その「ワクワクの基準」が、既に経営者と社員の間に違いが生まれてしまっているケースはないのでしょうか・・・。

実際に、日本においても、東日本大震災後のボランティア活動の広がりや継続の仕方は、かつてのそれとは異なる次元にあると言われています。

また、震災後、各調査機関によって「働く価値観の変化」に関する意識変化の調査が実施されていますが、「より人の役に立つ仕事がしたいと考えるようになった」という数字は、どの調査を見ても半数を超えるような結果になっており、明らかな変化の表れだと思われます。

経営者側からすれば、決して悪気もなければ、むしろ「良かれ」と思って行っているコトに対して、仮に、自分とは異なる価値観を基準にした社員がいるとすると、「良かれ」と見られずに、ややもすればマイナスに受け取られてしまうという結果に、悶々とし、忸怩(じくじ)たる思いになってしまうケースはないでしょうか・・・。

少なくとも、このコラムのタイトルである「社員がイキイキ働く企業風土・自律的従業員育成の在り方を考える」に当たっては、
経営者自身の「ワクワクする基準」、すなわち、自分の価値観が全てではないだけではなく、その「ワクワクする基準」が確実に変化・進化していく性格のモノであるという認識の上に立って、「従業員が何を以って“働きがい”を感じるのか?」を考える必要があるようですね。

次回は3月21日(水)に更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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