第82回 本庶佑教授が実践する「ワーク・アズ・ライフ」

ノーベル医学・生理学賞を京都大学特別教授・本庶佑(ほんじょたすく)氏の受賞は大きな話題になり、いろいろな角度からメディアに取り上げられていました。長期的な視点で、自分の信じた道に向かって進むことは、必ずしも簡単で平易な道ではないとは思いますが、それを実践、貫いていく方が、やはり大きな成果を上げていくということのように思います。今回は、その本庶氏の研究に対する取り組み姿勢から「個人の働き方」に関して考えてみたいと思います。

本庶佑教授が実践する「ワーク・アズ・ライフ」

皆さん、こんにちは。
この夏は多くの台風や地震による災害が続きましたが、ようやく季節も秋めいてきたところでしょうか。

この1カ月も、米中貿易摩擦の激化、第4次安倍内閣組閣にトヨタとソフトバンクの提携等々、政治・経済に関して、ネタが尽きることなかったように思います。

そんな中で、ノーベル医学・生理学賞を京都大学特別教授・本庶佑(ほんじょたすく)氏の受賞は大きな話題になり、いろいろな角度からメディアに取り上げられていました。

今回は、その本庶氏の研究に対する取り組み姿勢から「個人の働き方」に関して考えてみたいと思います。

ワーク・ライフ・バランス

日本では、資生堂出身の小室淑恵氏が2006年に「株式会社ワーク・ライフバランス」を設立し、その後2007年2月に政府、地方公共団体、経済界、労働界の合意により、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」が策定され、広く世の中に広まり一般化されたとされています。

【「仕事と生活の調和」推進サイト】

この動きは、当時の日本の企業社会の問題点として挙げられていた「長時間労働・過労死」などといった点に光を当て、個々人が充実した生活・人生を送るために、仕事だけではなく、家庭を含めた生活とのバランスを取ることが必要という意味で、インパクトが大きい概念として注目され、定着化してきていると思われます。

働き方改革法案

今年2018年6月に成立し、来年2019年4月から順次施行される「働き方改革法案」は、大きな意味で、このワーク・ライフ・バランスの概念を具現化したものともいえるのではないでしょうか。

もちろん、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」をはじめ、働き方が多様化している現在において、こうした制度整備が必要なことは間違いないとは思いますが、あくまでも、働く人にとっての「働きやすさ」にフォーカスされたものが中心であり、同様に非常に多様化している「働きがい」とは、少し趣が異なるように思われます。

また、経営者サイドから見れば「働く側の権利主張」にも映り、本来、企業として求めている「社会/顧客に対する貢献・付加価値の高度化・そのための従業員の自律性・生産性の向上」といったものが置き去りにされているようにも見え、忸怩(じくじ)たる思いを抱いている方も少なからずおられるのではないでしょうか……。

それが、近年「ワーク・ライフ・バランス」に対するアンチテーゼ的な考え方の台頭につながってきた背景かもしれません。

ワーク・ライフ・バランスの進化形

そのアンチテーゼ的視点は「そもそも、ワーク/仕事とライフ/生活は区別してバランスを取るようなものなのか?」という視点であり、「一人の人間がワークとライフを、そんなに都合よく使い分けた生き方ができるのか?」という思考に立脚しているように思います。

そうして台頭してきたのが「ワーク・ライフ・インテグレーション」や「ワーク・ライフ・ミックス」といった概念ではないかと思います。

そして、それをも凌駕した極端な意見として「ワーク・アズ・ライフ」という概念を提唱しているのが「現代の魔術師」の異名を持つ落合陽一氏です。

【落合陽一氏が語るワークアズライフの考え方とこれからの働き方】

この考え方は「働き方には、その人の生き方そのものが表れる」であり、自分の人生を賭けて進んでいく「本人の価値観・大切にすること」に邁進することは、本人にとって楽しく、イキイキした気持ちになれるものであり、「仕事も自分の人生の一部の表現」として捉えています。

本庶佑教授のワーク・アズ・ライフ

冒頭にお名前を出させていただいた本庶佑教授のいろいろなエピソードを見聞きしていると、仕事(研究)も遊びも全て同じ思考性で、一貫しているようにお見受けできるのではないでしょうか。

【本庶佑教授の名言が響く!経歴だけじゃなく生き方がスゴい!】

=6つのCを大切に=
好奇心/Curiosityを大切に、勇気/Courageを持って困難な問題に挑戦/Challengeし、必ずできるという確信/Confidenceをもち全精力を集中/Concentrateさせ、諦めずに継続/Continuationすることで、時代を変革するような研究を世界に発信することができるのです。

【京都大学大学院 医学研究科 免疫ゲノム医学 ホームページ】より抜粋

長期的な視点で、自分の信じた道に向かって進むことは、必ずしも簡単で平易な道ではないとは思いますが、それを実践、貫いていく方が、やはり大きな成果を上げていくということのように思います。

経営者の立場で、短期的成果・結果を求めざるを得ない側面があることは承知していますが、最終的には、どちらが、より大きな成果を生み出すのかを考える必要があり、そうした「人材開発・従業員育成の在り方」と向き合う必要があるのではないでしょうか……。

そういえば、池上彰氏が「すぐに役に立つことは、すぐに役に立たなくなる」というコメントをされていたことを思い出しました。

今後ともよろしくお願いいたします。

次回は11月21日(水)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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