第156回 「AIと人間との協働」を考える

年を重ねていくと、「光陰矢の如し」とは本当に言い得ており、時間の経過が異様に早くなっていくように感じます。「AIと人間との協働が始まる年」ともいわれる2025年、どのように考えていくのか? を踏まえながら、新しい刺激の切り口を考えてみたいと思います。

「AIと人間との協働」を考える

皆さん、新年おめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

年を重ねていくと、「光陰矢の如し」とは本当に言い得ており、時間の経過が異様に早くなっていくように感じます。これがミハイ・チクセントミハイの「ゾーン状態の特徴」として指摘している「夢中による時間の歪み(ひずみ)」であれば、成長の真っただ中とも解釈できるのですが、どうやらそれとも少し違う感覚のように思います。

一般的には「相対的な新たな経験量の低下」、つまり、新しい経験や出来事は時間を長く感じさせることがあるそうで、子供の頃は新しいことが多く、毎日が新鮮で1日が長く感じられます。しかし、大人になると同じような日常やルーティンが増えるため、時間の経過が早く過ぎ去るような感覚になることが増えていくというようなことがいわれているようです。

だとすると、私は「新たな刺激が少なくなっている」ということもいえるわけですので、「AIと人間との協働が始まる年」ともいわれる2025年、どのように考えていくのか? を踏まえながら、新しい刺激の切り口を考えてみたいと思います。

「AIと人間との協働」とはどういうことか?

そもそも「AIと人間との協働」とは、どういうことを指しているのでしょうか。昨年11月のニュースで下記のようなものがありました。

パナソニックHDとPHP研究所が生成AI技術を活用した「松下幸之助」再現AIを開発(PHP研究所)

「AIと人間との関係は将来どうなるのでしょうか?」といった今回のお題の問いをぶつけると、「松下幸之助ならどう考えるのか」「松下幸之助ならどのような経営判断を行うのか」といった示唆を提供できる人物再現AIを目指しているそうです。
上記の記事には、下記のようなコメントもあります。

パナソニックグループは人間を中心にした「責任あるAI(Responsible AI)」の考え方のもと、常に対象となる"人とユーザー"を尊重し、人を中心にした開発プロセスを実践しています。

上記は、既にAIは単純にスピードや精度を争う領域から、「責任あるAI」のように、そのテクノロジーに対する企業の姿勢やスタンスを明示的にすることによる差別化の時代になってきているということではないかと思います。

また、ユニリーバ傘下の「Dove」も下記のような姿勢を明らかにしています。

“AI美女”を広告に起用しない ユニリーバ「Dove」はなぜそう決めたのか(ITmedia マーケティング)

これも「リアルビューティー/本物の美しさ」を掲げているDoveにとって、AI美女は「最大の脅威」の一つとして位置付けての姿勢だと考えられます。
つまり「AIと人間との協働」とは、そのAIを扱う私たち人間側の問題であり、私、もしくは私たちの価値観の所在を明示的にすることによって、どの領域で、AIの恩恵を受け、どこを人間としてのこだわりにするのかを擦り合わせることなのかもしれません。

AIが進化しても変わらないかもしれないこと

VUCA時代といわれ、民主主義さえも揺らいでいる時代ですので、断定的なことは何も言えない時代になっています。逆に言えば、私たちは「不確実なことが起こる覚悟」を持っておかないといけないのだと思いますが、なかなか変われないのも人間の本質として潜んでいると思います。そういう意味でAIを含めたテクノロジーの発展は加速度を増すばかりだとは思う一方で、人間側の受け止め方の方が大きい問題なのではないでしょうか。

AIは今後ますます間違いなく、「正論・正解」を明示してくれるようになっていくことは確実だと思いますが、その「正論・正解」を知り、あるいは、突き付けられた時に人は必ずしも動くとは限らないのではないでしょうか……
AIに「正論・正解」を提示されて、そのとおりに動いてしまう人間ばかりになってしまえば、それこそ、「人がAIの奴隷・下僕」になってしまうことを意味していますし、恐らく多くの判断に何の違いも生まれないような「みんな一緒」の無味無臭な社会になっていってしまいます。

さらにそれが前提になってしまうと、「人と違う」状態を「アイツ、間違っている」と誰かを否定し、分断社会を助長していくことになってしまうのではないでしょうか。
やはり人間には、それぞれの人が育った歩みや歴史・経験を踏まえた価値観・感情・思いといったものによって形成されていくわけですので「みんな一緒」であるはずもなく、「みんな違う」を前提に受け入れることができる、つまり「お互いを認め合う」状態を今まで以上に強く意識・認識しておかないと、ヘタをすると「テクノロジーの奴隷」になってしまいかねないような気がします。

となると「AIと人間との協働」というのは、実は人間側の私たち個々人が、「自分は何者か? どうありたいのか? 何を大切にするのか?」を研ぎ澄ませていく、それに向けた取り組み・活動が新たな刺激を増やすための前提条件になってくるように思いませんか……

本年も引き続き、よろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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