第83回 「真実」を掘り下げる思考習慣

フェイクニュースに代表されるように、「何が正しく、何が正しくないか」「何を信じ、何を信じないのか」は、それぞれの思考性の前提によって、どちらにも見えるものなのかもしれません。そもそも自分がよるべき「原点」が何なのかを突き詰めて認識しておく必要がありそうです。

「真実」を掘り下げる思考習慣

皆さん、こんにちは。

ずいぶんと季節が進み、風邪・インフルエンザが話題になるような時期になってきましたが、世界に目を向けるとアメリカ中間選挙、サウジアラビア人記者・カショギ氏殺害事件などメディアの情報しか得られない私たちにとっては、何が「真実」なのかよく分からないニュースに溢れています。

今回は、私たちが知らぬ間に陥りがちになっている思考の罠を考えながら「真実」を掘り下げるということを考えてみたいと思います。

フェイクニュース

トランプ氏が米大統領選挙に登場して以降「フェイクニュース」という単語を耳にする機会が一気に増え、今ではごく普通に使われるようになっているのではないかと思います。

10月末に、NHK土曜ドラマでは、この表現をタイトルとした「フェイクニュース」を社会ドラマとして放映していました。ご覧になった方も多いのではないかと思いますが、非常に興味深く、問題意識を喚起させられる内容だと感じました。

番組公式ホームページの中で紹介されていますが、プロデューサー、演出のお二人のコメントは「現代社会に生きる私たちの心理的脆弱性」に対する問題提起をしているように思います。

【プロデューサーの言葉 北野拓】
“嘘が事実にされ、事実が嘘にされていく”。信じたいものだけを信じる時代に、テレビドラマは何ができるのか。今回、脚本の野木さんと考え続けて出した答えが、ニュースのようなスピード感で、今、この社会で起きていること、そして、そう遠くない未来に起きうる事を物語にすることでした。~後略~

【演出の言葉 堀切園健太郎】
人と人を繋げるツールのはずが、一方で安易に二項対立や差別を助長し、「分断」を生んでいるネットの世界。樹が抱くメディアの記者としての「正義」と、一般の人がSNS上で展開する「正義」との違いは何なのか?信じたいものだけを信じる現代の風潮に忍び込む「フェイクニュース」は、メディアの端くれにいる自分にも深く突き刺さる。~後略~
*「NHK(日本放送協会) ドラマ『フェイクニュース』より引用」

社会変化の影響

こうした社会変化の影響は、私たち一人ひとりの思考性に徐々に、本当に少しずつ浸み込んでいき、いつしか知らぬ間に、「私たちの意識・常識」を変えていくものではないかと思います。

それは避けられない現実だと思いますが、その「意識・常識の変化」が良い方向・プラスの方向に変化するケースもある一方、悪い方向・マイナスの方向に蝕まれていくケースもあるということを認識しておかないといけません。また問題は「知らぬ間に……」というところであり、「よしッ、こんなふうに変えていこう!」というものではないだけに厄介で、「イヤ、前からそうだった」的な錯覚に自分が陥ってしまうことなのかもしれません。

特に、日本人の思考習慣としては、
・『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』
(著:戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎 刊:中央公論社)

・『「空気」の研究』
(著:山本七平 刊:文藝春秋)

といった名著でも長年指摘されてきたように、情緒的な対人関係を過度に重視する「日本的集団主義」から思考や意思決定をしてしまう傾向があるだけに、より留意しておく必要があるのかもしれません。

それぞれの立場で陥りがちな思考性

先日、ある会社の経営者の方から、一人の管理職の方の「言動」に関する話をお聞きしました。

あるテーマに関する報告を求めたところ、「それに関しては問題ないので確認していない。問題ないことを報告することに、どういう意味があるのか?」と開き直られたという話でした。

その経営者の方の見解は「彼の立場から見たら問題ないかもしれないが、責任を取るべき経営者の側から見れば、本当に問題ないのかどうかは、経営者である私が判断するので、しっかり報告をしてもらわないと困る。そうでなければ、任せることも信頼することもできなくなる。そのことを理解できない彼は、マネジメントが向いていないのかもしれないし、管理職としては不適格なのかもしれない」というものでした。

多くの経営者の方は「それは、そのとおりだ!」と賛同される方が多いのかもしれませんし、ある側面から見れば、そのとおりなのかもしれません。

ただ、部下の立場からすれば「権限移譲すると言ったのだから、任せてほしい。任せてくれないということは、私のことを信頼していないとしか解釈できない」になってしまうのかもしれません。

そう考えると、どちらもそれぞれの立場からの「信頼できる・信頼できない」の水掛け論になってしまっても仕方ない状況になってしまいます。

そもそも「信頼する」ということは「●●してくれたら、信頼する」という条件つきのものなのでしょうか……。

「信頼する」の変化

フェイクニュースに代表されるように、「何が正しく、何が正しくないか」「何を信じ、何を信じないのか」は、それぞれの思考性の前提によって、どちらにも見えるものなのかもしれません。

ということは、そもそも自分がよるべき「原点」が何なのかを突き詰めて認識しておく必要がありそうです。

ということで、今回はハーバード・ビジネス・レビューから
『TRUST 世界最先端の企業はいかに〈信頼〉を攻略したか』 
レイチェル・ボッツマン (著)、 関 美和 (翻訳) 日経BP社 の書評的なコラム
『テクノロジーではなく「信頼」こそが変化のカギ』をご紹介させていただきたいと思います。
Harvard Business Reviewより『テクノロジーではなく「信頼」こそが変化のカギ』

あらためて、自分自身の「信頼」のよるべき場所が何なのかを考えてみてはいかがでしょうか。

今後ともよろしくお願いいたします。

次回は12月19日(水)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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