第76回 「目的思考」の難しさ

新入社員が学生から社会人になるという人生の転換のステージにおいて、彼ら自身は何が一番変わるのでしょうか? 大きな変化の一つに「社会・会社での解決すべき問いには正解がない」ということが挙げられるのではないでしょうか。今回は、そんな「正解がない問い」と向き合うときに陥りがちな心理的な罠と、本来あるべき思考に関して考えてみたいと思います。

「目的思考」の難しさ

新入社員の初々しい姿が多く見られる4月も後半を迎え、行楽日和が続き、どことなく華やいだ空気の流れる良い季節になりました。

前回は「採用」をテーマにいたしましたが、新入社員というのは、その存在だけで職場の雰囲気を変えるものですし、社内活性化の意味では大切ですね。

学生から社会人になるという人生の転換のステージにおいて、彼ら自身は、何が一番変わるのでしょうか?

いろいろな変化があると思いますが、大きな変化の一つに「社会・会社での解決すべき問いには正解がない」ということが挙げられるのではないでしょうか。

今回は、そんな「正解がない問い」と向き合うときに陥りがちな心理的な罠と、本来あるべき思考に関して考えてみたいと思います。

あるワークショップでの経験

先日、あるワークショップで「そして父になる」というものを体験しました。

「そして父になる」は福山雅治氏主演の映画ですので、ご覧になった方も多いかと思いますが、「赤ちゃんの取り違え」をテーマに「家族のあり方」を問いかけるメッセージ映画です。

その映画のテーマを題材に、子供が6歳になるまで何も知らずに育ててきた段階で「取り違え」の事実を知った際に、どんな葛藤があり、どうすることが良いのか? を考えるまさに「正解がない問い」に関するワークショップです。

具体的には、数人のグループに分かれ、それぞれ野々宮家、斎木家という赤ちゃんを取り違えられた家族になったと想定して「今後、どうすれば良いか?」を議論し、相互に自分たちのグループの見解を明示し、最終的には、お互いのグループとしての合意点を探るという内容です。

利益代表としての思考の限界

このワークショップには幾つかの狙いがあると思いますが、実際に参加した方の多くは、仮想とはいえ「〇〇家」を代表していますので、

  • 〇〇家の者として
  • 〇〇家の父親として(もしくは母親として)
  • 〇〇家の子供として育てられた□□君の気持ち
  • その□□君の将来を考えた際の視点……

等々に立脚した検討・議論が多かったように思います。

しかし、こうしたそれぞれの利益代表の立場からの視点でいけば、どんなにいろいろ考えても、相互に異なる立場ですので見える景色が違うわけで、当たり前ですが、見解が合意に至ることは難しいという結果になりがちです。

このときに感じたことは、それぞれの立場や役割は明らかにあるわけですが、そもそも「目的は何なのか?」「全ての関係する人にとっての理想の状況はどういう状況なのか?」を起点にした「目的思考」で考えないと解決しないのではないか……という点です。

このケーススタディでいえば「赤ちゃんを取り違えた」という事実は変えられることではなく「所与の条件」として「受け入れざるを得ない事実」です。それを飲み込んだうえで「お互いの家族を含めて、みんなが幸せになる」ことが「目的」であり、そのためにどういう手段がとれるか? の視点で考える必要があるとの合意に至りました。

それを実践していくには、双方が相応の「痛み」を伴うでしょうし、本当に上手くいくのかどうかの保証もありません。

でも、それをも理解したうえで、つまり「覚悟」を決めて、そこに向かう努力を惜しまないことに立ち向かうしかないのではないかという話になります。

仕事の現場において「構造的」に考える

これは、経営においても全く同じロジック・構造を当てはめることができるのではないでしょうか……。

つまり、営業・開発・製造といった、あるいは経営者・管理職・一般従業員といったそれぞれの立場や役割は間違いなくあるわけですが、そもそもの「目的」は何なのか?

「顧客に対する価値提供」であったり、「社員が幸せになること」であったり、「目的」を追求するためにそれぞれの立場では「苦労や痛み」を伴うかもしれませんが、それをお互いに理解し、乗り越えるための協力に対する覚悟があるのかどうか……。

「経営とは“見えない未来”に対する意思決定」という表現があるようですが、だからこそ、「自社の目的・何を目指し、どこへ行こうとしているのか?」を明確にし、それに対して本気でコミット・覚悟している社員がいるのかが問われるのではないでしょうか。

経営者の立場の皆さんにとってごく当たり前のことかもしれませんが、それぞれの役割や機能をあてがわれている立場の社員にとっては、その役割・機能を全うしようとすればするほど、「そもそもの目的」を見逃した思考に陥りがちかもしれませんね。

今後とも、よろしくお願いいたします。

次回は5月16日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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