第5回 「自社の独自性」を従業員も一緒に紡ぎだす組織へ

皆さん、こんにちは!
桜の見ごろもピークを越え、春らしい気候となり、新入社員や新入生の明るい笑顔が街を彩る季節となりました。

前回は「社会に役立つ実感を求めている従業員が、共感する会社(組織・仕事)作り」という新たな潮流に関して、コメントをさせていただきました。

この件に近い内容として、日経エコロジー4月号に「儲かるCSR」という特集が掲載されていました。個人的には「儲かるCSR」という表現には違和感を持つのですが、内容的には非常に興味深く、私の前回の視点に近い内容だったように思います。

その記事には、下記のように書かれていました。

・マーケティング1.0→ ・・・ →マーケティング3.0(精神志向)フィリップ・コトラー
・モチベーション1.0→ ・・・ →モチベーション3.0(内発的動機) ダニエル・ピンク
・CSR1.0→ ・・・ →CSR3.0(本業とCSRの統合)

と、それぞれ異なった分野の概念が、ここへ来てそれぞれ「3.0フェーズ」を迎え、すべて極めて密接に関連してきている、との見方です。

前回までに、このコラムで書かせていただいてきた内容と、かなり重複する部分が多いように感じました。

やはり、こうした大きなトレンドが、静かに、でも確実に進んでいるのではないかと、あらためて思わされました。

そこで、今回はこうした当たり前とも言える「“社会に役立つ仕事”を実感できる会社(組織)作り」になぜドライブが掛からないのか?あるいは推進するには何が必要なのか?の視点で考えてみたいと思います。

【会社の“存在価値”】
現在、会社が世の中に存続しているということは、基本的には「社会に必要とされているから」という点は、紛れもない事実だと思います。では、なぜいまさら、「社会に役立つ仕事」等というような表現が出てくるのでしょうか。

以前、ある小さな土木工事会社さんの面白い話を聞かせてもらったことがあります。
それは、その会社の社長さんが、営業活動として色々な役所回りをしていた時の話です。

ある調達担当者に「●●さん、アンタの会社が無くなったら誰が困る?」と聞かれたそうです。「私の会社が無くなったら困るのは誰か?」この問いに、その社長は向き合って考えたところ、「私の会社がやっていることは、金額の高い安いや、多少の程度の差はあるかも知れないが、基本的にはどこの同業者でもできるよな・・・。
と言うことは、私の会社が無くなっても競合している同業者が喜ぶだけで、困る人は、実はいないのではないだろうか・・・」「エッ?それって、私の会社には存在価値がないってことか??そりゃ、アカンッ!」と思ったそうです。

そこから、その社長は「世の中に存在価値・意義のある会社にするには、どうすればイイのか?」の試行錯誤が始まったそうです。まさに寝食を忘れて考え、あまりに社長室にこもって出てこないので、奥さんが心配をしたという程の没頭ぶりだったそうです。

そこで辿りついたのが「同業他社ができない、もしくはやってもトラブルになるような仕事をできる会社にする」という結論です。
そして、この会社は、現在30にも及ぶ土木工法の特許を取得し、全国からの仕事を指名買いで請け負っておられます。

【私の会社ならでは!の独自性】
この例は、一体何を意味しているのでしょうか。

特定の業種・業界において、その仕事や業務の存在価値(理由)や社会的意義というものは、当然あるわけですが、「自分の会社自身の存在価値」となると、同業他社と同じレベルの解釈・意味づけだけでは、明確にできないということでしょうか。

となると、「一般的な表現」でもなく「業界的な表現」でもなく、やはり「私の会社ならでは!」と言われるような「独自的な表現・独自性のある内容」に落とし込む必要があるのかも知れません。

勿論、そんな簡単な話ではないと思いますが、その「独自性の有無」が、企業としての成長の原動力なるような気がします。例えば、アップル、アマゾンといったグローバル企業に始まり、日本理化学工業・東海バネ工業といったドメスティックな中小企業まで含めて、業種・業界を問わず、普遍性の高いのではないでしょうか。

その「独自性」を生み出すことの難しさと同時に、社員の方々がそれに共感・納得感を持つかどうか?という点が、もう一つのハードルであるような気がします。

【自社の独自性に対する共感・納得】
ここで、前回書かせていただいた『立ち位置が逆転し、主役が「企業にとって」ではなく「従業員にとって」になっている』ということを思い出して頂けますでしょうか。

前述の例のように「社長さんがお一人で必死に考え生み出していく」事もあると思いますが、残念ながらこの場合、従業員の皆さんの考えや想いが反映するプロセスがありません。

結果的に「トップが決めたことを、部下に伝え(落とし)、それを業務としてやり遂げる」というプロセスそのものは変わっていないということになります。

つまり、このコラムでお伝えしている「価値観が変化している従業員」にとっては、何も変わっていないように映ってしまうということを意味しています。

「価値観が変化している従業員」の共感や納得感を高めるためには、当事者意識を持って取り組んでもらえるように巻き込む(エンロール)必要があるのではないでしょうか。そして、その「プロセスの進化・革新」こそが「主役が従業員になる」ということのような気がします。

これは、決して絵空事の夢物語ではなく、有名なところでは「日産/カルロス・ゴーン氏」のリバイバルプランで実践してきたことであり、中堅・中小企業では、より実現しやすい環境にあるとも言えます。

【人材がいない・・・?】
この類のお話をさせていただくと、「私たちの会社には、そんなことを考えられる人材は少ないので、そういうことができる人材が育ってから・・・」といったことを仰る経営者の方がおられます。

本当にそうなのでしょうか・・・。コラムの命題「社員がイキイキ働く企業風土・自律的従業員育成のあり方を考える」を実現するにあたっては、「今はそうではないかも知れないが、そういう人材を育てるために」、何か思考回路やアクションを今までと変えて考える必要はないでしょうか。

次回は、この自分自身の思考回路や固定概念・思い込みを、どうすれば克服できるのか・・という視点で考えていきたいと思いますので、引き続き、よろしくお願いいたします。

次回は5月16日(水)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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