第7回 イキイキした組織を作る経営者とは・・・

皆さん、こんにちは!
前回は「私たち自身の固定概念・思い込み」に関して触れさせていただきました。

「頭では分かっているけど、なかなか簡単にはいかないのよ・・・」という反応が聞こえてきそうですが、今回は、そんな思いを抱かれている方々に、私なりに感じている「経営者自身にとってのティッピングポイント※」となるキーファクターを幾つかの事例と共にご紹介させていただきます。
※ティッピングポイント:きっかけとなる出来事/変化・閾値(しきいち)等

ところで、私が取り上げさせていただいているテーマに近しい内容が、同じERPNAVIの中で「藤田勝利氏」が「創造するマネジメント ~ドラッカーから学んだ実践経営学~」で取り上げられていましたので、ご参考までにURLをご紹介させていただいておきます。

第7回 「指示統制型」マネジメントの限界とは?/藤田 勝利 氏著

■共通項はあるのか?

  • 星野リゾート/星野佳路氏
  • ネッツトヨタ南国/横田英毅氏
  • 東海バネ工業/渡辺良機氏
  • 日本理化学工業/大山泰弘氏・・・

いずれも、このシリーズのテーマである「イキイキ働く企業風土」を実現しておられることで有名な代表的な企業になりますが、私は、この経営者の方々における共通項があると感じていますが、お分かりでしょうか?

私は「顧客よりも従業員が大切」ということに対する揺るぎない確信・信念のような部分に共通項があるような気がします。

「顧客に喜んでいただき、業績として一定以上の結果が伴わなければ、従業員満足なんか追求できない」あるいは、反対に「従業員が高いモチベーションでなければ、顧客に喜んでもらった結果なんか実現できない」という「鶏が先か、卵が先か?」的な議論がしばしば聞かれるケースがあります。

つまり「CS(顧客満足)が先か?」あるいは「ES(従業員満足)が先か?」という議論のことを指しますが、勿論、「All or Nothing」で語れるものでもありませんし、2元論的な議論をする類ではないと思います。

ただ、ここで示した経営者の方々が、それぞれの葛藤を通じて、「顧客よりも従業員が大切」という考え方に至っていることは間違いない事実だと思われます。

  • 星野リゾート/星野佳路氏:再建を担った父親から引き継いだ旅館の経営において、従業員の離職が相次ぎ、予約があっても対応できない状況となってしまい「従業員にいてもらうことが、経営の最重要課題になった」と感じた
  • ネッツトヨタ南国/横田英毅氏:不人気業種としてのカーディーラーで働く社員に対する調査で「働きがい・やり甲斐」を「お客さんに“有り難う”と言ってもらえた時・感謝された時」ということが明示的になり、「従業員の働きがい」を高めるには「お客さんに喜んでいただくこと」というロジックにたどり着いた
  • 東海バネ工業/渡辺良機氏:お客さんの言いなりになって利益が出ない状況が続く中で「いかに安くするか?」から、「手作りモノづくり」における主役である職人の方を含めた従業員に対して「“誇りある仕事”を提供することが重要」と考え「多品種微量生産」というビジネスモデルに舵を切った
  • 日本理化学工業/大山泰弘氏:地元の養護学校教師から身障者の「働く喜び」を知ってもらいたいという情熱に負けたのがきっかけだったが、その仲間を支えることを通じた従業員の成長・変化を見て、「社会の公器」の企業として、自社の存在理由・従業員の成長というテーマの認識を改めざるを得なかった

■私自身はどう考えているのか?
ここで考えなければいけないのは、「私自身は、顧客と従業員の関係をどう捉えているのか?」という自問自答から始まるのかも知れません。

「企業は、業績を出さないと事業継続出来なくなるので、従業員の働き甲斐ややり甲斐よりも結果を出すことが優先される」と考える方もおられると思います。

逆に「業績を出すことは不可欠だが、その結果を生む原動力は従業員であり、従業員がいなければ成り立たないので、従業員の働き甲斐は、顧客に優先される」とお考えの方もおられると思います。

どちらの思考にせよ、まず、自分自身がどのように考えているのか?を認識した上で、以前にも書かせていただいた「可謬主義」で自分の固定概念や思い込みをいったん横に置きながら、「本当にそうなのか?」と問い直す作業が必要な気がします。

今回ご紹介した経営者の方々は、結果としてこうした問いに否応なく向き合わざるを得ない場面があり、それがティッピングポイントとして、大きなきっかけになったのではないかと思います。

■自分の考えが反映する「鏡としての経営」
つまり、このコラムのテーマを実践・実現されている事例企業の経営者は、何らかの葛藤を経てご自身の考え方として「正解か否か」の次元ではなく「私の会社では、そう考えよう!と決めた」ということではないかと思います。

このコラムをご覧いただいている方は基本的には「社員がイキイキ働く企業風土・自律的従業員育成」というテーマに関して、ご興味を持っていただいている方、あるいは「それを実現したい」との想いを持っている方が多いのだと思います。

つまり、前述のご自身の思考がどちらのタイプだったとしても、私はその是非を問う立場にはありませんし、正解があるとも思っていません。ただ、「経営者」としてのご自身が「本当にどうしたいと思っているのか?」と意思や思い向き合ってみることがスタートなのではないか、という気がしてなりません。

つまり、経営者であるご自身が、従業員に対する本質的な想いや考え方が、そのまま「今の経営・今の企業風土」に繋がってしまっていないか?という自問自答ということになるのでしょうか。

ドラッカーも「経営者に贈る五つの質問」の中で言っています。
「計画とは明日決定するものではない。決定することのできるのは、常に今日である。明日のための目標は必要である。しかし問題は明日何をするかではない。明日成果を得るために、今日何をするかである」

今一度、経営者としてのご自身の考えや想いと向き合ってみてはいかがでしょうか。
このことを、田坂広志さんは「事業に対する“野心”はあっても、経営における“志”がない」という表現をされているのではないかと思います。

次回、またよろしくお願いいたします。(7月18日(水)更新予定)

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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