第69回 対話(ダイアログ)実践の落とし穴

今回は元パナソニック、Ziba戦略ディレクター濱口秀司氏の講演「創造とコラボレーション」から、「対話(ダイアログ)実践の落とし穴」について考えてみたいと思います。

対話(ダイアログ)実践の落とし穴

皆さん、こんにちは。

最近は、北朝鮮問題で非常に緊迫した状況が続いていますが、各国の思惑が錯綜してなかなか活路が見いだせない状況のように感じます。
人智が及ばない天変地異はある意味受け入れがたいことも受け入れざるを得ない部分はあると思いますが、お互い「心ある人間同士」の話だけに、何とかならないものかと思ってしまいますね。

そんな状況の中でも、私たち市井の人間としては、マルティン・ルターの名言「たとえ、明日世界が滅ぶとしても、私はリンゴの木を植える」にあるように、自分が大切にする信念・考えを全うするような生き方をしたいものですね。

今回は、先日、9月9日、10日に行われた第39回日本創造学会 研究大会に参加させていただいた際にお話を伺ったUSBメモリーなどの発案者である元パナソニック、Ziba戦略ディレクター濱口秀司氏の講演「創造とコラボレーション」から、「対話(ダイアログ)実践の落とし穴」について考えてみたいと思います。

Stop collaboration now

Ziba戦略ディレクター濱口秀司氏といえば「知る人ぞ知る」の典型のような方に思いますが、死語となり最近はあまり聞かなくなってしまった「イントラネット」から、多くの方が普段使っているUSBメモリーといった数々のイノベーションを起こす製品やコンセプトを開発してきた世界的なコンセプト立案、戦略構築分野においては「超」が付く有名人のお一人だと思います。

この方が、オープンイノベーションを含め一般的には「創造」において必要とされる「コラボレーション」を全面否定するような表現で一石を投じる表現をされたわけです。

もちろん、最終的には「コラボレーション」そのものを全面否定されたわけではありませんが、この時の内容は、組織風土を醸成するために必要とされている「対話(ダイアログ)実践の落とし穴」を端的に指摘されていて、興味深いものでした。

濱口氏の実験

濱口氏は、ご自身が担当されたいくつかのプロジェクトで、どのような「コラボレーションの進め方が効果的な成果を上げるか?」を実証実験されたそうです。
その進め方とは、あるテーマに関してのアイデア出しに際して「8名・1時間」という同じ条件で下記バリエーションを実践した検証です。

(1)テーマに対して、とにかくフリーに議論・検討して、最終的にアイデアを出してもらう

(2)最初の20分は個人で考え(話さず)、自分なりのアイデアを出し、次の20分でそれぞれのアイデア・ロジックを説明・共有し、最後の20分は全員で検討してチームとしてのアイデアを出す

(3)最初の20分は上記(2)と同じで、次の20分でそのアイデア・ロジックを説明・共有し、そのロジックを受け入れたうえでさらにもう一度個人のベストアイデアを検討し、最後の20分は個々のアイデアを持ち寄ったうえで全員で検討してチームとしてのアイデアを出す

(4)最初の40分間は個人でひたすら考え、最後の20分で一気に個々のアイデアを全員で検討して、チームとしてのアイデアを出す

((2)と(3)の違いが分かりにくいかも知れませんが、(3)の2つ目のステップが「共有」だけでなく、さらに「共有したうえで個人の再検討」が加わっているとご理解ください。)

上記4種類の取り組みを通じて、どのチームのパフォーマンスが高いかを検証したそうですが、どのような順位が付いたと思われますか?

実験の結果としては「(3)→(2)→(4)→(1)」という順番だったそうで、メンバーや多様性・専門性の異なる状況で何度か実施したそうですが、この順番はどれも同じ結果になったそうです。

コラボレーション/対話の落とし穴

一般的には
  (1)守秘義務:安全な場が確保され
  (2)セッションへのコミットメントがあり
  (3)共有とサポートを心掛け
  (4)平等と尊重でフラットな関係で
  (5)傾聴と振り返りを重んじる
ことで、対話の有効性が高まるとされているかと思いますが、今回の結果は、グループでの対話の落とし穴・盲点を端的に指摘している事例のように思います。
特に(1)の成果が最も低い順位だったということが象徴的なのかもしれません。

つまり、”何かを生み出すコラボレーション”をする組織の絶対条件として「参加している個人個人が、自分の考え・意見をトコトン考え、しかもそのロジックを明確にし、それを受け入れるプロセスを通じて、自身が持つ無意識の固定概念を崩す」ことがあり、そのうえでさらに「個人のベストパフォーマンス」を再度検討して持ち寄ったアイデアでなければ、「本当の意味でのチームとしての“共創・コラボレーション”は生まれない」ということなのではないでしょうか。

この事が意味しているのは、「上記(2)セッションへのコミットメント」の難しさを表しているのかもしれません。つまり、一人でも自分の考えを突き詰めて考えたうえでなければ、予定調和や同調圧力的な流れになりがちでパフォーマンスを極端に低下させるだけでなく、さらに「上記(3)(4)(5)」を通じて、いったん自分の固定概念を超え、多面的な視点を受け入れた状態で、再度個人の「(2)セッションへのコミットメント」を突き詰めてこそ「共創・コラボレーション」が機能するということなのだと思います。

「組織の能力を高める」「従業員の自律性を高める」といった実践は、それぞれの従業員が自社のこと、それぞれの組織やテーマ等に関して「どこまで本気なのか?」が問われるということであり、経営者の側から見れば、どのような考え方や環境が、従業員が「本気になってくれるのか?」を考えていくということになるのではないでしょうか。
「因果応報」……結局自分自身の問題に舞い戻ってくることになりそうですね。

今後とも、よろしくお願いいたします。

次回は10月18日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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