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第41回 レディネスと権限移譲
皆さん、こんにちは!
この季節は、新入社員も入り、フレッシュな空気感になる時期ですね。
今年の新入社員のタイプは「消せるボールペン型」と言われているようです。そのココロは「見かけはありきたりのボールペン。だが、その機能は大きく異なっている。見かけだけで判断して、書き直しができる機能(変化に対応できる柔軟性)を活用しなければもったいない。ただし、注意も必要。不用意に熱を入れる(熱血指導する)と、色(個性)が消えたり、使い勝手の良さから酷使しすぎると、インクが切れたりしてしまう(離職してしまう)」だそうです。
今月は、そんな新入社員も含めた指導における「従業員のレディネスと権限移譲」に関してご紹介させていただきます。
「レディネス」
リーダーシップの重要な役割の一つに、「従業員に対する実践指導」があるわけですが、それには、その対象である「従業員側の受け入れ状況(レディネス)」によって、そのやり方を変える必要があります。
リーダーの方が、その手本を示すことは重要なことではありますが、「従業員のレディネス」によって、その効果があるかどうかが変わってしまいます。
ここでは、そのレディネスを
【高程度】能力が高く、意欲や確信を示す
【中~高程度】能力は高いが、意欲が弱く不安を示す
【低~中程度】能力は低いが、意欲や確信を示す
【低程度】能力が低く、意欲も低く不安を示す
の四つに分類してみます。
つまり、経営者・リーダーの方々が「私はこういうタイプの人間なんだ。だから、これが私のスタイルだ!」的な自己を中心にした「一元的な方法論」では通用しないということになります。
今年の「消せるボールペン型」どころではなく、従業員の価値観は、個々のレベルで多様化してきています。一人でも多くの従業員の「心に火をつけ」、自律的になってもらうという「目的」のためには、経営者である私たち自身がそのレディネスを見極めて、アプローチ方法を変えられる「プロフェッショナル」になっていく必要があるのではないでしょうか。
「2:6:2の法則」(働きアリの法則)
「アリの法則」という表現は知らなくても「2:6:2」という表現を知らない方はおられないのではないでしょうか。自然界の摂理として「働きアリ」の世界においても「2:6:2」という分布は必ず起こる絶対的なものだと言われています。
皆さんの従業員を思い出していただいても、やはり何となく「2:6:2」の構成になっているのではないでしょうか。
この「2:6:2の法則」と「レディネス」を組み合わせて並べてみたのが、下図になります。
この表にあるように、個々の従業員のレディネスに応じて、少なくとも四種類程度のアプローチの仕方を考えておいてもよいと思います。
「権限移譲」に対する妄想
一般的には、いわゆる、「上意下達」の指示命令スタイルは通用しにくい時代であり「権限移譲」をしていかなくてはいけないという事が言われています。それは、決して間違いではないと思いますが、全ての従業員に「権限移譲スタイル」が必ずしも効果的に機能するものではないことが、表からもご理解いただけると思います。
お分かりの通り「権限移譲スタイル」が機能するのは【高程度】【中~高程度】に分類される人たちです。この人たちに対しては右項目の「リーダーシップスタイル」にある通り「低指示」つまり「権限移譲」でも、ストレッチされた目標さえあれば、自律的に動いてもらえます。
但し、これさえも条件付きです。その条件とは、会社・組織が目指す方向性やビジョンが共有・理解されているということです。これが出来ていない状態での「権限移譲」は、ただの「放任」になってしまいます。
まして、【低~中程度】【低程度】に分類される人たちに対する「方向性やビジョンの共有・理解がない権限移譲」、つまり「放任」は、どのような影響を与え、どのような行動になっていくのでしょうか・・・。やはり、ある程度の「使い分け」が要りそうですね。
ただ、逆の意味で「上意下達」に対する勘違いにも気を付けて下さい。「リーダーシップスタイル」項目に「高指示」が必要な「能力が低い従業員」に対しても「協労的行動」が求められています。つまり、「指示・命令を出す」だけではなく、如何に「行動を共にするか・寄り添えるか」が求められているということになります。
皆さんの会社でも、新入社員が入ったり、組織再編があったりする時期だと思います。改めて、メンバーの「レディネス」を考慮したリーダーシップスタイルを意識していただくには良いタイミングではないでしょうか。
今後も、よろしくお願いいたします。
次回は5月20日(水)更新予定です。
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