第102回 「成熟度を高める」ということ

今後、企業も個人もますます「多様化」していくことは間違いないと思います。そんな時代の流れの中で、経営者が深く考え、その“志”を共有する従業員と共に、確実に歩みを進めていくことが「成熟度を高める」ということかもしれません。

「成熟度を高める」ということ

皆さん、こんにちは!

「withコロナ」の時代として「新しい生活様式」への対応が否応ない状況の中で、私たちのビジネスも大きく変容を始めています。富士通や日立製作所のように在宅勤務を標準とした働き方に移行する企業があれば、カルビーのように単身赴任解除の方向にまで、舵(かじ)を切る会社がある一方で、伊藤忠商事のように原則出社に戻す企業も。働き方一つを取っても、それぞれの企業の特性・考え方に基づいた判断が問われ、横並び一線がスタンダードだった日本のビジネスシーンは多様になっていくことが想定されます。個人の働き方・生き方も同様で「多様化」は不可逆的な流れになっていくと思われます。

一方では、「自粛警察」や「消毒警察」といった数カ月前までは想像さえしていなかった単語が一般的に使われるようになったように、個人の価値観や正義感の押し付け・押し売りが横行している現実もあります。

世の中が多様化していく流れの中で、片方では画一的な価値観の強要が進んでいく……何だか、個人の幼稚化が進んでいるようにさえ見えかねません。この相矛盾するような事実をどう考えればよいのでしょうか。

ということで、今回はあらめて「成熟度を高める」ということを考えてみたいと思います。

「成熟」という名の「成長」

実際のビジネス社会では「成長」という表現は一般的ですが、「成熟」という表現はあまり使われないのではないかと思います。

「企業の成長」といえば、一般的にイメージするのは、売上や利益といった規模の拡大をはじめ、経常利益、取引数、利益率にROE等々が挙げられると思いますが、「企業の成熟度」といえば、何をイメージされますでしょうか……。

トヨタ自動車・豊田章男社長のトヨタイムズで紹介されている新年挨拶・株主総会等での発言は大きな注目を浴びていますが、数年前から同氏は「生産台数を追わない」という姿勢を取り続け、あくまで「良い車造り」を追求する結果として販売台数がついてくる、という考え方を貫いておられます。

トヨタイムズ

そして、「木の年輪はあるところで急に成長しても、そこは非常に弱いものになる。年輪は毎年毎年、持続的に同じ幅でやっていく(作られる)ことで強い幹に成長する」という趣旨の発言を繰り返しておられます。

この考え方は、長野県伊那市に本社を構える伊那食品工業・最高顧問/塚越 寛氏の「年輪経営」に傾倒され、影響を受けているといわれていますが、トヨタイムズ「継承者/創業者の原点を考える」というインタビュー記事の第1回に、その塚越氏が登場しているところにも、その想いは表れているように思います。

特集|第1回 「私たちはどうあるべきか」~How to beの追求~|トヨタイムズ

上記インタビュー記事の中でも、

間違った成長のために何かを犠牲にするような事をしてはいけない。~中略~ 急成長は続かない。会社を大きくすることが使命だと、あまりにも思いすぎている人が社長になると、大事なものや伝統を忘れてしまう。年輪経営を定着させればそういう事が無くなる。

とコメントされています。

つまり、そこで働く従業員一人一人の人間の成長スピードを上回るような企業の成長スピードでは長続きしないということを指しているわけです。このことは「企業としての“成長”ではなく“膨張”」ということになります。

ではここでいっている「従業員の成長」とは何を指しているのでしょうか……。

人としての「成熟」

エンジニアとして、最初は何もできなかったことができるようになってきた。営業が、経験を積んで営業のノウハウを高め、実績が出せるようになってきた。製造の方が、何も作れなかったことが精度よく、確実にスピーディーに作れるようになった……。

これらはもちろん「成長」ですが、あくまでも「働くためのスキル・ノウハウ」の部分であり、「人間として」の考え方や視点ではありません。

このことを塚越氏は下記のように仰っています。

いかに他人のためになるか、「ありがとう」って言われるようになるか。今は感謝という言葉を忘れている。感謝と「幸せ」は本来イコールなのに。~中略~ どう生きると正しいかって社員に問い直す、そういう事をやっている会社ってあまり無い。みんなスキル教育ばかり。

つまり、「“人としての考え方”をどう高めていくか?」が成熟度の話につながってくるのではないでしょうか。このことは、短い時間軸の刹那(せつな)的な、本人にとっての「損得・正誤」ではなく、長期的な視点に基づいた社会や会社にとっての「善悪」という軸を持つことを指しています。

「仕事を通じた成熟度を高める」ということは「スキルとしての成長」ではなく、「“人”としての精神的成長」を意味するのではないでしょうか。

「“人”としての精神的成長」を実現することができれば、多様な人たちがいる社会の中で共創を通じた新たな価値創出を思考できるようになり、誰かを敵にして、自分自身の思考の正当性や正義感を押し付けるような短絡的・直線的な思考に留まることは減っていくのではないかと思います。

資生堂・魚谷雅彦 代表取締役社長のコメントから

先日、7月6日付け日本経済新聞/夕刊の「あすへの話題」に資生堂・魚谷雅彦社長のコラムに下記のような記述がありました。

世界で勝つ会社に必要なのは社員のダイバーシティー(多様性)だ。こういうと「違い」に焦点が当たりがちだが、ズームインすれば多様な中に、人として共通のものが見えてくる。仕事を通じて社会に貢献したいという「志」だ。経営者として一人ひとりの「志」を大切にしたい。

つまり「“成熟”という名の“成長”」は「多様な中で、共通した“志”」を見出すことで実現できるのかもしれませんね。

今後、企業も個人もますます「多様化」していくことは間違いないと思います。そんな時代の流れの中で、私たち自身が、どのような企業になっていきたいのか? どのような経営を目指すのか? をトップである経営者が深く考え、その“志”を共有する従業員と共に、確実に歩みを進めていくことが「成熟度を高める」ということなのではないでしょうか……。

今後もよろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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