第103回 自己と「向き合う力」

人の考え方・受け止め方が多様化する世の中だからこそ、自分の“志”を見極めることが難しくなっているのかもしれません。今回は改めて「自己と向き合う力」に関して考えてみたいと思います。

自己と「向き合う力」

皆さん、こんにちは!

第2波とも思える「新型コロナウイルス感染症拡大」が続く中、お互いの総領事館閉鎖に表される米中関係の緊張化に加え、毎年日本各地で起こる「数十年に一度の大雨」による被害など、今まで想像できなかったことを次々と目の当たりにする現代社会。それでも、日々経済活動を回さないわけにもいかず、そのバランスの取り方が難しくなっています。

人の考え方・受け止め方はますます多様化し、何が正解かは誰にも分からない時代になっています。

前回「“成熟”という名の“成長”は、多様な中で、共通した“志”」ではないかという一つの仮説を提示させていただきましたが、多様化する世の中だからこそ、自分の“志”を見極めることが難しくなっているのかもしれません。

先日、97歳で亡くなった台湾の元総統・李登輝氏は、2015年の日経ビジネスインタビューの中で

「私は誰か」「人生はどうあるべきか」と早くから考える早熟な少年でした。

とおっしゃっていたそうですが、この「自己概念化」は、必ずしも簡単なことではないようです。

台湾民主化の父・李登輝氏の遺言「大切なことは武士道にある」(日経ビジネス)

ただ、私がご支援させていただいている企業経営者の中にも、「経営者である自分自身と向き合っていきたい」や「一人でも多くの従業員に自分の価値観を明確にしてもらいたい」といったお話が増えているように思います。

ということで、今回は改めて「自己と向き合う力」に関して考えてみたいと思います。

ドラマ『半沢直樹』がヒットする理由

日曜ドラマ『半沢直樹』の第2作が、前作に続き話題になっているようです。出演している怪優たちの大げさな言い回しや表情が話題になっていますが、このドラマの面白さはいわゆる「勧善懲悪」にあり、主人公であるサラリーマンの半沢直樹の「仕事に取り組む真っすぐな姿勢」が共感を呼び、痛快さを醸し出している点も魅力として挙げられるのではないでしょうか。

闘う相手が親会社でもあり、巨大組織である銀行であっても、筋を曲げず、自分の信じる生き方を仕事に反映させている「言行一致」が、次第に周りにいる人たちの心も動かし、半沢の厳しくも慕われる存在になっているように思います。

「言行一致」という言葉はよく使われますが、その実践の大前提は「その人の心柱(しんばしら)」が明確になっていることにあります。半沢直樹の場合は、前回シリーズの中で何度も回想シーンとして描かれていた、自身が中学生の頃に見た、父親の会社に対する銀行の無慈悲な態度に対する憤りが原点であり、心柱になっているように思います。

創業社長の会社のビジョンの多くが「その人自身の原体験」に立脚していることは紛れもない事実だと思いますが、やはり、その人自身の生い立ち、生活環境、挫折や経験といったものに裏打ちされた問題意識や危機感が、その人の価値観を形成していくことは間違いないことではないでしょうか……。

そして、そうしたマイナスな経験も含めて、「何とかしたい、このままじゃダメだ、こうなりたい、これだけは譲るまい」といった価値観が知らぬ間に形成されていきます。

自己と「向き合う力」

先日、とある経営者の方から下記のようなメールをいただきました。

私には、「歴史上の人物・●●●●に憧れている」等の憧れであったり、尊敬したりする人物がいませんし、理想とする経営者や、信念に基づく大きな野望もありません。
ただ、なぜ、こんなに信念や野望のない人間になったのか? というのは、当然私の生い立ちや社会人人生、またこの創業家としてこの会社で積み上げた経験が関係しています。

これまでこの会社を支えてきた幹部の彼らのような「技術製造部門の想い」だけでなく、「信念や野望のない」私だからこそ、彼らが大事にしている想いも取り入れたビジョンを作っていけばよいのでは……と感じています。

「信念や野望や憧れている人がいない」という自分の特徴を「取るに足らないから無視してもよい」と勘違いしていたことに気づかされました。私のこの想いも、彼ら幹部の想いと同じレベルで扱いたいと感じています。

この経営者の方は、ご自身が「憧れや理想を持っていない」ということを頻繁に口にされ、「そんな自分が経営者をやっているのだからビジョンなど考えられない」とやや自虐的に話されることが多かったのですが、上記メールからは「そんな自身だからこそ“できること”がある」という、ご自身の弱い部分も認めていこうと考えているように拝察いたしました。

「自己と向き合う」ことは、ごく当たり前であるように思われる方も多いかと思いますが、実は、キチンと向き合って考えている方は意外に多くなく、また実践しようとしても必ずしも簡単ではありません。

まして、ご自身だけでそれを行うのは、なかなかハードルが高いものです。人間ですので、どうしても自分が今考えていることを美化し、正当化しがちなもの。今の考えを覆すような視点で思考することは、ある意味、自分を否定することにもつながりかねないので、無意識のうちに避けてしまいがちなものです。

そこで「カベ打ち」というか、自分のことを過去までさかのぼって吐露できる相手を見つけ、話していく中で、ご自身の根っこにある、ある意味では認めたくないようなケースも含めて「自己」の輪郭をあぶり出していく必要があるように思います。

自律性と同義語であるセルフ・マネジメント

とある企業では、数カ月にわたる「セルフ・マネジメント・ワークショップ」を通じて、自己と向き合っていただく機会を作っていただきました。

立場としては管理職ではなく、また、キャラクターとしては大人しい方が多く、前に出るタイプの方はあまりいらっしゃいませんでした。しかし最終的には、「自分がどんなときにワクワクするのか? 何を実現したいのか? どんな人でありたいのか?」を見いだした方は、部門横断型の委員会の責任者として立候補してくださり、「ご自身の核となるべきこと」の実践に歩を踏み出してくださいました。

つまり、「自律的」に動き出したということです。

結局、人は他人との接点を通じて生きています。効果的なコミュニケーションの五つの構成要素として

  • 自己概念
  • 傾聴
  • 明確な表現
  • 感情の取り扱い
  • 自己開示

が挙げられますが、ここでいう「自己概念化」と「自己開示」は、やはり「自己と向き合う」プロセスを通じてしか得られないことのように思います。

今のご自身の行動や思考を狭めてしまっている過去の負の経験やトラウマから目を背けず、向き合って、受け入れることは、簡単なことではありません。できることなら向き合いたくない事実かもしれませんし、可能であれば避けて通った方が楽かもしれません。

でも、そんなところを受け入れることこそが「自己と向き合う」ということなのではないかと思います。そして、それができた瞬間から、本当の自分に正直な生き方ができるのではないでしょうか……。

今後もよろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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