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第42回 「働き方」に対する価値観の変化
皆さん、こんにちは!
春を通り越して、初夏の勢いの季節になってきました。ネパールの地震や箱根山の火山活動の活性化や気温を含めた異常気象といった地球全体の軋みを感じてしまいますが、皆さんの会社では「軋み」は出ていませんか?
先日、ある大学の3回生を対象にした「就職活動を前にしたキャリア形成講座」を担当させていただきました。この大学でこの講座を持たせていただくのは4年目になりますが、明らかに昨年までの学生とは異なった「価値観・職業観の変化」を感じました。
今月は、そんな「新たな価値観・職業観の人財」を迎え入れる企業側のあり方を考えていきたいと思います。
就職活動をする際に、会社選びで重視するポイント
例年、いろいろな切り口で就職活動を前にした学生を相手に、「働く」ということに対する意識や認識を理解してもらうために、自己洞察・内省といったことを促すワークショップを行うわけですが、今年も、「就職活動をする際に、会社選びで重視するポイント」ということで考えて、一人10項目程度の自分の考えを出していただきました。
毎回、同様のことを行っていますが、まだ3回生の春ということもあり、リアリティに欠ける学生が多いことは否めず、従来は「安定した収入・賃金水準・休日数・福利厚生・有休等を含めた働きやすさ」を軸に、「事業そのものへの興味」といった視点での「会社選び」が中心でした。
私の思い込みで、このポイントが大きく変化しているとは想定していませんでしたが、今回は従来とは全く異なる結果が出てきたわけです。
もちろん、「安定した収入・賃金水準・休日数・福利厚生・有休等を含めた働きやすさ」といった項目がなかったわけではありませんが、30%を超える学生がまず始めに「人間関係の良い会社かどうか?」を挙げ、ダントツで全体の占有率のトップを占めたのには、驚かされました。
さらに、10項目の占有率の2位に「自分が成長できるか」3位に「社会、もしくは人の役に立つかどうか」が並び、「収入・休日等の働きやすさ」は4位にようやく顔を出したという結果でした。
「働き方Next」の現実
この実態を、皆さんはどのように受け止められるでしょうか?
「甘い!・現実はそんなモンじゃない・競争社会を分かっているのか」等々、いろいろなご意見があると思います。
ただ、日本経済新聞の「働き方Next」という特集では、いろいろな働き方が増え、企業としてその対応をどのように考えるべきか? という問題提起を行っています。まさに書かれている内容の多くは、「既に起こっている未来」であるということを認識しないといけないのではないでしょうか。
私自身としては、リアルに目の前にいる学生たちから、その「指向性の現実」を突きつけられた印象でした。
では、私たち企業側・経営者の皆さんは、この「既に起こっている未来」にどのような考え方で対応していけば良いのでしょうか?
「会社と従業員の関係」のパラダイムシフト
2010年にダニエル・ピンク氏は「モチベーション3.0」を提唱し、「今後の企業と従業員の関係は、“エンゲージメント関係/婚約関係”であり、“共感・対等”がキーワードになる」と言っています。
モチベーション1.0:親子関係・滅私奉公・年功序列「一生面倒みるから頑張れ」
モチベーション2.0:契約関係・信賞必罰・成果主義「これだけ頑張ったら報いるよ」
という時代を経て、まさに生まれながらの「モチベーション3.0世代」が企業の主流を占める日は遠くないようです。
これまでは「会社・経営は、事業での成果・業績・結果を上げ続けなければならない」故に、「その成果に貢献できる従業員として成長してもらう必要があり、その能力向上の視点で育成する」という概念が常識的だったのではないでしょうか。
それをパラダイムシフトして、立ち位置を変えるということは
「“従業員の成長(社会/人の役に立てる人になる)”」が先に来て、その「個人の成長を支援する会社(人間関係の良さ)」というブランドに対するモチベーションやロイヤルティが、結果としての成果・業績・結果に繋がるということではないでしょうか・・・。
皆さんの会社でも、ベテランと若手、あるいは上司と部下といった価値観の違いからくるディスコミュニケーションや「軋み」といった問題を抱えておられるかも知れませんが、地球環境の問題と同じで、小手先で解決できる問題ではないと思います。
「働く価値観」において、大きな変貌を遂げる人たちを前に、私たちの会社は、どのように社員との信頼関係を構築していくのか、今すぐに考えても、決して早すぎることはないように思います。
今後も、よろしくお願いいたします。
次回は6月17日(水)更新予定です。
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