第6回 従業員を主役にした考え方への転換

皆さん、こんにちは!

前回は「企業としての独自的な存続価値の確立と、それに共感する従業員」という構図をご説明させていただきました。

最後に「私たちの会社には、そんなことを考えられる人材は少ないので、そういうことができる人材が育ってから・・・」という表現をご紹介させていただきましたが、「できない理由は三つしかない」という話を聞いたことがあります。

それは

「1.今のやり方ではできない 2.一人ではできない 3.今はできない」の三つだそうです。つまり、解決方法は「1.やり方を変える 2.誰かと考える(行う) 3.来たる時期の準備をする」

になるとの話だったと思います。

理屈では、あるいは頭では理解できる内容だと思いますが、なかなか現実の経営においてはその実践に踏み切れない、あるいは実現の難しさに忸怩(じくじ)たる思いを抱いておられる経営者の方も多いのではないでしょうか。

今回は、実践の行動に踏み切れないジレンマである「私たち自身の思い込み・固定概念」にいかに縛られているか、そのしがらみとの決別をどうすればできるのか、を考えてみたいと思います。

【人間の思考・行動の99%は思い込み】
「人間は思い込みの動物」だと言います。また、「人は言いたいように言い、聞きたいように聞く」とも言います。残念ながら、私たちは、自分で意識している・していないに関わらず、今日までの生い立ちを含めた経験や前提を踏まえて思考をしています。そして、その経験や前提は、誰ひとり同じ人はおらず、それぞれ異なった思考の前提が構成されています。

そして、性別の違いは勿論、育ってきた環境、時代、友人関係その他あらゆるものが、私たち自身の考え方に影響を及ぼしています。

ですから、同じ電車の吊り広告を見ても、興味の持つ場所や、受け止め方は千差万別です。以前、私はあるものを見て「インベーダーゲームみたい」と言ったことがありますが、周りにいた多くの方がキョトンとしていました。そうです。その時、私の周りにいた人の多くはインベーダーゲームを見たことのない若い世代の人たちだったわけです。

このように、日常の些細な出来事でさえも、それぞれ「思い込み」がコミュニケーションを阻害してしまっています。

また、「経験が全てを凌駕する時代」も、過ぎ去ってしまっています。これから先、5年、10年と言う単位で世の中の動きを言い当てることのできる人はいるのでしょうか。大きな意味でマクロ的な動きは予想できたとしても、「少子高齢化」で少なくとも国内市場のパイが縮小していき、過去の延長線上に成功が見いだせない時代において、私たちにとって何が成功に繋がるのか?を言い当てることは、余程の天才でない限り、至難の業ではないかと思います。

【異なる視点・多様性を受け入れる】
このような時代のことを一般的に「成熟社会」と表現しているようです。そして、第1回でもご紹介させていただいた藤原和博氏(よのなかnet)は、「成熟社会」のことを「みんな一人ひとりの時代」と表現しておられます。

藤原和博のよのなかnet Webサイト

そして「みんな一人ひとり」の視点で考えると、「唯一無二」という意味での「正解」はないという話になります。それぞれの人が、それぞれの思い込み・固定概念に基づいて考えているわけですから、「上手くいきそうか、どうか」はあるにしても、「そのように考える人がいる」という事実は紛れもない事実として受け止めるしかありません。

私たち企業、あるいは組織には、そうした多様な視点を持った人が集まっているという前提に立てば、同じものを見ても異なる考えや意見を持つことは、避けがたい事実として受け入れるしかないのではないでしょうか。

いわゆる、グローバル企業ともなれば、それがさらに、国籍が違う、言語が違う、宗教が違う、習慣が違うということになり、見た目も含めて、異なる人たちをいかに融合させていくのか?という視点がごく当たり前に考えられ、「ダイバーシティ(多様性)の重要性」として受け入れられているのではないでしょうか。

ところが、国内ドメスティック企業になると、見た目が同じ日本人だからこそ、その重要性に気づきにくいのかも知れません。

そうした「多様性を受け入れる」「他人の考え方・見方を事実として受け入れる」ということは、私たち自身の「思い込み・固定概念」を横に置いて、「自己否定ができる」ということではないでしょうか。

これは、なかなかツライ、難しい作業ですね・・・。
特に、経営者として、あるいは今まで成功してきた方々であればあるほど、成功体験やプライドがあるだけに難しいのかも知れません。

【自らを振り返る】
しかし、「社員がイキイキ働く企業風土・自律的従業員育成のあり方を考える」、あるいは「従業員を主役にした経営」を志向するのであれば、経営者(もしくはリーダー)としては、このポイントから目を背けるわけにはいかないのではないでしょうか。
経営者(もしくはリーダー)が、社内にいるメンバーの能力を見下したり、疑ったりするのではなく、仲間としての彼らの視点・考えを真摯に受け止める姿勢が、彼らの心に響くのかも知れません。

日経トップリーダーで「調査・社長の実像」という連載が始まっています。1回目の4月号では「今、悩んでいること」と題して中小企業経営者からのアンケート結果が掲載されています。

「売上の伸び悩み・利益の低迷・毎月の資金繰り」といった悩みが上位を占めているのは、今の世相を端的に表している結果のようですが、それに続くのは「社員の能力不足・モチベーションの低さ・採用問題・幹部の育成」といった社員の資質に対する不満が続きます。

また、「悩みを相談できる相手がいない」と回答された方が42.5%にも上るのは、「経営者の責任」と言う言葉を抱え込み過ぎた結果かも知れませんが、実は「宝の山は足下にある」のではないでしょうか。

本当に、社員の能力やモチベーションは低いのでしょうか?そうさせてしまっている理由が、私たちの方には全くないのでしょうか・・・。一度、従業員の方々に「ご自身の悩み・弱み・困っていること」を相談してみると、意外な展開が待っているかも知れませんね。

何れにしても「1.やり方を変える 2.誰かと考える(行う) 3.来たる時期の準備をする」のどれかに着手してみることを考えても良いのではないでしょうか。「何をするにしても、成功は保証されていないが、成長は保証されている」という言葉もあるようですので・・・。

次回は、そうした取り組みを実践しておられる経営者の事例を基に、何がどう変わっていったのか?をご紹介させていただきたいと思います。引き続き、よろしくお願いいたします。(6月20日(水)更新予定)

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピュータ営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績に繋がる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

社員がイキイキ働く企業風土・自律的従業員育成のあり方を考える バックナンバー

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