第48回 経営者の「本気の覚悟」

皆さん、こんにちは!

早いもので秋も深まり、2015年も残すところ1か月余りになりました。
今月は、久しぶりにお客さんをお連れして、東海バネ工業さんを訪問させていただいた際の渡辺良機社長の「経営者としての覚悟」の深さをご紹介させていただきながら、従業員にとっての経営者のあり方を考えてみたいと思います。

「東海バネ工業」という会社

ご存じの方も多いかと思いますが、まずは改めて「東海バネ工業株式会社」という会社をご紹介させていただきます。

東海バネ工業株式会社Webサイト

大阪・福島区に本社を構えるこの会社は「多品種微量生産」を特徴にした「職人による手作り」に拘る従業員80名程のオーダーメイドバネのメーカーです。
2008年度、競争戦略を認める「ポーター賞」受賞を筆頭に各種受賞ホルダーであり、テレビ東京「カンブリア宮殿」でも紹介され、直近では「第6回ものづくり日本大賞 経済産業大臣賞」も受賞されています。

そうした「事業戦略面」における取組や特徴も際立っていますが、一方で法政大学・坂本光司教授の著書としてベストセラーとしてシリーズ化されている『日本でいちばん大切にしたい会社4』にも取り上げられているように「組織戦略面」、すなわち「社員がイキイキ働く企業風土・自律的従業員育成」という視点でも特筆すべき存在の会社であり、そのど真ん中におられるのが、私が敬愛する「渡辺良機社長」というリーダーです。

社長・渡辺良機氏の「オヤジ」としての存在

この会社の工場は、兵庫県の北部・豊岡市にあります。2014年までは同じ兵庫県・伊丹市に工場を構えておられ、本社から30分程度の距離の場所でしたが、今の豊岡・神美台(かみよしだい)工場は3時間近くかかる場所です。(この遠い場所に移転した理由も渡辺社長の独特のこだわり・思考の論理性がありますが、今回は割愛させていただきます)

その神美台工場に、大阪に本社を構える従業員200名程の会社の社長はじめ役員・幹部社員9名と一緒に訪問させていただきました。

冒頭に社長の講演に始まり、工場見学に進むのですが、その案内をしてくださるのは一般的には「3K」の典型と思われるような業種にも関わらず、キラキラと輝く若い女性社員3名です。
その後、質疑応答の時の話をご紹介させていただきます。
質疑応答の場面では渡辺社長、コーディネートしてくださった夏目常務に加えて、現場のマネージャー、リーダーに今年の新卒というバリエーションに富んだ5名の社員の方も同席してくださいました。

幾つかの質問があった中の一つで「自社は販売と製造のように異なる部門の間にお互いの異なる立場での軋轢がある」といった一般的にどこの会社でも見かけられる状況に関する質問がありました。
それに対する回答は「会社が目指しているものが売上や利益といった目標レベルのものになっているのではないか。お客さんに“提供する価値を高める”という目的レベルのものであれば、自分たちだけで実現できる筈もなく、協力するしかないんじゃないですか。ウチの場合は“単品バネで困っている人に役立つ”ために“全員営業・全員でモノづくり”です」でした。

また人事評価制度や育成に関しての質問が出た時でのやり取りが、このコラムの本題に関する内容として秀逸でした。

現場の社員の方々に「渡辺社長は皆さんにとってどんな存在ですか?」という質問に対しては「おらん方がいいな」と言って社長は席を外されました。
そんな中での社員の方々の回答は「一人一人の人生と向き合ってくれる」「遠いようで近い存在」「人として尊敬できる」であり「入社以来、休みたいと思ったことがない」という発言まで飛び出していました。

このような関係性を築いている渡辺社長の本質を見せてくださった最後のコメントをご紹介させていただきます。

「幹部には“会社にとって都合のイイ従業員づくりは止めたってや”と言っている。ウチの会社には、全員で、よってたかって人を育て上げる仕組み・文化が出来上がっている。それぞれの従業員には奥さんがいたり子供がいたりして、それぞれの人生がある。彼らに“不本意な人生”を送らせない。その実現のためには“腹にドーンと落ちる覚悟”がいる。そのために経営者として、幹部として“リスク取れよ!勇気出そうよ!!”……。本気でなければ、伝わらない。本気であれば絶対伝わる。」

まさに「従業員の父親・オヤジとしての愛」を垣間見た瞬間でした。私自身、その場にいて涙腺が壊れそうになったことを認めざるを得ません。
私たちは、自分の子供には「無償の愛」を持って接するものです。どんなに出来の悪い子であっても最後まで守り、成長を応援し、社会に役立つように願うものではないでしょうか。

渡辺社長は、従業員にとってまさに「親としての覚悟・愛」を持って接しておられると思います。そんな「本気」が子供である従業員の皆さんにはビンビンに伝わっていることが目の前の若い従業員の方々から汲み取ることができた気がします。

「覚悟」という言葉は簡単に使うべきものではなく本当に重いものだと思います。
ある方に「人生の扉は、後ろの扉を閉めないと、前の扉は空かないようになっている」と聞いたことがありますが、「後ろの扉を閉める」という「覚悟」は簡単ではありません。

ハイテンションになった状態での帰路の中で、ご一緒させていただいたお客さんの社長が「同じことを思っていたとしても、“本気じゃなかった”って事を目の当たりにした気がします。」と仰っていました。今回の経験で「本気の覚悟」が深まったのであれば、この社長にとっては大きな転機になるかもしれません。

色々なリーダーシップ論やモチベーション論がありますが、そうした理論も大前提である「トップの覚悟のある本気の想い」の上にしか立脚しないことを改めて痛感させられた気がします。

経営者の皆さん、私たちは社員のことを「自分の子供」と同じように愛しているのでしょうか。そんなレベルの「本気の覚悟」があるでしょうか。そんなことを改めて考える機会を持っても良いのではないでしょうか。

【追記】東海バネ工業・渡辺社長のお考えに興味を持たれた方・もっと詳しく知りたい方2012.11.24発行の「OBT人財マガジン」でのインタビュー記事をご覧ください。

高付加価値化実現の背景に「経営者の本気」と「社員の士気」(前編)

今後も、よろしくお願いいたします。

次回は12月16日(水)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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