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第57回 学習する組織「メンタルモデルの克服」
皆さん、こんにちは!
ブラジル・リオデジャネイロオリンピックも懸念されていたような事件やテロもなく、無事に閉幕しました。どの競技・種目もそれぞれ各選手が奮闘し、ドラマがたくさんありましたが、皆さんはどんな競技・種目に興味を持たれたでしょうか。
私は、どうしても選手とコーチ・指導者との間のドラマや信頼関係、チームとしての成熟した人間関係のようなものに興味をそそられてしまうようです。
だからというわけではありませんが、最先端の組織の在り方として有名な、MIT(Massachusetts Institute of Technology:マサチューセッツ工科大学)上級講師のピーター・センゲが提唱した「学習する組織」について、今回はそのキモの部分を紐解いてみたいと思います。
「学習する組織」
「学習する組織」の特徴は、システム論、認知行動科学、組織論、動機付け・心理学、成人教育学、リーダーシップ論などの科学的知見をベースにしながら、実践を重視し、個人と組織との学習能力を相互に発展させることによって組織の健全性と有効性を高めることにあります。
と学術的表現は堅苦しく、何を言っているのか良く分からないかもしれませんね。極めて端的に表現するとしたら「組織に属する人が、その人らしく、かつ人間性を損ねることなく、組織目標に高いやりがいを感じることができ、お互いが尊重しあえる組織」ということでしょうか。
21世紀に入って、既に15年以上も経った今日でさえ、多くの企業では官僚主義的、あるいは上意下達的マネジメント、言われたことさえしていれば良い的な労働観・職業観が蔓延している現実は否めず、「学習する組織」が提唱していることが実践されているケースは一握りのような気がします。
「学習する組織」の重要な構成要素
前述の通り「学習する組織」が「組織に属する人が、その人らしく、かつ人間性を損ねることなく、組織目標に高いやりがいを感じることのできる、お互いが尊重しあえている組織」だとするならば、その状態を創るための構成要素として、下記の五つが必須条件とされています。
- 自己マスタリー
自己の人生におけるビジョンと現状の差を明確に認識し、そのギャップを埋めるべく、継続的に自己の能力向上に取り組むこと。 - メンタルモデルの克服
個々人が無意識に抱いている固定概念やイメージ・思考の傾向を自覚し、それに囚われない見方ができるようになること。 - ビジョンの共有
将来の姿を構成員全員で共有すること。 - チーム学習
チーム単位で対話を行いアイデアを出しあうことで、ディスカッションを通じて協働してチームの能力を向上させていくこと。 - システム思考
あらゆる物事・事象を相互に関連したものとして捉えることで、一連のシステム(部分と全体)として理解する考え方。
おのおのが非常に重要で、かつ必ずしも簡単なことではないと思いますが、個人的には何よりも難しいのは「2.メンタルモデルの克服」ではないかと思っています。
何しろ「個々人が無意識に抱いている固定概念」を自覚し、それに捉われないようにする必要があると言っているわけです。
そもそも「無意識」なわけですから、自覚的にすることが難しいのは当然です。いわゆる、顕在的意識・認知脳ではなく、潜在意識部分を自覚的になる必要があります。
これには、内省や自己洞察といった「振り返り」が必要になりますが、そんな機会はあえて持たない限り、普段の生活の中では無縁な取り組みではないかと思います。
内省・自己洞察を深める
ドラッカーは、その著書の中で下記のように言っています。
「自らをマネジメントするためには、強みや仕事の仕方とともに、自らの価値観を知っておかなければならない。組織には価値観がある。そこに働く者にも価値観がある。組織において成果を上げるためには、働く者の価値観が組織の価値観になじまなければならない。同一である必要はない。だが、共存できなければならない。さもなければ、心楽しまず、成果も上がらない。」
自分自身のメンタルモデル、いわゆる「自分自身の思考のクセ」を認識しない限り、それを克服することはできません。
このことは、社員一人ひとりにも言えることであり、求められますが、もちろん、リーダーである経営者ご自身もこの例外にはありません。
私たち経営者自身の「メンタルモデル」が、「組織の思考のクセ」を司っていることを肝に銘じて、自らの「メンタルモデルの克服」に向き合っていく必要がありそうですね。
今後も、よろしくお願いいたします。
次回は9月14日(水)更新予定です。
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