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第70回 「モチベーションの変化」から見る「働き方改革」の本質
今回は、9月に出版された『モチベーション革命』(尾原和啓著、幻冬舎)から、変化するモチベーションを通じて、今、流行りの「働き方改革」の本質を、あらためて考えてみたいと思います。
「モチベーションの変化」から見る「働き方改革」の本質
皆さん、こんにちは。
ノーベル賞の各賞の発表が続いていますが、平和賞の「核廃絶NGO『ICAN』」、文学賞の「カズオ・イシグロ氏」、経済学賞の「リチャード・セイラー教授(行動経済学)」の受賞が話題の中心かと思います。
個人的には「行動経済学」というのは耳慣れない言葉ながら、「経済活動における人間の行動について心理学を応用して分析し、経済をより合理的に説明ができるようにした」ものだそうで、興味を持っています。
「経営は、哲学と心理学と経営学だ」という表現もあるそうですが、「心理学」は大きなウエイトを占めているように認識しています。「心理学」は「哲学を起源」としているそうで、「心と行動の学問」であり、企業活動においては「従業員の行動に影響を及ぼすモチベーション」に繋がっているのだと思います。
今回は、9月に出版された『モチベーション革命』(尾原和啓著、幻冬舎)から、変化するモチベーションを通じて、今、流行りの「働き方改革」の本質を、あらためて考えてみたいと思います。
書籍『モチベーション革命』
この本のサブタイトルに『稼ぐために働きたくない世代の解体書』と衝撃的ともいえる記載があります。
著者の尾原和啓氏は1970年生まれで現在47歳。マッキンゼー・アンド・カンパニー、リクルート、Google、楽天などに勤務したキャリアを持っておられ、いわゆる、最近の「ゆとり世代」でも「さとり世代」の方でもありません。
そんな方が「世代の違い」という切り口から「今後の働き方・働くモチベーション」を持論として大胆に展開しておられる内容になっていますが、詳細はぜひ一度手に取ってお読みいただければと思います。
「働き方改革」の本質
昨今、右を見ても左を見ても「働き方改革」という言葉が躍っていますが、下記内閣府の法案内容を見ても、どちらかといえば「働きやすい環境づくり」という側面の視点が多いように見えてしまいます。
- 同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
- 長時間労働の是正
- 柔軟な働き方がしやすい環境整備(テレワーク・副業・兼業の推進等)
- 女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備
- 病気の治療と仕事の両立
- 子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労
- 雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援
- 誰にでもチャンスのある教育環境の整備
- 高齢者の就業促進
- 外国人材の受入れ
もちろん、これらは重要な取り組みであることは間違いないですが、いずれも「自分自身の外面」の話であり「働く人自身の内面」の視点が少ないのは否めない事実ではないでしょうか。
「働き方改革」の本質は、「働く人自身がイキイキと働くようにするには?」であり、そういう意味で「働く人自身の内面」の視点、すなわち「モチベーション」の切り口は避けて通れないように思います。
「モチベーション」はどう変わっているのか?
もう一度前述の『モチベーション革命』の論旨から、上記のテーマを考えていきたいと思います。
『稼ぐために働きたくない世代の解体書』というサブタイトルの記載はご紹介させていただきましたが、団塊の世代以降も含めた現在の経営者・幹部・管理職の多くを占める「『ないものを得る』ために金銭や地位に対する達成志向・欲望上昇志向の強い『乾いている世代』」と、「生まれた頃から物質的なモノは全てがそろっていて埋めるべき空白がない『乾けない世代』」の育った時代背景・環境の違いから、「働く」ということに対する価値観の違いが生じているという指摘がされています。
既に「人手不足」が顕在化しており、今後、労働者人口が急速に縮小していくことだけは避けられない状況の中、どんなに世代が変わり、価値観が変わろうとも経営者という立場でいる限り「従業員に高いモチベーションを持って、生産性の高い仕事」をしてもらわなければなりません。
「働く人自身の内面」がどのように変化しているのかとしっかり向き合うことから目を背けるわけにはいかないのではないでしょうか。
今後も、よろしくお願いいたします。
次回は11月15日(水)更新予定です。
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