第97回 「当事者意識」と「志事」

「自分の人生の使命」を見極め、「自分の人生の当事者」になり、その使命を全うしようとする意識が「当事者意識」。そして、その「当事者意識」を持った方の仕事こそが「志事」として、精神的成熟度も、取り組み姿勢も高い次元の領域に昇華されるように思います。

「当事者意識」と「志事」

皆さん、こんにちは!

予想もしなかったコロナウイルス問題。なかなか収束がつかない状況が続いており、中国経済の減速が日本経済にも波及していますが、皆さんの会社ではいかがでしょうか。

イギリスのEU離脱も含め、世界の動向が私たちの仕事や生活にさまざまな形で影響を及ぼす時代ですが、直接的な利害・損得という形でない限り、私たちの脳はその変化や動きを、なかなか「自分事」として認識できないことが多いように思います。

地球環境問題を含めた世界情勢といった大きなテーマではなく、私たちが生きているビジネスシーンにおいても、同じです。

例えば、年明けに三菱電機株式会社がサイバー攻撃の脅威「Emotet(エモテット)」の被害に遭った件でもそうであったように、会社が実際に被害を受けない限り「セキュリティ環境整備」が軽んじられがちな状況も、そんな典型例の一つではないでしょうか。

結局私たちは、世界といわないまでも、自分が自分の身の回りに起こる出来事の「当事者」であると考える「アダプテーション(適応)能力」が低いということになります。

この事実は、私たちにとって致命的欠点ともいえるのではないでしょうか……。

ということで、今回は「自分事として認識する力」、すなわち「当事者意識」に関して考えてみたいと思います。

為末大氏の「当事者になるつもりがない人」

元陸上選手の為末大氏のブログに興味深い記載があります。
Dai Tamesue’s THINK ~当事者になるつもりがない人

この文章の中に以下のような表現があります。

~前略~
当事者になるつもりがない人は愚痴が多い。愚痴の原因をほったらかしているのも、解決できるかどうかも全ては自分にかかっていると思っていないから、愚痴が多い。下手すると自分の人生まで愚痴を言っている人がいる。自分の人生の当事者にすらなっていない人が何かの活動の当事者になれるはずがない。こういう人はこんな自分に誰がしたと思いながら生きているから、自分で自分の人生を変えられるとすら思っていない。
~中略~
難しいのは、自分は当事者意識がなかったということに気づくのは、当事者としてある程度の意識が芽生えた時でしかないということだ。つまり当事者として考えていない人も、自分は当事者意識を持っていると思って生きている。
~後略~

自分の人生の「当事者」

上記の中でも「自分の人生の当事者にすらなっていない」という表現は厳しい指摘ですね。「そんな人はいないだろう」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、私が行っているワークショップでも、必ずしも「人生の当事者になっている方」ばかりではないような気がします。

もちろん「ご自身の人生で『こうなりたい』と思っていることを、第三者に『こっちの方がイイよ』と言われて、人生のハンドルを勝手に切られることはどうですか?」と質問させていただくと、誰もが「そんなのはイヤだ」と答えられます。

ところが「ではあなたは何を大切にした人生を送りたいとお考えですか?」とか「ご自身が一番大切にしている価値観は?」と伺うと、明確に言語化できる方は多くはありません。

まして、ご自身の人生の時間の多くを費やす「仕事」を通じて考えていただく、ご自身の人生において大切にしている価値観「働く目的・意義」については、非常にあいまいなケースが多いように思います。

もちろん「生活をするための収入を得るため」というのは、大きなファクターであることは事実ですが、新約聖書『マタイによる福音書』第四章にあるイエスの言葉で有名な「人はパンのみにて生くるものにあらず」で表されるように、その人の人生において、仕事に対する適切なインセンティブではないことはご理解いただけると思います。

仕事に対する「当事者意識」

仕事に対する取り組む姿勢をもじって「私事(わたくしごと)」→「仕事」→「志事(こころざしごと)」と表現することがあります。

  • 私事:自分のための仕事になっている。自分の損得が基準。
  • 仕事:会社やお客様のために仕事をしている。「会社に対する損得」が基準ですから「お客様への貢献」が基準の方が望ましい。
  • 志事:社会のために仕事をしている。社会への貢献が基準。

これはイソップの『三人のレンガ職人』という寓話(ぐうわ)で代表される有名な話ですので、多くの方がイメージできると思います。

英語ではこれが以下のように明確に区分された単語で表現されています。

  • 私事:Labor/労働
  • 仕事:Work/仕事
  • 志事:Mission/使命

つまり「自分の人生の使命」を見極め、「自分の人生の当事者」になり、その使命を全うしようとする意識が「当事者意識」といえるのではないでしょうか。

そして、その「当事者意識」を持った方の仕事こそが「志事」として、精神的成熟度も取り組み姿勢も高い次元に昇華されるように思います。

皆さんの会社の従業員の方々は、どのような意識の方が多いですか……。

今後も、よろしくお願いします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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