第49回 「経営者の覚悟」を深める「挫折」

皆さん、こんにちは!

年々、時の経つ早さに驚かされる年齢になってしまいましたが、2015年も年の瀬を迎える時期になってしまいました。

前回は「経営者の本気の覚悟」をテーマに取り上げさせていただきましたが、今回はその「経営者としての覚悟」がどのように形成されるのかを考えながら、皆さんご自身の経営者としての「覚悟を深める」ヒントにしていただければと思います。

あるコミュニティで顔を見せた「経営者の覚悟」

先日、とある経営者の皆さんのコミュニティに参加させていただきました。
この場におられたのは、以前弊社の「経営者対象ワークショップ/経営マネジメントフォーラム」にご参加いただいた際に同じグループになった方々で、終了後も定期的にお集まりになっている方々です。

「創業社長・二代目社長・いずれ事業継承が決まっている現取締役・サラリーマンとしての取締役」……と一言で「経営者」と言ってもバックグラウンドや現時点でのお立場は微妙に違う方々です。
この皆さんと、このコラムのテーマである「社員がイキイキ働く企業風土・自律的従業員育成のあり方を考える」に沿った議論になった時の話です。

「会社として、従業員の想いをどこまで汲むべきか……」といった話におよんだ時に、ある方が「“どこまでも”も何も、会社経営の目的は”従業員の想い”を満たすためのものだと思っています」とややキツイ口調で仰いました。

続いて、その考え方に至ったご自身の経験をこんなふうに語り始めてくださいました。
「私は、先代に猛反対をされ、“お前のやり方では失敗する”と罵られ、邪魔さえもされる中で、何度も何度も反芻し、自分の考え方を振返り“自分の信念”として確立していきました。こういう経緯を経ているので“自分が間違っていないことを証明”するためにも“やり抜かないとアカン”のです。この経験を通じて、感じていることは、将来自分が息子に事業継承する側になった時にも、意図的に”子供の考え”を否定した方がイイようにも感じています。それで”分かった”と折れるような息子であれば継承してはいけないのかもしれません。そこでぶつかって、ぶつかって、それでも曲げないところまで“信念”研ぎ澄まさせないと会社なんか継がせるわけにいきません」と……。

普段にこやかで穏やかな、一見すると「お坊ちゃん」のように見える二代目社長の方ですが、この時は熱を帯びながら、やや興奮したようにお話しされているように見えました。

その時に同席されていた方は、残念ながら、その温度・熱に押されたのか、コメントできなくなってしまっておられました。

また、別の機会では、同様に二代目を務めて数年になる経営者の方は、継承直後に、創業者の方にご自身の考え方を否定され「部下を連れて出ていかれてしまう」という形で窮地に追いこまれる結果になったそうです。ご本人にとっては、それも「自身の考え方の正当性を証明するしかない」という想いに至るきっかけとなったと聞きました。

こうした類の「経験」が経営者の「覚悟を深める」ということなのかもしれません。

「覚悟」が深くなる挫折経験

世の中で著名な経営者を見渡した際に、やはり「挫折」を味わってこられた方も少なからずおられるように思います。

京セラ・稲盛和夫氏、ソフトバンク・孫正義氏、伊那食品工業・塚越寛氏らは皆さん若い時に、生死を彷徨うような病気を患ったご経験があります。石坂産業・石坂典子社長は幼少期に職業差別の屈辱を味わって育ったそうです。また、トヨタ自動車・豊田章男氏は全米公聴会での涙以来「自己変革が起こった」と仰っています。

それぞれの生い立ちや境遇、病気や、思いもかけないトラブル……と「挫折」の要因はさまざまです。
が、その「挫折」に、どれだけ真摯に向き合い、考え抜き、自分に正直な「解」を見出していくのかという経験が「覚悟」を形成していくのかもしれません。

もちろん、そんな経験をしなくても、経営者としての「覚悟」を持ち合わせた方もおられると思いますが、少なくとも「バネ」になるような自己認識があるような気がします。

仮に、同じ事象があったとしても、人によっては、それを「挫折」と感じない方もいるわけで、その方にとっては「大きな転機」を取り逃がしているのかもしれません。

『オプティミストはなぜ成功するか』(著者:マーティン・セリグマン)という名著もありますが、それも単なる「楽観主義礼賛」ではなく「自分の可能性を信じる」という意味での「楽観主義」であり「自分に対する深い洞察」がベースだと指摘しています。

「もしイノ」から学ぶ「挫折」と「真摯さ」

先日、あの「もしドラ(もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら)」の第二弾として「もしイノ(もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら)」がダイヤモンド社から出版されました。
(著:岩崎夏海)

今回のテーマは「組織の中の居場所」にあるようですが、こんな件があります。

↓ ↓ ↓
「マネジメントって、人の居場所を作るのが仕事ですよね?」
「そうよ」
「でも、さっきのドラッカーの言葉によれば『自分の居場所をなくする』というのもマネジメントの仕事ということになりませんか?」
「え?」
「だって『自分がいなくても組織を回るようにするのがマネージャー』だったら、自分の居場所をなくする――ってことが正解じゃないですか」
~中略~
「そうね、岡野さんの言う通り、マネジメントは、本質的には『悲しい仕事』なのかもしれない。だからこそ、ドラッカーはくり返し『真摯さ』が必要と言ったんだと思う。そういう仕事は、真摯な人間にしかできないから」
↑ ↑ ↑

皆さん、経営者にはそれぞれすばらしい「想い」があると思っています。だからこそ、その「想い」と向き合い、研ぎ澄ませ、一人ひとりの従業員の「人生」を彼ら自身にとって価値あるものにしていくことに「真摯」に向き合うということを考えても良いのではないでしょうか……。そのためには、何を「挫折」として自己認識するのかが大切になってくるのかもしれません。

2015年最後の投稿になりますが、来年も、皆さんにとってすばらしい一年になることを祈念しております。一年間、ありがとうございました。

次回は1月20日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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