第155回 今こそ問われる「人間が失ってはいけないこと」

時代は変わり、テクノロジーの発展と共に価値観も多様化していることは紛れもない事実だと思います。今回はテクノロジーの発展と人間に対する功罪を含めた影響を考えてみたいと思います。

今こそ問われる「人間が失ってはいけないこと」

こんにちは!

最近は「師走」という表現もあまり使わなくなってしまったような気がしますが、師走といえば、年末恒例の「流行語大賞」。今年は大ヒットTVドラマ「不適切にもほどがある!」の「ふてほど」が選ばれました。

私のような世代の人間には、まさにそんな時代を何も疑わずに生きてきましたので、今考えると、信じられないようなことが多々あったように思います。そんな今年は、昭和99年にカウントされるそうで、来年の昭和100年に向けたカウントダウンに入ってきました。

確かに時代は明らかに変わり、テクノロジーの発展と共に価値観も多様化していることは紛れもない事実だと思います。しかし、だからといって「昭和」を全否定するのも違うように感じています。

例えば、「多様性が大事」といっている一方で、「ふてほど」の中でもあったように、組織における「マネジメントの在り方」に関しては令和時代においても結局、画一的なものを要求している側面もあり、ヒョットすると、ある意味では「昭和の同調圧力」以上のものがあるのかもしれません。

オーストラリアでは「16歳未満のSNS利用禁止の法案提出」なんて動きもあるようですが、何か関係があるのかもしれません。

参考:「豪政府、16歳未満のSNS利用を禁止する法案を提出へ」(BBCニュース)

ということで、今回はテクノロジーの発展と人間に対する功罪を含めた影響を考えてみたいと思います。

無意識の聾唖状態

先日、とある光景を見かけました。朝の通勤時、自宅の近所での光景です。駅に向かって歩いている際に、反対側から此方に向かってくる目の不自由な女性が白杖(はくじょう)を突きながら、歩いてこられました。

普段から歩いておられる道だとは思いますが、歩道のない道でしたので、慎重に車の通る音に耳を澄ませて歩いているようにお見受けしました。

その時に、その女性のさらに車が通る内側を、若い女性がスニーカーで闊歩(かっぽ)しながら追い越そうとしました。

「危ないッ!」私は心の中で叫びました。その若い女性は、自分の後ろから来る車に全く気付かずに、その目が不自由な女性を追い越そうとしたのです。車の方が驚いて急ハンドルを切ってかわして難を逃れて、事なきを得ましたが、ヒヤッとする瞬間を目の当たりにしました。

私は「あの人、危ないなぁ……」と思って、よく見ると、耳にはイヤホン、さらにはスマートフォンを夢中になって見ているようで、自分が危ない目に遭ったことにさえ気付いていないように見えました。

そう、その若い女性はまるで「聾唖(ろうあ)」状態だったわけです。目の不自由な方は「見えない」ことを自覚しておられますので慎重に、かつ周囲の状況に気を配っていると思いますが、その方は「自分が見えていない・聞こえていない状況になっている」という認識さえも持っておられないように見えました。

SNSだけではなく、テクノロジーの便利さ・快適さに依存が過ぎることによる、こんな状況が増えてしまっているのではないでしょうか。

最近は「子供の権利」うんぬんもあり、「あなたのやりたいようにやりなさい」「スキなようにしなさい」的な子育てや教育がスタンダードになり、過度に行き過ぎて「わがまま」や「自分勝手」「自分さえ良ければ……」的な感覚がまん延してきているように思います。

さらに「●●ハラスメント」の嵐で、何も言えなくなってしまった親や上司があふれ、何かコトが起きたときには、既に手遅れになってしまっている……のようなこともあるのではないでしょうか……

極端な考え方かもしれませんが、こうした過度な個人主義の容認、SNSを含めたテクノロジーへの依存といったことが子育てや教育にも影響して、結果的に自分とは意見・考えの違う人への誹謗(ひぼう)中傷みたいなことにもつながっているようにさえ感じてしまいます。

テクノロジーによって失われている能力

そういう意味では、今の時代「慮る」という感覚が希薄になっているのかもしれませんね。そもそも「慮る」を読めない人さえ多いのではないでしょうか。私は、基本的に、人間というものは「“知らないこと”は、自覚的には“できない”生き物」だと思っています。

「慮る(おもんばかる/おもんぱかる)」を知らなければ、そういう感覚や行為を自覚的に実践することは難しいのではないでしょうか……

当たり前の話ですが「SNSの功罪」に限らず、何事にも必ず「裏表の二面」があることは厳然たる事実ではないかと思っています。

SNSはいわゆる「二項対立」を作り出すには、非常に有効な手段なのかもしれません。ただ、これでは「→分断→敵味方」となるだけであり、恐らくこれからの時代に、より求められていくであろう「対話」を通じた「融和・統合・共創」とは程遠い結果しか生まないように思えてしまいます。

さらにいえば、対立には「不健全な対立」と「健全な対立」があります。

「善と悪」「私たちとアイツら」といった相反する関係が明確になったときに起こるのが「不健全な対立」であり、ハイ・コンフリクトが生じ、「論点と関係のない揚げ足取り・思い込みによる偽りの正義・お互いの足の引っ張り合い」といった現象が起きてしまいます。

一方「健全な対立」は、私たちが成長できるように背中を押してくれ、自らを守り、互いを理解し合い、向上していくために欠かせないように思います。

今、私たちは、対話・議論を深めるようになるためにSNSなどをどう効果的に使っていくのか、大きな分岐点に立っているのではないでしょうか……

来年2025年には、ミレニアル世代とZ世代との合計が生産年齢人口の半数を超えるといわれています。
そんなデジタルネイティブが増えていく時代だからこそ、人間が失ってはいけないことを明確にしていく経営が問われるのかもしれませんね……

引き続き、よろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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