第157回 野中郁次郎氏から学ぶ

時代の転換期を生きているという認識に基づいて、改めて「知の巨人」と呼ばれていた一橋大学・野中郁次郎氏のメッセージの本質から、私たちの経営の在り方を紐解いて考えてみたいと思います。

野中郁次郎氏から学ぶ

皆さん、こんにちは。

2025年に入り、アメリカではトランプ大統領体制がスタートし、いろいろな意味で時計の針を逆戻りさせている感さえすることが現実になってきています。

特にパリ協定からの離脱や、多様性に対する見解・認識、ガザのアメリカ所有発言などを見ていると、これまで人類が知恵を絞って積み上げてきたコンセンサスを簡単に壊しかねないという懸念を抱いてしまいます。「民主主義」そのものが、歴史上にも残るような大きな転換期に差し掛かっていることを感じざるを得ません。

日本国内でも、昨年末に経営学者・加護野忠男氏が亡くなり、年明けには「知の巨人」と呼ばれていた一橋大学・野中郁次郎先生の訃報があり、やはり時代の変わり目・節目を感じさせられます。

こんな時代の転換期を生きているという認識に基づいて、改めて野中郁次郎氏のメッセージの本質から、私たちの経営の在り方を紐解いて考えてみたいと思います。

野中郁次郎氏のメッセージの本質

私が「野中郁次郎」という方を知ったのは、「ナレッジマネジメント」という単語がバズり始めた1990年代初頭でした。その頃に会社から「ナレッジマネジメントはビジネスになるのか?」というお題を受け、いろいろ調べていく中で、野中郁次郎先生の著書『知識創造企業』に出会い、衝撃を受けたのがスタートでした。

また、同じ時期に柴田昌治氏著書『なぜ会社は変われないのか』にも出会い、企業風土改革に対する私自身の問題意識が明確になり、野中先生に没頭していった時期があります。

私は『知識創造企業』で野中氏を知りましたが、さらに以前に、今でも読み継がれている『失敗の本質』があります。

その中で野中氏が指摘しているのは、「空気による支配・縦割り組織の弊害・異質性の排除」といったことが旧日本軍が失敗を重ねた真因とし、これは日本企業の経営に於いても同じロジックが横たわっていることを警鐘的に指摘しています。

これらの野中氏の思考の本質には「どのような組織活動も、他者との関係性の中で意味を見出す人間による営みに他ならない」ということがあるのではないかと思います。

「ヒューマナイジング・ストラテジー論」

野中郁次郎名誉学長 x 沼上幹新学長対談 日本変革へ「見抜く力」養成 経営アカデミーで「知の格闘」を(公益財団法人 日本生産性本部 経営アカデミー)

映画「小学校 ~それは小さな社会~」

とある方の推薦もあり、映画「小学校 ~それは小さな社会~」を見ました。

映画「小学校 ~それは小さな社会~」公式サイト

日本人の私たちにとっては、何の変哲もない小学校の生活を通じた子供たちの感情や成長を表現したものですが、サイトトップに記載されている「私たちは、いつどうやって日本人になったのか?」を考えさせられる内容でした。

同時に、小学生の時代には多くの子供たちが無意識のうちに実践できている、野中氏が指摘する「知的コンバット」が、どこかのタイミングからフェードアウトしていっている現実を考えさせられる内容でもありました。

公立小学校という、多様な環境の多様な子供たちの中で大人になっていく一方で、日本社会、もしくは教育制度が「同じような価値観・境遇」、つまり「みんな同じ」を是とし、人との「違い」を「間違い」としてしまう空気・風潮は、実は私たち大人側の価値観の強制の影響なのかもしれません。

選挙制度を含め、制度がテクノロジーの進化スピードについていけず、SNSによる誹謗中傷なども大きな社会問題にまでなってしまうほどの現代社会だからこそ、野中氏が指摘している「他者に共感し、他者の視点に立つこと」が重要になってくるように思います。

少なくとも、経営者である方々には「一緒に働く仲間としての社員」に対して、そんな思考性・見方で接していかなければ、「空気による支配・縦割り組織の弊害・異質性の排除」を脱却できないということではないでしょうか。

引き続き、よろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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