第123回 Lead the self(自分を導く)

「組織で働く」ということに対して、いま一度再確認すべき「Lead the self」(自分を導く)の考え方を掘り下げてみたいと思います。

Lead the self(自分を導く)

皆さん、こんにちは!

まん延防止が解除され、桜の満開を迎え、少しだけでも華やいだ気持ちになりたい季節ですが、出口の見えないロシアによるウクライナ侵攻の状況はそんな気持ちを暗たんたるものに引き戻し、企業の経済活動にも大きな影響が出ています。

そんな社会情勢の中でも、多くの会社で新入社員の新社会人としての生活が始まった時節柄なのか、最近は「今後の社会の中で生きていくために求められるマインド」的な視点の書籍が多いように思います。

今回は新社会人のような若い人たちだけでなく、既に会社に勤めているビジネスパーソンにとっても「組織で働く」ということに対するこれまでの自分の考えを見直し、改めて再確認すべき「Lead the self」の考え方を掘り下げてみたいと思います。

人間中心の人的資本投資

2022年3月15日の日本経済新聞「エコノミクス トレンド」に上記表題で東京大学教授・柳川範之氏のコラムが掲載(一部抜粋)されていました。

人間中心の人的資本投資を

人的資本あるいは人的資産の重要性について、メディアなどで取り上げられることが多くなっている。~中略~今まで労務コストとしてみなされてきた、人材に対する教育訓練などの支出を、将来、より大きなリターンを生み出す人的資本への投資と捉え直す。この発想の転換が起きつつあるのは、重要な変化だ。~中略~この、辞める自由があるという点は、やや大きな論点を我々に提示する。今までの議論でもそうだが、我々はどうしても、企業という大きな箱の中に物的資本と人的資本が存在し、それをどう組み合わせ、どううまく活用して企業収益をあげるかという発想で考えがちだ。しかし、この発想自体が時代に合わなくなっているのではあるまいか。

辞める自由のある人的資本は、企業の箱の中に納まっているとは限らない。また、兼業や副業が増えてきている状況においては、一つの箱の中にとどまるのではなく、複数の箱をまたいで存在する人材も増えてきている。

そう考えると、これからの時代に必要なのは、企業を主語にし、企業という箱の中をいかにうまく組み立てるかという発想ではなく、人を中心・主語として考え、その人的資本ができるだけ活躍し、できるだけ価値を生み出すためには、どのような場が必要かという観点だろう。
~中略~
さらに言えば、そもそも人は企業のために存在するわけではない。企業の中で活躍をし、高い賃金や報酬を得ることは豊かな生活をするために重要であり、多くの場合、必要不可欠だったりする。しかし、それは物心両面で豊かな生活をするためのあくまでも手段であって、目的ではない。

ここで記載されているように、「企業に於(お)ける人的資本」、平たくいえば「一人一人の従業員」に関する考え方を大きく見直さざるを得ない時代になっています。

もちろん、企業側の考え方や取り組みも変えていかないといけないわけですが、同時に従業員の側も今までの“常識・当たり前”を見直していかないといけません。

「Lead the self」の考え方

以前から「リーダーシップ」に関する研究や書籍は数多(あまた)ありますが、最近もこの分野の関連資料は変わりないかと思います。

一方で並行して、「働く従業員一人一人の考え方・マインドセット・姿勢」に関する書籍なども急激に増えているように思います。下記に一部をご紹介させていただきます。

  • 『だから僕たちは、組織を変えていける』著:斉藤徹 刊:クロスメディア・パブリッシング
  • 『働き方の哲学』著:村山昇 刊:ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 『「組織のネコ」という働き方』著:仲山進也 刊:翔泳社
  • 『FREE, FLAT, FUNこれからの僕たちに必要なマインド』著:伊藤羊一 刊:KADOKAWA

これらの中での論調の本質というか根っこの部分では

  • 自分自身の価値観を知る
  • 自分に忠実である

といった点で共通しています。

中でも、「これからの僕たちに必要なマインド」の中では、明確に「Lead the self」という表現を使っています。「Lead the self」、すなわち「自分を導く」は、「自分はどうありたいか?」を明確にするということになり、上述の2点を実践するうえでの前提条件ともいえるのではないでしょうか。

もともと、「Lead the self」という概念は、『リーダーシップの旅 ~見えないものを見る~』(著:野田智義・金井壽宏 刊:光文社)の中で紹介をされています。
ここでは「Lead the self」を下記のように説明しています。

リード・ザ・セルフを駆り立てるものは、人それぞれだ。夢や大望、情熱と言う場合が一般的に期待されるケースかもしれないが、そればかりではないだろう。焦燥感、野心であることもあれば、自分自身に規律をはめるプロフェッショナリズムの場合もあるかもしれない。いずれの場合も、リード・ザ・セルフの力の源になるのは、何のための行動するのか、何のために生きるのかについての自分なりの納得感のある答えだ。

  • * 『リーダーシップの旅 ~見えないものを見る~』(著:野田智義・金井壽宏 刊:光文社 p.52から抜粋)

つまり、役職や経験、年齢、性別といったものを問わず、「自分はどうありたいか?」という問いは、全ての人が持ち得る問いであり、それに対する「自分なりの解」を持つことが、「Lead the self」を実践することにつながるということになります。

同時に、以前のように「会社からの指示や期待に素直に応えること」でビジネスパーソンの機能を果たせた時代から、この「自分をどこに導きたいのか? どうなりたいのか?」の解を持っていなければ、企業側が「人間中心の人的資本投資」をしてくれたとしても、立ち往生してしまうかもしれません。

日本でいちばん大切にしたい会社

先日発表された第12回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞で、中小企業庁長官賞を受賞した東海バネ工業株式会社という会社があります。

先代社長(現顧問)の渡辺良機氏とは何度もお話しをさせていただき、常に刺激を受けてきましたが、この方が社員の皆さんに発していたメッセージは

  • 会社にとって、都合の良い社員になんかなるな
  • 会社のために働くな、会社は社員のために在るんや

でした。

一人一人のビジネスパーソンが、「Lead the self(自分を導く)」マインドで、この激動の社会の中で「どうあることが、自分にとって幸せなのか?」という羅針盤を持ち、その羅針盤の指し示す方向に向け、前向きに仕事に向き合える社員こそが、今後の企業にとって必要な「人財」なのではないでしょうか。

そして、そうした「人財」こそが、前回ご紹介した「ダイナミック・ケイパビリティ」の実践者になるのだと思います。

今後もよろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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