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第132回 「内面の振り返り・内省」が希望あるMIRAI/未来を開く
私たちにとって「希望あるMIRAI/未来」というものが、どれだけ自分を支え、勇気づけ、奮い立たせてくれる位置づけのものなのか。今回は、「希望あるMIRAI/未来」を紡ぎだすための最初のステップとしての「振り返りプロセス」に関して考えてみます。
「内面の振り返り・内省」が希望あるMIRAI/未来を開く
2023年最初の投稿になります。あらためまして、本年もよろしくお願いいたします。
2019年末の中国・武漢発のコロナ騒動が丸3年以上も続き、それぞれの国・それぞれの自治体・会社、さらには個々人レベルに至るまで、いろいろな意味で学習をしてきているものの、並行して起きたロシアのウクライナ侵攻や、中国の習近平体制強化による影響などが絡みあって、本当に先行き不透明な時代の混迷ぶりがますます加速を増しているような時代を私たちは生きていかざるを得ません。
そんな不透明な時代であっても、やはり「今年1年に向けた抱負」といった表現で、人は前向きな何かに思いをはせる習性を持っているように思います。それは、私たちにとって「希望あるMIRAI/未来」というものが、どれだけ自分を支え、勇気づけ、奮い立たせてくれる位置づけのものなのかを、無意識レベルかもしれませんが、直感的に感じているからなのではないでしょうか……。
今回は、そんな「希望あるMIRAI/未来」を紡ぎだすための最初のステップとしての「振り返りプロセス」に関して考えてみたいと思います。
日本人の思考特性
有名なロシア人チェスプレーヤー、サヴィエリ・タルタコワ氏は「戦略と戦術との違い」を次のように表現しておられます。
- 「戦術」とは、することがあるときに、何をすべきかを知ること
- 「戦略」とは、することがないときに、何をすべきかを知ること
日本人は「すること・やったら良いこと」が明確な場合に、相手の特徴や分析を緻密に行い、何をすべきかを知っている時にはめっぽう強さを発揮することができます。
ところが、際立った特徴がなく、型がはっきりしない場合には、「すること」が明確に決めづらい状況になるわけで、そんな時こそ、本来は自分たちで主体的に戦略を決める必要があるはずですが、日本人にとって、この領域は必ずしも得意ではないように思います。
私が接している多くの会社や組織におけるビジョン策定や戦略立案においても、しばしば「自分で考えろと言われるより、何をしたらイイか指示をしてくれたら、ちゃんとやります」的な発言をする方がいます。日本人の特徴的な傾向を表しているのかもしれません。
それは、うまくいかなかった時に「自分で責任を負わなくてイイ。人のせいにできる」という逃げや、楽を求める気持ちが潜在的に働いているのかもしれません。
しかし、先行き不透明なVUCA時代の今日においては、そんな「こうしたら良い」といった正解なんて誰にも分からないわけで、日本人の従来の思考特性の限界を突き付けられているように思わざるを得ません。
振り返りレベルの巧拙「内省・内面の振り返り」
であれば、どうすれば良いのか……?
日本では、昔から使い古された言葉として、ビジネスマンが持つべき視点は「虫の眼・鳥の眼・魚の眼」だといわれてきました。
これは、それぞれ
- 虫の眼:目の前のものを集中して見る視点・能力
- 鳥の眼:空から俯瞰(ふかん)して全体を見る視点・能力
- 魚の眼:流れを読んで未来を見とおす視点・能力
という意味合いですが、これらはいずれも自分の外側・外界を見る眼であることに気が付くのではないでしょうか。
こうした外部の環境変化や相手の特徴を見極めて、自分たちが「するべきこと」を紡ぎだすことが得意だという上述につながっていることもご理解いただけるかと思います。それに比し「自分の内側」を見る眼、つまり「内省の眼」が軽んじられてきたツケがこうした形になって表出してきているように思います。
また、外側を見る眼は、経験を積むことで能力的に向上するかもしれないですが、自分自身を見つめる内省する眼は、年齢や経験を重ねるごとに言い訳や自己弁護が上手になるばかりで、真実の自分の姿を見る眼が曇っていく特徴を持っているのかもしれません。
そういう意味で、内省を前提とした「振り返りレベル」がその人・企業の成長を決めていると言ってもイイくらい、「振り返りの仕方の巧拙」が大切なのではないかと思います。
「振り返りレベル」の分類として、下記のような区分があります。
- レベル1
[結果の振り返り] - 出来事や事実・結果についての振り返り。
事実を正しく、客観的に捉えるという意味で重要だが、経験を学びに発展させるのは難しい。 - レベル2
[他責の振り返り] - 他者や環境のせいにしがちな振り返り。
こうした視点で原因を求めても、未来を変えるヒントを得ることは難しい。
(例)「指導に時間を費やしているが部下が育たない」は部下の問題にすり替えてしまっており、状況を変えるには自身の関わり方や指導に関する振り返りが必要。 - レベル3
[行動の振り返り] - 自分の行動に対しての振り返り。
自らの行動を振り返り、結果と結び付けることで、次に取るべき行動が見えてきます。そこで、行動を振り返っても、あるいは次の行動を変えても解決しない場合には、その行動の前提にある自分の内面に意識を向ける必要があります。 - レベル4
[内面の振り返り] - 自分の内面に対する振り返り。
自分の行動の前提にある自分の考え方を俯瞰する必要があります。人は「こうすればうまくいくはずだ」と思っている自分の前提となっている考え方を掘り下げなければなりません。
「希望あるMIRAI/未来」を紡ぎだす
私たちは、どのレベルで振り返りを行い、未来を紡ぎだそうとしているのでしょうか……。
「レベル4:内面の振り返り」に関しては、その意味解釈すらできない方も少なからずいるような気がするほどで「レベル1、もしくは2」でとどまってしまっているケースが多いように思います。
もちろん、「レベル3:行動の振り返り」ができるようになりたいわけですが、今後はそれ以上に「レベル4:内面の振り返り能力」が求められているのではないかと思います。
そして、このことが、最近はやりのキーワードの一つ「マインドセット」の中でも「グロース・マインドセット」と呼ばれているのではないでしょうか。
あらためて、この不透明な時代の中で、新しい世界に出会うには、自らの過去から培ってくることで無意識に形成されてしまっている「前提条件・固定概念・見方・視点を変える」に向き合う「グロース・マインドセット」がないと、「希望あるMIRAI/未来」という世界の扉は開かないのかもしれません。
今後もよろしくお願いいたします。
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