第8回 創発による合意形成

皆さん、こんにちは!

前回は「イキイキ働く企業風土」実現を成し遂げていると思われる幾つかの事例企業を題材に、「経営者としてのコミット・覚悟」の部分に関して書かせていただきました。

「経営者としてのコミット・覚悟」というと大袈裟(おおげさ)に聞こえるのかも知れませんが、結局その部分に大きなウェイトが懸かっているような気がしています。
一方で、その「覚悟・コミット」を高めたり、深めたりすること自体が、忙しい日常の業務をこなしながら、という現実の中ではなかなか難しい事も事実だと思います。

今回は、その「コミット・覚悟」を高める機会としての「場」の確保の重要性と、それを実践に結び付けていくプロセスとしての「創発による合意形成」の在り方に関してご紹介させていただきます。

■「経営者としての覚悟・コミット」を高めるとは?
弊社では東京・大阪で年2回、経営者の皆さんを対象にした「経営マネジメントフォーラム」というワークショップ型研修を毎年開催させていただいております。

今年も5~6月に掛けて約2か月、4回にわたり実施させていただき、先日無事終えたところです。そこに参加してくださった経営者の方のご感想を三つほどご紹介させていただきます。

  • 「経営をする」という事は、私にとって命がけだけという事を再認識させられました。
  • 「創業時の想(おも)い」が日常の仕事の中で埋没している事を思い起こさせてくれた。
  • 改めて「経営の目的」を突き付けられ、他社の経営者の方々と話をする事で、自分の中で確認が出来た。経営って、こんなにやりがいのあるものなんだ!と改めて感じました。  等々

ここで、何を言いたいのかというと、おそらくこの方々も、皆さんお忙しい立場の方々ばかりで、あえてこうした機会を持たなければ、このようなご自身の中での「気づき・再確認」には至らなかったのではないか、という事です。

この「ワークショップ型研修」では、同じ経営者という立場の方々が、経営品質という考え方をベースに幾つかの視点で「対話」を繰り返しながら、自社の在り方、もしくは経営者としての在り方を考えていただきながら、戦略課題の抽出に取り組んでいただく内容になっています。
肝心な点は、同じ経営者同士で「対話を繰り返していただく」ところにあると考えています。

■「理解の学習」と「気づきの学習」
学習には「理解の学習」と「気づきの学習」の2種類があると言われています。
「理解の学習」とは一般的な「勉強」の事を指しており、学校での勉強や、書籍・インターネット等を通じて「分かった状態・知識を得る」事を目的としています。
ところが、この「理解の学習」は忘れやすい、実践(行動)に繋がりにくい、また実践は学んだとおりにはならないといった問題点があります。

一方、「気づきの学習」は、色々な視点の方の集まりによる対話を通じて「アッ、そうか!」「なるほど!」といった「新たな気づき・深い気づき」を得る事に適しており、その方が意識の中に残りやすく、実践(行動)に繋がりやすいという特徴があります。
このような「新たな気づき・深い気づき」を得るには、普段の自分の思考回路・固定概念を超えた視点が効果的です。
そして、そのためには、異なる視点や見方・思考回路を持った方々との対話からしか生まれないと言われています。

そういえば、前回ご紹介した「星野リゾート/星野佳路氏・ネッツトヨタ南国/横田英毅氏・東海バネ工業/渡辺良機氏・日本理化学工業/大山泰弘氏」のいずれの方も、それまでに抱いていたご自身の見方・固定概念を壊されたところから、それぞれの方の「コミット・覚悟」を極めていかれたように思います。

■従業員との「対話の実践」
では、そうした「気づき」を得るような「対話」は、上記でご紹介させていただいたような「場」に出向かなければいけないのでしょうか?もちろん、そうした機会に積極的に臨まれる事も有効な手立てではあるかも知れません。ただ、必要な要素は「異なる視点や見方・思考回路」です。この要素を得るための他の手立てはないものでしょうか・・・。

そんなはずはありませんよね。

「宝は足下にある」という表現があります。
ご自身が経営しておられる会社には、既に多様な視点・見方・思考回路を持った社員の方がいらっしゃるはずです。

「経験が足りない・若すぎる・業界の事を知らない・・・」それらは出来ない理由になりません。それこそが「多様な視点・見方・思考回路」そのものなのですから!

その社員の方々との「フラットな対話」を通じて、経営者としての「新たな気づき・深い気づき」を得る事は充分に出来るのではないでしょうか。

■創発による合意形成
ただ、ここで注意が必要なのは「フラットな対話」という点です。
「フラット」という意識レベルでの関係が構築されていなければ、目的とする「新たな気づき・深い気づき」には至りませんし、「対話」の最大の成果である「創発による合意形成」は得られません。
しばしば会議で見られる「特にありません」が出ないような状況・環境を作っておく必要があるという事になります。

「創発」とは、もともと自然科学の世界で使われていた用語のようですが、組織マネジメントにおいては「個人が単独で存在するのではなく適切にコミュニケーションを行うことによってその個人の能力を超える創造的な成果を生み出す」というニュアンスで使われています。

つまり「多様な視点・見方・思考回路」を持ち合わせた方々が、適切なコミュニケーションを実践するために「心理的にフラットな関係」さえ構築されていれば、個人の能力を超える創造的な成果(≒新たな気づき・深い気づき)を得られるという事になります。

「合意形成」は字の如(ごと)しですが「お互いが納得できる」という事ですから、『個人の能力を超える創造的な成果を得られ、その事に参加者である社員が納得する』という事になりますよね。

これは、このコラムのテーマである「社員がイキイキ働く企業風土」という事そのものを指しているのではないでしょうか。

最近は、ファシリテーション、ワールドカフェ、アクションラーニングといった「対話の手法」もずいぶんと一般化してきましたので、その目的に応じた選択が出来る状況になってきているのではないかと思います。

「経営者としての新たな気づき・深い気づき」を得るために「創発による合意形成」が実現できれば、それは既に「社員がイキイキ働く企業風土」に向けて一歩を踏み出しているのかも知れませんね。

また、最近、このERPナビに特別投稿をしてくださった慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科の保井俊之先生が、今回のテーマ領域の内容をアカデミックに紹介されております。ご興味のある方は下記URLの内容もご覧いただければ、より深くご理解いただけるのではないかと思います。

【特別企画】大学院の教育現場から企業の組織変革を考える
組織を変えるために、ポストデザイン思考・ポストシステム思考のデザインが必要なわけ/保井 俊之 氏著

次回、またよろしくお願いいたします。(8月22日(水)更新予定)

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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